高等部男主
朝だ。
鳥のさえずりと、陽の光で目覚めた。
起き上がって驚く。
昨日あれだけ山をかけまわり、力尽きたにも関わらず、傷はすっかりなくなり、信じられないほどに身体が軽くなっていた。
「あ、あのこが...?」
夢じゃなかったんだ、と狐の面を思い出す。
村の入口でみたのとはまた別の子だった。
今ここは、どれくらいだろうか...
木々が深く生い茂り、ここが今山のどの地点なのかさえもわからなかった。
わからなくても、ここまで来たのだから自分の選択肢は登るしかない。
「よしっ」
詩は気合を入れなおし、足を進めた。
先ほどとは、雰囲気が違うのがわかった。
頂上が近いのかもしれない。
不自然なほどの静けさ。
いつの間にか鳥の鳴き声や生き物の気配はなくなり、きこえるのは、ざわざわと風で木々がこすれる音だけ。
どんどん太陽に近づいているはずなのに、あたりは薄暗く不気味な雰囲気だった。
今まで以上に慎重に、あたりの気配を伺いながら足を進める。