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終わりのない空

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終わりのない空


ジオン公国が起こした独立戦争が終結してから、約一年半が経過した。
まだ戦後の復興は完全ではないものの、人々は平穏を取り戻しつつあった。
戦争を勝利へと導いた英雄として持て囃やされたニュータイプの少年の存在も既に人々の記憶からは消え去り、世界は新たな時代に向けて動き始めていた。


U.C.0081 地球 北米オーガスタ基地
「クワトロ・バジーナ大尉、アポリー・ペイ中尉、ロベルト・ヴェガ中尉以上三名、本日0:00付けでオーガスタ基地に配属となりました」
三人の連邦軍人が上官へと敬礼し、配属の報告をする。
「うむ、ご苦労。貴官らの配属を歓迎する」
上官であるブラウン大佐は口では歓迎すると言っているが、デスクに座ったまま三人をチラリと一瞥すると、面倒だと言わんばかりに直ぐに視線を端末へと戻してしまった。
「ああ、任務の内容についてはそこのラグナス・ミラー少佐より説明を受けてくれ」
そんな上官の態度にアポリー中尉とロベルト中尉が顔を見合わせる。
クワトロ大尉は特に態度には表さず、大佐の横に立つラグナス少佐へと体を向ける。
「ラグナス少佐、宜しくお願いします」
ラグナス少佐は浅黒い肌に黒髪の三十代前半程の真面目そうな軍人で、大柄では無いがガッチリとした体格の持ち主だった。
「ラグナス・ミラーだ」
ラグナス少佐は敬礼をするクワトロ達に敬礼で返すと、別室に移動する様に促した。

「君たちにはこれから向かう施設に居る連邦の重要人物の護衛と監視をしてもらう」
「護衛と…監視?」
重要人物を護衛するのは分かるが、監視すると言うのは些か不自然だ。
「ああ、その人物は連邦の軍人ではあるのだが、最重要機密扱いでね。連邦の監視下から出すわけにはいかないんだ」
「最重要機密?」
「そうだ。当然ながら君たちには機密守秘義務が生じる。これを破る場合は懲罰が課せられる事を肝に銘じてくれ」
「はい」

ラグナス少佐の案内で到着したのはオーガスタ基地に併設されているオーガスタ研究所の敷地内にある屋敷だった。
広大な敷地を持つ研究所内のこの屋敷は豊かな緑があるものの、その周囲を高い塀で囲まれていた。
「まるで監獄だな」
思わずアポリー中尉の口からこぼれた言葉に、ラグナス少佐が眉を顰める。
「し、失礼しました!」
慌てて謝罪をするアポリーに、ラグナス少佐が小さく溜め息を吐く。
「アポリー中尉、言葉を慎む様に」
「はい!申し訳ありません」
ラグナス少佐自身も本心ではそう思っているのだろう。肩を竦めるだけで特に咎める事は無かった。

「三人二交代で対象を護衛して貰う。従って、君たちもこの施設内で生活をする事になる」
「え?」
驚くアポリーとロベルトにラグナス少佐がフッと笑う。
「何も一歩も出るなとは言っていない。ゲートでの身体検査は必要だが非番には外出していい」
「そうですか…」
その言葉にアポリーとロベルトが安堵の息を吐く。
「それでその対象の人物とは?」
クワトロの問いに、ラグナス少佐が答えようとしたその時、研究所内にサイレンが響き渡る。
「ああ、早速君たちの仕事だ」
「は?」
「その対象が脱走した様だ。君たちに対象の確保を命じる」
「脱走?」
「対象は軍人とは言え士官学校も出ていない現地徴用兵でね、軍のルールを知らないんだ。脱走は厳罰だと言うのに、全く」
「それで、その対象とは?」
クワトロの問いに、ラグナス少佐が森の方を指差して答える。
「アムロ・レイ少尉。君たちも名前くらいは聞いた事があるだろう?一年戦争の英雄、ニュータイプのアムロ・レイだ」
指差した方向を見れば、茶色い癖毛の少年兵が森の中を走り抜けていた。
「アムロ…・レイ…」
「そうだ。多少は多目に見るが、怪我をさせない様に確保しろ」
ラグナスの命令に戸惑う三人は顔を見合わせながらも、対象の確保に走り出した。

