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Angel Beats! ~君と~ 夏休みのユイ編

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「ふっ、所詮しおりんはしおりん。欲望には負けたか」


(あんな事してるヤツにあたしはまだ終わんないのか…)


岩沢は楽しそうにお菓子をやってる関根達を見て悔しがった。何をしてでも感想文を終わらせる決意をした。だが、思うように筆が進まない。


「何してるの?」


「おおう、やまっちジャマイカ島」


「じゃまいかとう?」


まだ半紙が乾いていなく暇なので小枝の居るソファーを見に来た。

入江が輝く笑顔でお菓子をやっている光景が不思議であった。


「大山くんもやりなよ、可愛いよ?」


来る途中で大体の会話を聞いている。入江がグミを差し出していることに察する。ほぼ何もする事が無い大山は、グミを受け取ることで承諾した。


「…こくん……すぅ、すぅ」


入江が目を離している隙に口に残っていたグミを飲み込み、休んでいた。


「口に近付けるだけで良いんだよ」


「やってみる」


そー、と口辺りに近付ける。まずは鼻が動く。お菓子の甘い匂いを感知したようだ。

次は口が動く、はず。


「!?」


だった。

動いたのは、小枝の右手であった。大山の手首を掴んでいた。手に持っていたグミを落としてしまい、どこかに転がっていった。

遊んでいることに気付かれたのだろうか、顔を見ると瞼は開いていない。では何なのだろうか。

関根と入江と大山は酷く動揺した。


「…ぅん…」


寝ている小枝は今度は左手を大山の腕を掴み、自分の左隣へ引き寄せる。


「あらら、逆に釣られちゃったねえ、やまっち」


これはいつも通りの光景だった。暇があれば小枝は大山の腕に抱き付く。もう脳に刷り込まれているのだろう。


「愛されてるんだねー、うらやましいよ」


「ねーっ、しおりん」


「そ、そうかな?」


「そうだぞ。球技大会で堂々と告白したジャマイカ島」


「あ、あれは……」


気になってたのは確かであったが、好きか嫌いかと聞かれたら分からない。腕にくっついてきてくれるのは悪い気はしないが、小枝は本当に自分のことが好きなのか分からなかった。


「…う? あ、大山くんおはよー」


小枝はどうして大山の腕に抱き付いているのか意に介さない。


「りんりん起きたねー。おはよう」


「おはよー入江さん…ぅあー」


大山の腕から右手だけを離し、あくびをする。

新鮮な空気が入ったことにより、眠気がほんの少し覚める。


「……なんか口の中…すごい甘ったるい……」


脳が活性化され、舌に残っていた様々な味のグミが気持ち悪かったが、それを知らない。

唾を飲み込んでみるが味がこべりついて全く取れない。


「あっはっは、夢でケーキ食べてたんじゃない?」


関根がフォローを入れると、入江にグミの袋を隠すことを手で促した。

ばれたら面倒なことになりそうだからだ。


「……うーん、……んー」


眠くてあんまり考えられない小枝は取り敢えず大山にくっつき匂いを堪能する。いつもの匂いで安心する。


「どんなの見てたの?」


「…思い出せないや……見てたんだけどねー」


「あたしもよくあるぞ。楽しかったのにぜーんぶ忘れちゃう。悲しいねー」


「……そうだ……最後は、何か寂しかった気がする……」


覚えてはいないが、前に見たのと同じ感じがするのは確かだ。

しかし覚えていた筈の夢が思い出せなくなってきた。夢は脳の記憶の整理をした結果起こる現象で忘れるものだ。小枝自身、それは仕方がないと知ってはいる。

が、忘れてはならないと思うのだった。理由は不明だが、そんな気がするのだ。


「あれだね、大山くんに今日触れ合っていなかったからじゃないかな?」


習字と作文の相性は悪い。

くっついたらどうなるかは分かっていたので、今日は控えていた。そのせいで寂しい夢を見たのだと回らない頭で小枝は納得した。


「……寂しくならないよーに、もうちょっとだけこうさせて?」


「う、うん」


小枝は大山の返事を聞くと、抱き付く力を少し強めて寝息を立てる。


「こりゃあ爆睡だわ。暫くどころじゃないぞう」


「グミあげよっか」


袋をポケットから出し、早速手に持ち小枝にあげようとした。


「みゆきちよ、もうやめた方がええよ」


「え~?」


「これ以上あげると口の中がグミだらけになり、グミ星人になってしまう」


「グミ星人?」


(はよ終わらせたい……)


岩沢は竹山の感想文を見ようとするが、ひさ子に阻止された。

半分の所で全く進まない岩沢はイラつきと焦りを感じ始め、用紙の端をシャーペンでトントンと叩く。


「そうだ、岩沢」


「何だひさ子。ちょっと話し掛けないでくれ」


声のトーンが明らかに低い。

何でもそつなくこなしてきた岩沢が苦戦しているのは珍しかった。


「(うわあ、すげえ機嫌悪ぃな)感想文をさ、作詞するつもりで書けば良いんでね?」


「……!」


その発想は無かったと言わんばかりな顔をし、消しゴムを使った。折角半分書いたのに全部消していく。


「……」


消した後はすらすらと筆を進められた。

ひさ子の言った通り作詞をする気分で書けば次々に言葉が浮かんでくる。


「…岩沢って何の本書いてんだっけ?」


「桃太郎だ」


「おまっ、よくそこまで書けんだな!? 良いのかよ児童文学で! まさかゆりっぺ太郎引き摺ってんじゃないだろうな!」


「? 何だそれ」


「素でやってんのかよ…」


読書感想文は色んな意味で終わったとひさ子は思った。

岩沢は間違いなく低い評価を付けられるのは確かだ。


(それ以前に桃太郎を書く時点で難しくないか?)


先程までとは違いすらすらと進んでいることから、桃太郎を感想文にするのは簡単なのだろう。

ひさ子は残りの一行を無理矢理埋めて感想文を終わらせ、寝転がった。

自分の周りだけ掃除したが、あんまりいい匂いはしない。何か知らないが線香を焚いたような匂いがする。


(習字終わったし、料理も終わったし、後が面倒なのはもう無いかな)


このまま目を閉じて寝るか迷う。

大勢居る中での缶詰めは疲れる。


「お、ユイからメールだ」


「お暑いことで。あー暑い暑い」


ゆりの冷やかしを無視し、携帯を開ける。


「んー、こっちの学校に来てるだってさ……これは…」


「迎えに行ってあげれば?」


写真付きで送ってきているが、ぶれていて何がなんだか分からない。

ユイに腕の力が無いのは知っている。しかしここまで酷いのは知らなかった。


「もちろんそうするさ。でもどうして来たんだろうな」


頑張って写真を凝らして見てみるが、白いものしか分からない。白い棟にいくつか候補はある。


「会いにでも来たんじゃないの。とっとと行きんしゃいよ」


「へーへー」


「んじゃねー。いってらっしゃい」


カーペットの端にある靴を履き、出ていこうとする。

歩けばユイに会えるだろう。


「あ、あたしも行きたい。連れていかせろおおおおおお~」