宇宙に虹、大地に黄昏
「でもさ、それじゃ人類の革新、ニュータイプの否定でしょ?」
ここへ来て、初めてルミナ・エレクトラが口を開いた。一方フォルティスは、聞き馴染みのない単語を耳にして、感心した。
「誰もがニュータイプになれるなら、こんな小細工は必要ないよ。だから、そこ
までは世界が保たれている状態にしたいのさ」
「一つだけ質問をさせてくれ。つまり、君はニュータイプが現れると信じているのか?」
レインズは、青年の曖昧な表現を理解することができず、問いただしていた。
「信じてはいます。そうでなければ宇宙にオーロラは現れません」
「アクシズ・ショックか・・・」
と発したのはレインズで、
「オーロラって、命の光・・・?」
と発したのはルミナである。
フォルティスは、その感性を理解することができなかったから、受け流した。
「人類は、資本主義という近代社会を得ることで、領土戦争から脱却することが
できました。代わりに、経済戦争が巻き起こり、植民地主義が発生したのです。
それは人類の発展に大きく貢献し、技術はめまぐるしい速度で進歩しました。
しかしそれは人類史上最悪の戦争を招き、地球に瀕死の重傷を負わせる結果となったのです。
だから今後は、人々が競合する時代を終わらせ、協同していけるようにしなければなりません。それができれば、人類は真実ニュータイプになると考えています」
(自分が話す側にまわるというのは、疲れる・・・)
ここへきて、キャプテンなる人物の話を聴きに来たという事実を思い出し、柄にもないことをした自分を恥じた。
「そうか・・・。まさか、君から理念の話を聞けるとは思わなかったな。思いは違えど、よりよい方向を目指す話を聞けるというのは嬉しいことだ。ありがとう」
レインズは、感嘆とした表情をしていたが、納得はしていないという態度が見て取れた。
そうだろう。
大義を妄信する人間の思想を変えることは、簡単ではないのだから・・・。
作品名:宇宙に虹、大地に黄昏 作家名:アスキー