終わりのない空5
きっと、前の戦争の様に、多くの悲しみを重ねる事になるだろう。踏み出す事を躊躇うくらいに。
しかし、立ち止まってはいられない事も判っている。
前に進む事、それが生きる証なのだ。
目の前の青い瞳を見つめて思う。
あんなに怖かった戦場も、この人とならば、絶望だって抱きしめて生きていける。今はそう思える。
誰かが言う
『歩みを止めるな』と
『この空に果てなど無い』と
『人はどこまでも自由になれると』
この、終わりのない空の下で…。
End
2020.6.14
koyuho
思ったよりも長くなってしまいましたが「終わりのない空」完結です。
このお話は秦基博さんの同名曲がテーマソングです。
“痛いほど僕ら瞬間を生きてる
もう何も残らないくらいに
閉ざされた今に風穴を開けよう
どこまでだって自由になれる
そう信じてる“
このサビの部分を聴いて、
1stの後、研究所に閉じ込められていたアムロが自由を取り戻すお話が書きたいと思い、書き始めました。
↓この後、少しおまけのエピローグです。
アムロとクワトロ、そしてアポリーとロベルトは、今日これからエゥーゴの新造艦『アーガマ』に乗艦する。
かつてのホワイトベースを思わせるその外観に、アムロは目を細める。
そして、エゥーゴの真っ赤な制服を身に纏ったクワトロを見つめ、クスリと笑う。
「どうした?アムロ」
「いえ、やっぱり貴方にはその色が似合いますね」
「そうか?とりあえず用意されたものを着ただけだが」
「誰が用意したんですか?」
「ブレックス准将だ」
「ブレックス准将?…あの人…貴方の素性を隠す気が無いんですかね」
「…さあな」
赤い彗星を直接見た事のある連邦の兵士はあまりいないだろうが、エゥーゴには元ジオンの兵士もいる。
当時は仮面を着けていたとはいえ、赤い彗星を見た事がある者もいるだろう。
その赤い彗星を彷彿とさせる赤を身に纏ったこの男を見て、連想する者は多いに違いない。
それはある意味、元ジオン兵の指揮を上げる事にもなる。
連邦の兵士がどう思うかは微妙だが、何しろ反連邦組織だ。連邦に反感を持つ者が多い以上、扱いのデリケートなジオン兵の指揮を上げる事の方が最優先事項なのだろう。
アムロはブレックス准将の思惑を感じて小さく溜め息を吐く。
「ところで君はどうしてその制服なんだ?私と同じタイプの物が支給されていただろう」
アムロが今身に付けているのは、アポリー達と同じグレーの連邦の制服を少しアレンジしたものだ。
「嫌ですよ、アレ。袖無いし、貴方と同じデザインだと体格が貧弱なのが目立つじゃないですか」
「ではせめてグレーではなくてブルーにしないか?」
「ええ?別に良いじゃないですか。このままで」
「しかしだな、やはり君には少し地味過ぎないか?」
「僕の顔が地味だって言いたいんですか⁉︎」
「そうではないが…」
「じゃあこのままで良いでしょう?」
「だが…」
そんな二人のやり取りに、アポリーがやれやれと言った様子で仲裁に入る。
「まぁまぁ、良いじゃないですか、ほら、急がないと艦橋でブレックス准将がお待ちですよ」
二人を艦橋に続くエレベーターへと押し込み、ボタンを押す。
それでもまだ何か言いたそうなクワトロだったが、アムロがそっぽを向いて無視を決め込む。
アポリーとロベルトは肩を竦めながらも、いつものレクリエーションだなと互いに視線を合わせて笑った。
艦橋に到着し、そこにいた人物に四人は思わず足を止める。
ブレックス准将とアーガマの艦長であるヘンケン艦長。
そしてその二人と共に居たのは、オーガスタ研究所での上官、ラグナス・ミラー少佐だった。
アポリーとロベルトは、自分達がスパイだった事を咎められるのかと、思わず身を固くする。
クワトロはといえば、露骨に嫌な顔をしてラグナスを睨みつけた。
反対にアムロはパッと目を見開き、嬉しそうな顔をする。
「ラグナス少佐!」
「元気そうだな。アムロ大尉」
「はい、でもどうして?少佐は地上に残ると思っていました」
「君がアーガマに乗艦しないのならば残るつもりだったが、君が来るのならば話は別だ」
「そうなんですか?」
「それよりも准将に挨拶を」
「あ、はい」
四人はブレックス准将の前に並び、敬礼をする。
「クワトロ・バジーナ大尉以下四名、本日付けでアーガマに着任しました」
「うむ、期待している」
「はっ!」
敬礼を戻して一歩下がると、ラグナスがアムロへと歩み寄る。
「待っていたぞ」
「…あ、はい」
アムロを見つめ、肩をポンと叩いて微笑むラグナスに、アポリーとロベルトがギョッとした顔をする。
「お、おい!少佐が笑ってるぞ」
「お、おう。どうなってるんだ?」
驚く二人を余所に、ラグナスがアムロに親しげに語り掛ける。
「体調はどうだ?」
「もう、問題ありません」
「そうか、ならば良かった。私で良ければ艦内を案内しよう」
「結構だ」
アムロの腰に手を掛けるラグナスからアムロを奪い、クワトロがラグナスを睨み付ける。
しかし、クワトロの牽制をものともせず、アムロの頬にそっと触れる。
「では何かあれば遠慮なく言ってくれ」
「は、はい」
その様子を見つめ、何やら波乱の予感を感じ、互いに顔を見合わせるアポリーとロベルトだった。
End
三角関係のドタバタを、気が向いたらもう少し書きたいかも。
ラグナスの強かさは、ララァにも通ずるものがあるなぁなんて思いながら書いていました。
Koyuho