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みとなんこ@紺
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そういって、また。
紡がれる御伽話のめでたしめでたしを迎えに、彼らは何度も旅に出る。





その夜は比較的穏やかだった。
前日までの嵐が嘘のように風が凪いでいる。
マグナは窓から晴れ上がった夜空を見つめてふいー、と大きく息を付いた。
久々に机にかじり付いていた(正しくはかじり付かざるを得なかった)お陰で、身体の節々が凝り固まってる、気がする。
ちょっと部屋に戻る前に夜風にでもあたってみようかと、マグナはテラスのある階上へと足を向けた。
ばたばたといつものように上がろうとして、ふと上の客間には今は具合の良くない客が眠っている事を思いだして、足音を忍ばせた。
起こしてしまうとマズイので扉越しに様子を窺うが、当たり前だが何の物音もしない。
マグナはほっと息を付いた。

トウヤ曰く西への街道沿いに点在する、普通ではない怪しい噂を調べるための旅の最中の事だった。
旅の途中で熱を出してしまったソルを抱えた彼が、ゼラムのギブソン達の家を訪ねてきたのは一昨日の遅くの話だ。怪我などの外傷が原因の事は召喚術で治す事が出来ても、確かに身の内の病となると対応出来ることも限られてくる。
2.3日予定が早まっちゃったけどどのみちゼラムには寄るつもりだったし、安静にしなければいけないなら、知っている人の所の方が良いと思って。そう言って頭を下げるトウヤの頬には、治りかけのうっすらとした傷跡があった。
――――詳しい事は聞いていない。
というより聞くのが憚られる雰囲気だった。正直、見ているだけなのはもどかしいが、あまり踏み込んではいけない事でもあったから。


・・・やめておこう。
マグナは一つ頭を振って雑念を追い出した。
階段を上がりきった先、この家の家主である2人の持ち物の本の山に出迎えられる。
2人とも階下に専用の書斎を持ってはいるが、そこの本棚からあぶれてしまった本たちがこの書架に収納されている。ちなみに本の虫が寄ってたかって集めたものの中には、ケーキの本だの流行云々だの、いつ誰がどのような状況下において購入してきたのか、聞きたいような聞きたくないようなモノも混じっているのはご愛敬。
だから、その本に目を留めたのは偶然だった。
誰が掘り返したのかは知らないが、幾重にも折り重なった本の束の一番上にそれはあったから。
書庫の床に座り込んで何とはなしに手を伸ばし、心許ない灯りに表紙を透かす。
――――子供向けのお伽噺。
誰もが知っているエルゴの王の伝説。
聖王国の基礎をなし、数々の遺産と伝説を残し、歴史の元に眠りについた英雄。
「うーん・・・」
ぺらり、と黄ばんだページを繰る。
・・・なんだろう。どうも、ピンとこない。

「・・・マグナ?」
「あ」
纏まりなく思考をぐるぐるさせているうちに、誰かが階段を上がってくるのに気付かなかった。
顔を上げれば、階段の途中で立ち止まって見上げてくる客人と目があった。噂をすれば。というか、噂する前から本人が。
「ここにいたんだ。ネスティたちが探してるよ。報告書、一枚足らないんじゃないかって」
「え!?」
その一言でそれまで考えていた事があっさり霧散する。慌てて立ち上がると、階段の途中で道をあける為に壁際に寄っていたトウヤが小さく笑って付け足した。
「かなりご立腹、みたいだったけど」
「・・・ううぅ…」
言われなくとも想像出来る。というか褒められた特技じゃないが、降り注いでくるだろう小言の一言一句までシミュレートできる自信がある、本当に。
ああ、カッコ悪い。ネスもそんな客人の前で怒らなくたって良いじゃないか。でもそんな事を言おう物ならお小言が一気に増えるに違いない。ああ、報告書、何処の部分すっ飛ばしたんだろう。
段々ブルーになっていく過程が顔に出ていたに違いない。階段ですれ違いざま、励ましなのか何なのか、ポン、と肩を叩かれた。
背後でコンコン、と小さくノックの音。客人の片割れの部屋だ。
「――――起きてる?…入るよ」
パタンと静かに扉が閉められる音を何となく確かめてから、マグナはようやく書斎に足を向けた。


で。