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Angel Beats! ~君と~ 夏休みのユイ編

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本編




夏休みが中盤戦を迎えた。学生達にとっては休みが多く、遊びに行くも良し帰省しても良し、一大イベントであろう。

その分宿題の量がたくさんある。

だから、


「あああああああ書き取りめんどくせえええええ!!」


日向はクーラーが効いた旧校長室で叫んだ。


「うっさい、こっちは計算してんのよ」


向かいに居るゆりに注意されると、床に転がりジタバタ足掻いた。

床には倉庫にあった高級そうなカーペットを敷いている。

埃をある程度叩はたいてるとは言え、日向が暴れている所で気にならないが舞っていた。


「それ写しゃよくね!?」


「バカねえ自分の為にならないでしょ日向くん」


「写せば楽になるってのに、ゆりっぺさんは真面目な子だこと」


「それだからアホなのよ、ちゃんとしなさいよ」


「やってるさ、分からなかったら最終手段で見てるんだよ」


「フーンこれから成績落とさず頑張んなさいな」


日向に見向きせず、淡々と因数分解をこなしていく。これ以上無駄なことをすれば漢字の書き取りが終わらないと判断した日向は起き上がる。

足が机の裏側にぶつかり、衝撃が走った。


「うわああぁああああ!? ずれちゃったああああああ!!」


今度は大山が悲鳴を上げた。この机は他の教室から取ってきた長机。

衝撃がいとも簡単に伝わってしまうのだ。読書感想を書いている岩沢、ひさ子、竹山には関係無かった。


「もー!日向くんのせいで書き初めずれちゃったじゃない!」


手元を見れば大山は最後の仕上げの氏名を完成させようとしていた。だが最後のところで日向による邪魔が入り、止めの部分が払いになってしまった。


「ですが大山さん、それは横着した結果ではありませんか?私は床で書いているので無事ですし」


高松は眼鏡を持ち上げながら言った。

半紙には『筋肉』と無駄に達筆に書かれている。


「ふ、浅はかだな」


椎名は普段作っているゼンマイ式の子犬の作り方を家庭科のテーマとして、写真を貼り作り方を細かく書いていた。

裁縫で何かを作り手順を書くか、料理を作り材料と作り方を書くか、好きな方を選んでやるという課題だ。

無論、被害は無かった。


「うわああああん、めんどくさがらずに床で書いとけば良かった~!」


墨滴はすぐには乾かない。このまま他に移せば墨が長机に付く。暫くは放置しなければならない。大山の心境と似通っている。


「そいやさ音無って家居るんだっけな。何やってんだろうなー」


「きっと習字だよ。あー僕も学校に習字セット置いてここでやらずに家でやれば良かったよー」


「ケータイで聞いてみれば良いんじゃないの?あんたいつも一緒に居るでしょう」


「何か語弊のある言い方だなぁ…。ってゆりっぺも音無の連絡先知らないのか?」


「音無くん、ケータイ持ってないって。自宅のなら分かるのだけどね」


「今時スマホに携帯持たない若者が存在したとは…。境遇考えたらそうだわなあ……」


大山は袋からもう一枚の半紙を取り出す。

まだ乾かぬ墨を見る。自分の顔が写っていた。分かっているのに乾かないものをつい見てしまう。


「…遊佐と直井来ないなー。分かんないとこ教えてもらいたいのになー」


藤巻は理科をやっていた。

面倒なことに宿題として元素の化学式を出されたのだ。となりの野田も頭を抱えてながらも手を進めていた。


「あんたらが煩いから来たくないんだと。大人しく宿題進めなさいな」


ひさ子は言う。


「あー、煩いもんな俺達。納得だわ」


自虐的に言うが実際に本当の事なので自虐もなにも無かった。


「読書感想文より作曲作詞の宿題出ないか。それだったらすぐ終わんのに」


「それあたしら不利過ぎんだろ。お前だけ5取れるよ」


一枚目の半分の行でシャーペンの先で升目をつつき、ぼやいた。

竹山のを見るともう終わりそうである。


「自分の気持ちを感想文で表すんだろ? だったら楽しかっただけで終わっちまうだろう?」


「何故作詞であんな歌書けんのに感想文を満足に書けねえんだよ。不思議でしょうがないな」


「あああああ~、ひさ子ーお前のやつの半分くれ。あたしのそれで終わりそうだから」


「頑張れよ2枚半位よお。あいつら終わってんだぞ」


そう言って指差した方を岩沢は見る。

約20分前に読書感想文を終え、暫く休憩すると言った入江と関根だ。長机を設置する際に邪魔で端に寄せたソファーの近くに立っていた。そして、感想文が終わったからちょっと仮眠する、と言い、寝ている小枝がソファーの端っこを占拠していた。


「いやー、面白い面白い!」


関根はポッキーを手にし、小枝の口元に近付ける。食べ物を察知したのか小枝がそれを少しずつ食していく。


「寝る子は育つとはこういうことか! わはははは!」


「しおりん止めなよ~」


「と言いつつ、その手に持ってるグミはどうしたのだ? まさかチミもやりたいのかい?」


「うっ…」


入江は自分のおやつ用に手に取っていたグミを自分の口に、ではなく小枝の口に持っていこうとしていた。

そうだ、餌をやりたいのだ。


「何を遠慮してるのだね? 昔の道徳の教科書に出ていた。虹色の鳥に餌をやってはいけない、そして女の子はガラスの窓をくちばしでつつくその鳥を見ながら悲しんだ」


関根は入江の耳元でささやき続けた。言い聞かせるように。


「なぜか、餌をあげたい自分と、餌をあげてはいけない自分が葛藤しあっていたからだよ。餌をやったら虹色の鳥は二度と自らで餌を採りに行かないようになってしまうから」


入江に覚えがあった。

虹色の鳥に何で餌をあげてはいけないのか。

だって写真には、あんなに楽しそうに人間と鳥が餌をやって食べさせてやってるのに、それのどこが悪いのだと。文章の最後の女の子がとても可哀想だった。

今になってその問題は自己解決したのだったが、10年の時を経てその感情が蘇ってきた。心が悲哀に満ち溢れ、目を地面に向けた。


「だけどね、人間は野生じゃあないんだよ?」


入江の両肩がピクリと上がった。


「人間は、りんりんは野生じゃあないんだよ?」


ハッ、と俯いていた顔が持ち上がった。

そうだ。人間は野生ではない。


「『人』という字はぁヒトとヒトが支えあって生きているうぅ!」


正確には人は一人である。

どこぞの3年の担任の口調を真似て発する。


「沖縄の人たちは困っている人を見かけたら無償で手伝うんだよ。食べ物に困っていたら野菜や果物をあげたりすることだって過言じゃあないんだよ」


入江の溜まっていた心が砕け散る。


「何を悩んでいるんだい? あげなよ、そのお菓子」


本当、何を悩んでいたのだろうか。

あげたいのならあげれば良い話だ。

何を躊躇っていたのだろう。

入江はグミを小枝の口に近付ける。それを察知した小枝は口を開けグミを食べた。


「うっわ~、もー良いよねこういうの! たまんない!」


入江の箍が外れ、次々にグミを放っていく。まだ飲み込めていないグミが頬に溜まり、リスになっていった。