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灼青と珀斗 弐 ─夜話─

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━━全く、、寝てる顔はこうもあどけなく、、。幼い頃と、何一つ変わりがない。━━
 自分や、周りの者が目まぐるしく変わっていくのに、林殊だけはどこも変わらず、自分を慕い、時に我儘を言う。一見、好き放題に動いている林殊が、どれ程、靖王の心を癒しているか。
━━小殊がいなければ、幾ら、富貴な身分に生まれようと、全てがつまらない。
 小殊は林府に、「ずっとここで暮らす」と、使いを送ったが、その後、林府からは何も言ってこない。これは、林家からも許可が出たと、思って良いのだろうか。それならば、なんと嬉しい事か。小殊と暮らせる。もう、王府に一人ではない。━━

━━王府で一人で暮らすなど、何でもないと思っていた。所定の年齢になり、独り立ちし、ただ、屋敷を構える管理能力を問われているのかと、、。
 今日までは、差ほどの寂しさは、感じていなかった。
 、、、、、小殊のせいだ。━━

━━このまま、ここで二人で住まえるか、、明日、、林家から、使いが来るだろうか、、、。
 幼い頃は、皇宮の私の宮に泊まっても、小殊の母は何も言わなかった。
 あの頃と、どこか何かが違うだろうか。━━

 「大丈夫」だという楽観と、林殊の父親の気性を考え、林殊が靖王府から、「連れ戻される」のではないかという、不安が入り交じり、靖王は眉をひそめる。


━━どうか、、どうか、、、林主帥、、私から小殊を取らないで。━━


 今、林殊の父、林燮は、辺境の軍編成のため、視察中で、金陵を離れている。
 林燮が金陵に帰ってきた時に、、、。
━━今暫くは、大丈夫という事だ。━━
 先の不安を考えるよりも、今を考えよう、そう思った。
 今、靖王の傍には、林殊がいる。
 林殊は靖王から離れるまい。
 気心通じ合わせた幼馴染なのだ。
 寂しさに気付いてしまった靖王な心を、林殊は次第に感じ取る筈だ。

━━小殊、、、離れるな、私から、、。━━
 祈るように、林殊の髪を、指で梳いていた。もう、とうに綺麗になっているのに、、。
 相変わらず、林殊は、寝息を立てて眠っている。靖王の傍で、安心しているかの様だ。

━━、、、、あっ、、、そういえば。━━
 林殊の髪に触れていたら、ある事を思い出した。
━━小殊、、つむじが二つあったんだよなぁ、、。━━
 幼い日、二人で散々遊んで、一休みした時の事。疲れた林殊は、靖王の膝に頭を乗せて、眠ってしまったのだ。
 あの時も今の様に、靖王は林殊の髪を梳いていた。
 そして、左のうなじの辺りに、つむじがあるのを見つけたのだ。
━━え、、まだあるだろうか。━━
 つむじが消えるわけが無い。思い出すと、靖王は、気になって仕方がない。
━━頭を弄り回したら 、さすがに、小殊でも目を覚ますだろう、、。止めておこう。━━
 、、、、だが、靖王は、気になって仕方がない。
━━無理だ、無理無理。やめた方がいい。━━