「お手並み拝見といこうか」
その後ろ姿を見つめ、ラグナス少佐が腕を組んで呟いた。


《アポリー、前に回り込んで進路を塞げ》
《了解》
《ロベルトは左側に回り込め、右は行き止まりだ、アポリーを避けて左に行くはずだ》
《了解》
インカムから聞こえるクワトロの指示に、二人が無駄の無い動きで素早く立ち回る。
クワトロの読み通り、アポリーに進路を塞がれたアムロは左へと進路を取る。
そこに、回り込んだロベルトが立ち塞がった。
「クソっ!」
アムロは直ぐ様後退しようとするが、そこにアポリーとクワトロが駆け付けて来て囲まれてしまう。
咄嗟にロベルトへと向き直り、ロベルトの足をスライディングしながら払い除ける。
「うわっ!」
バランスを崩したロベルトの横を擦り抜け、素早く包囲網を突破する。
「やるな」
ニヤリと笑うクワトロに、ロベルトが苦虫を潰した様な顔を向ける。
「大尉、笑ってる場合じゃありませんよ」
「そうだな」
クワトロは徐ろに銃を取り出しアムロへと向ける。
「大尉⁉︎」
「当てはせんよ」
そう言いながらアムロの頭上の木々に向かって銃を数発放つ。
すると、アムロの頭上に折れた大きめの枝がいくつも降り注ぐ。
「うわっ!」
思わず頭を庇い失速したアムロを、アポリーとロベルトが二人掛かりで取り押さえる。
「クソっ離せ!」
「おい!暴れるな」
それでも尚、抵抗を続けるアムロの元にクワトロが近づくと、ビクリと身体を震わせてその動きを止める。
そして、顔を上げてクワトロを驚愕の表情で見つめる。
「え⁉︎…まさか…なんで…」
そんなアムロに向かってクワトロは不敵な笑みを浮かべると、ラグナス少佐へと通信を繋げた。
「ラグナス少佐、対象を確保しました」
《ご苦労。こちらに連行して来てくれ》
「了解しました」
通信を切り、まだ動揺で動けないでいるアムロに視線を向ける。
「アムロ・レイ少尉、今日から我々三人が君の護衛だ」
「護…衛?何を言って…だって貴様は…!」
「アムロ・レイ少尉、あまり要らぬ事を言わぬ方が良いぞ」
アポリーとロベルトに両腕を拘束されたアムロの顎を掴み、クワトロが殺気を纏った冷たい声で言い放つ。
「…っ!」
その殺気に、アムロは思わず言葉を飲み込んだ。

ラグナス少佐の元へと連行されたアムロは、罰が悪そうな表情を浮かべ、ラグナス少佐を睨み付ける。
「アムロ少尉、良い加減に諦めたまえ。また独房行きだぞ」
ラグナス少佐の言葉に、アムロはそっぽを向いて頷きもしない。
とても上官に向ける態度ではないが、ラグナス少佐の方もいつもの事だと肩を竦めるだけで特に咎める事はなかった。
「アポリー中尉、ロベルト中尉、彼を独房に連行してくれ。クワトロ大尉はこのまま私の執務室に来てくれ」
「はい」

アポリー達に連れられ独房まで来たアムロは、看守へと引き渡される。
「またかよ」
アムロの腕を掴んだ看守は、乱暴に独房へとアムロを放り込んだ。
そのまま床に身体を叩き付けられたアムロは痛みに呻き声を上げる。
「おいっ!乱暴に扱うな」
「ああ?お前達は新しい監視か?このガキに甘い事を言っていると痛い目を見るぞ。現に前の監視はコイツのせいで降格されてシャイアンに飛ばされちまった」
そう言いながら床に蹲るアムロを蹴り付ける。
「あうっ!」
「おい!止めろ」
作品名:終わりのない空 作家名:koyuho