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【弱ペダ】新荒を『○○しないと出られない部屋』に放り込んでみ

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 新開は百面相のようにくるくる変わる荒北の顔が見られる幸福感と、こんなやり取りを他人に見せたくない独占欲で身悶えたくなるのを堪えて、扉を親指で指してみせる。
 荒北は扉の方を見て、うぐ、と詰まる。顔が真っ赤に染まった。
「だからってナァ……っ!」
「壁も床も、天井もダメだったよな?」
 うぐぐ、と呻いて、荒北が恥ずかしさと闘う。
「おめさんが言ったように、換気口もない。アテになる扉はココだけ。つまりは、この条件をクリアしなきゃ、俺たちこのままここで……、ってワケだ」
「……、条件クリアするってことはヨォ……、クリアしたかどうか、見てるってことだろ。誰かがヨォ……」
 荒北はギリギリと歯軋りしながら呟く。新開の唯一許せないところもそれだ。
「そりゃ同感だ。それに、おめさんのいろんなとこ見られて嬉しいけどさ、他の奴らになんて見せたくないんだ」
 そう言って、新開は荒北の方へ一歩近づく。荒北は顔を真っ赤にしながら、新開から顔を背けて悔しそうに地面を見つめている。
「靖友……」
 そっと近づきながら、荒北の身体へ再び腕を伸ばす。強引にでも抱きしめてしまいたかった。それですぐにでもこの部屋からは解放される。だけれど、きっと荒北は自分の意志を無視されることをよく思わないだろう。
 チッ、と荒北が苛立たし気に舌打ちをした。
 と思うと、ぎり、と新開を睨みつけてくる。
「やすとも……?」
 逸りすぎただろうか? いや、それでもこれ以上は流石に新開も無理だ。と思った途端に、とん、と荒北の身体がぶつかって来て、首に回った手で力強く抱き寄せられた。
「なにボケてンのォ」
 荒北のからかうような声が耳元で聞こえて、思わず荒北の顔を見る。
「ハグだろ、ハグ! 早くしろよ」
 そう言う顔が恥ずかしそうにそっぽを向いていて、緊張しているのか恥ずかしいのか、新開の身体に回った腕が震えているのが、新開の心臓をぎゅう、と鷲掴みしてくる。
「ああ、だな」
 新開は荒北の身体を抱き寄せて、ぎゅ、と抱きしめた。
 カチャリ、と鍵が外れる音がして、扉がふわりと開いた。
「ったく、くだらねぇ……」
 荒北が照れ隠しにそう言いながら、開いた扉を二人で潜る。と、その先は妙に薄暗く照明が調節された部屋だった。部屋の真ん中には大きなベッドが一つ鎮座している。
 扉の先にはまた一つ扉があって、そこだけがスポットライトを浴びたようにくっきり文字が浮かび上がっていた。
 そこには『エッチしないと出られない部屋』との表記が――。
「な……っ!」
 図らずも二人で慌てた声を上げて、はっと後ろを振り返ったが、今潜り抜けてきたはずの扉はすっかり消えて、壁になっていた。


-- end