━━、、待てよ、、普段では無理だが、小殊、ぐっすり眠ってるし、、ちょうど髪は解けているし、、、、。━━

 悪い心が、次第に靖王の中に、、、。

━━大体の位置は分かってるから、素早く探せば、小殊は目を覚まさない。━━


━━、、、、、うん。━━

 覚悟は決まった。
 折角、梳いた小殊の黒髪を、そっと指先で、かき分けてみる。
━━、、あれ?、、確かこの辺だと、、。
 、、、、、無い、、。つむじって消えるのか?。
 え、、いや、、そんな筈は、、、。━━
 靖王は、つむじ探しに、段々と熱が入る。
 ちょっと探った程度では、見つけられそうに無い。
━━ん?、、どこに、、、。━━
 林殊は、多少、靖王の方を向いてはいるが、この位置では、少々見えにくい。意地でも見つけてやろうと、林殊に被さる様にして、探していた。
━━草原の風の匂いがする、、、。━━
 林殊の匂いだった。一年中、外で転がっているからだろう。
 林殊は、『祁王からは紙と墨の匂いがする』と言っていた。祁王は文武両道だが、その努力も並々ならぬ。
 『私は何の匂いなのだ?』
 靖王が林殊に尋ねる。
 『景琰は薬草の匂い』、林殊はそう言った。
 十年も前の会話だった。
 靖王は、母親、静嬪の芷蘿宮にいる時間が多かった。静嬪が宮に持っ薬剤の匂いが付いたのだろう。
 成長と共に、芷蘿宮で過ごす時間も限られるようになり、今では、決められた参内日にしか、会うことが叶わなくなった。
━━今は私は、何の匂いなのだ?、小殊?。━━

 こんな風にまた、寝ている林殊の髪を、弄れるとは。悦びの他に、耳の後ろ辺りと、胸の辺りか甘酸っぱくなる。何故そう感じるのか、これが何なのかは、分からない。不思議な感覚だった。

━━、、、あっ、、、ふふふ。━━
 林殊の匂いと甘酸っぱさを嬉しみ、つい夢中になっていた。


 突然。
「、、、何してんの?、景琰。」
 ばっ、と、林殊に被せた体を起こす。

 眠そうに目を擦りながら、林殊が言う。
 林殊は起きてしまった。ぐっすり寝ていたあの林殊が目を覚ます程、夢中になって、髪を弄っていた、、。
 『林殊は、一度目を瞑れば、大概、何をやっても起きない』筈だったのだ。靖王は、咄嗟に何を言っていいのか、分からなくなる。
「あ、、え、っ、と、、、小殊のつむじを、、。」
「、、、つむじぃぃぃ??。」
 怪訝な顔で靖王を見つめる。
━━咄嗟で、、、何か不味い事を、言ってしまったのか?。━━
 『変な事してて、林殊に軽蔑された』かも知れないと、どきりと大きく心臓が打つ。
「、、、景琰、明日は皇宮に参内していい日だろ?。いつまで起きてる気だよ。寝坊したら、静嬪に会う時間が、短くなるぞ。」
「えっ、、、あ?、、あぁ、、。」
 林殊は、寝起きにしては、真っ当な事を言っている。
「万が一、一言も話が出来なかったらな、、泣くぞ、静嬪。」
━━あ?、いや、、母上は、そんな事で泣いたりしないとは思うが、。━━
「景琰、もう寝ろ、な?。」
「、、わっ、、。」
 林殊は靖王の腕を掴むと、ぐいと自分の布団の中に引き込んだ。
「いい子だ、寝ろ、景琰。」
 そう言うと、林殊は掴んだ景琰の腕を、ぎゅっと抱きしめ、そして、、、、いくらもたたないうちに、、、。
「、、、、、ぐぉぉ、、、。」
軽いイビキをかき始めた。
━━ぷっ、、もう寝た、、。小殊が眠かったのか?。
 ああ、、、、驚いた。━━
 悪戯も大概にしないと、、そう思った、少しだけ。
━━目の前に、ぐっすり寝ている小殊がいて、、中々難しいよな、何もしないのは。━━
 起きている時に、林殊に悪戯したら、仕返しされる。寝ているからこそ出来るのだ。


━━ずっと、小殊が側にいる。━━

 嬉しくも心が踊り出すのを感じる。
 林殊といれば、いつも楽しいが、こんなにも心踊るのは久しぶりで、、、。

━━皇宮の用事は、早く済ませて。

   明日は小殊と何をしょう。━━

 林殊の隣で、靖王は眠りについた。





───── 第一夜 終 ─────










 一度は眠った靖王だったが、程なく、林殊の鼾と寝相の悪さに、眠りを妨害され、堪らず自分の寝所に、帰った事をご報告いたします、、、、。