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みとなんこ@紺
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「・・・で」
「え?」
な、何かまだありましたでしょうか。
すっかり報告事項から記憶の彼方にされていた不足箇所についての巨大お小言をいただいて、小さくなっていた所、同席してくれていた先輩たちの助け船に救われてほっとした矢先だ。
まだ気が治まらないのか、盛大にトゲのある口調でネスは続きを促した。
「さっきから気になっていたんだが。一体何を持ってきてるんだ、君は」
ああ、そういえば。
慌てて降りてきたから、本をそのまま持って降りてきてしまったっけ。
タイトルを一瞥するとギブソンは目を細めた。
「童話だね。上にあったのかい?」
「あ、はい」
「エルゴの王の伝説?懐かしいわね。こんなのあったんだ」
「・・・しかしまた何故今更・・・」
「…エルゴの王ってどんなヒトだったのかって思って」
「は?」
今度は3人に揃って目を丸くされた。
慌てて、ほら噂より伝説より、俺は先に本物見ちゃったから、と続けるとネスは微妙な感じの表情を浮かべた。
「ああ・・・」
特殊な環境にいたせいか、普通であれば子供の頃から何度も聞く機会を持つのだろう、エルゴの王の伝説をマグナが聞いたのはそんなに昔の事ではない。それまでは誰も教えてはくれなかったし。自分から進んで何か知識を求めようとしたことはなかった。
だからあの時、ネスや皆の驚きが今ひとつ判らなかったから、今こうして読んでみたんだけど。
「けど?
「余計に判らなくなった」
「…そうだろうね」
呆れたようにやれやれと息をついたネスの隣で、ギブソンは穏やかに笑って頷いた。
「トウヤ、普通に見えるし。剣術とか独特で凄いけど、あんまり力使ってるトコ見た事ないし」
「『英雄』って感じじゃない、って?」
うん…と、曖昧に頷くマグナの表情は冴えない。
その奥に潜ませた事が何なのか、何となく判る。口にこそ出さないが、微妙に表情の固まったネスティもきっと同じものを感じている。何より、2人は少し前まではその当事者でもあったのだから。
「・・・派閥の決定が気に入らないんだね」
「そんなの、あったり前でしょ」
賛同の声は誰よりも早くすぐ傍で上がった。
「2人の動向を逐一報告せよ、でしょ。どういうつもりよ、まったく」
「私も思う所は同じだけれどね。彼らをよく知っている者ばかりじゃないって事だよ」
「わ・か・っ・て・ま・す。ただ色々気に入らないのよ」
激高するミモザに、内心抑えていた台詞をあっさりと奪われて目を丸くしていた後輩たちに向けて、ギブソンは苦く笑ってみせた。
「派閥はこれ以上、諸外国に突かれかねない件を表沙汰にしたくないだろう。ようやく安定に向かいだしたこの時期だ、何も知らない上が過敏になる気持ち自体は分からなくもないが。それでも今回の決定は無用の物だと私も思うよ」
ポン、と本に手を置いて彼は続けた。
「ということで気にしなくても良いんじゃないか」
「「え。」」
あっさりと切り捨てた年上の召喚師は、派閥側に知れたら結構問題な台詞をさらりと告げて笑った。
「・・・貴方最近ほんっとに言うようになったわねぇ。前はあんなカタブツだったのに」
「成長してるって事だよ。君たちと同じくね」
何だか微妙に複雑そうな表情をしているネスを横目で窺うと、マグナはこっそりとあらぬ方向を向いて笑みを浮かべた。
胸に蟠っていた暗い物が少し取り払われた気がする。
かつて、自分が青の派閥の監視下に置かれていた事を知った時よりも、ネスティも同じだったと聞かされた、いや彼の方がもっと雁字搦めにされていた事を知った時の方が痛かった。
今回も、トウヤたちが不確定要素として派閥に警戒されているのを知って、嫌な気持ちになった。
けれどそれを厭うてくれる人がいるだけで、こんなにも楽になれる。

気を取り直したようにミモザはコホン、と咳払いを一つ。
「・・・まぁ報告は放っておいても、トウヤのことはちゃんと見ててね、2人とも」
「どういう事ですか?」
うーん、と首を傾げながらどう言ったものか、とミモザは言葉を探しているようだった。
「・・・このままだと、トウヤ単独でも動きかねないのよね」
「えーでも、そんなさき走るタイプには見えないけど・・・」
「君と違ってな」
「・・・あのー・・・」
「君は色々あるだろう。前科」
「…甘いわね」
ミモザはしみじみとした吐息をついた。
…今は自分の置かれた状況も立場も理解して、落ち着いてるみたいだけれど。無色の派閥の乱の最中とか野放しだった頃、結構色々すごかったんだから。
「野放し・・・」
「あまり顔に出ない分、トウヤの吹っ切り方って判りづらいのよ」
「彼は思考は非常に柔軟なんだが、根本は意外と頑固だよ。こうと決めたら何があっても譲らないから」
えーと。
「一見冷静に思うでしょ。まぁ実際今はちゃんと周りは見えてるみたいだけど。でもあの何でもなさそうな笑顔が曲者なのよ」
・・・なんだかえらい言われような気がする。
だがこの時はそう思ったのだが、すぐにその言葉の正しさは証明される事となる。