宇宙に虹、大地に黄昏
「人に訊くのであれば、君にも考えがあるということだな?」
その問に対し、フォルティスは平静を装い、険悪さを取りさらうことを意識した。
「はい。確かにコロニーを独立させれば、利権を振りかざし、惰眠を貪ってきた連中もいずれ環境汚染によって自らの行いを悔いることになるでしょう。
しかし連邦政府には、不法居住者によって組織された軍を問答無用で排除したという過去があるのです。そんな連中は、スペースノイドが独立するとあれば、力ずくで従わせようと考えるのは明らかなのです。
それでは、1年戦争のような戦乱が再び巻き起こったとしても、おかしくはありません」
フォルティスは、人に意見を訊けば返すというのが礼儀だと思っていたから、行動に移したのである。
レインズの方は、彼の年相応とは言い難い物言いに関心を示した様子だった。
「ですから、そのような行いをする政府に対しては、制限を与えればいいのです。つまり、連邦政府に対抗できる組織の成立です。
しかしこれは、中央閣僚の打倒を目標とするものではありません。たとえ閣僚を打倒したとしても、特権階級は腐るものなのです。
ですから、相応の武力を持つ対抗組織を存在させ、権力分立の形をとって牽制する、というのが理想です。
この時代になっても、新しい組織論も持たないのが人間ですから、現状では時間稼ぎにしかなりませんが・・・」
「そうだな・・・。コロニーが権利を主張すれば、大戦の歴史などは忘れて、また戦争がおこると考えるのだな?」
「そうです。欲が領土に向いていないのであれば、人間は社会性の生物として、
まだやれることがあるはずなのです。
けれど、支配を受けてきた記憶だけは語り継いで、闘争本能を押し出すというのであれば、歴史は逆転して、原始へ回帰していくと考えるのです」
レインズは黙り込み、表情一つ変えなかった。
薄闇の中、誰もが静寂につつまれると思った。
作品名:宇宙に虹、大地に黄昏 作家名:アスキー