二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

【弱ペダ】Honey Bunny

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
滅多にない、互いのオフが重なった日のことだ。前々からの約束で、東京の新開の元へ行く約束だった。もちろん、泊まる予定だった。夜は久しぶりに福富と石垣も集まって、居酒屋で料理を頼むだけ頼んで、大して酒も飲まずに料理を凄い勢いで平らげ、ダラダラと話していた。
 金曜の夜の居酒屋は混んでいて、流石に次の客に席を開けて欲しいとさりげなく言われて退店した後、まだ話し足りなくて遅くまで開いているカフェに入り、そこでもコーヒー一杯で随分と粘って色々話した。
 新開のアパートへ帰ってきたのは、二時も過ぎた頃だろうか。
「随分喋ったな」
「ああ」
 床に座り込んで水を飲みながら、荒北が常になく機嫌よく言うのに、新開が相槌を打つ。
「福ちゃんと石垣クンと上手くチーム回ってんじゃなァい。次のレースも楽しみだな。お前ら何出るんだ?」
 そう言った荒北が新開の方を向くと、新開が随分と真面目な顔をして自分を見ていた。
「新開?」
 どうしたんだと尋ねようとした荒北を、新開がどさ、と床に押し倒した。
「オイ」
 ふざけんな、と文句をつけようとしたところで、新開がそのまま圧し掛かってきて、痛い程に荒北を抱きしめた。
「酔ってんのォ?」
 そんなに飲んでなかったはずだ。それとも、帰ってきてほっとしたら、酔いが回ってきたのだろうか。
「……た」
 首筋に落ちる、聞こえるか聞こえない程度の新開の呟き。なんて言った? 暫く聞こえた音を反芻して、やっと当てはまる音が見つかる。そしてその意味が沁みて、なんだかむず痒いような、恥ずかしいような、新開の言葉に心臓がきゅうと掴まれたような気がした。
「バァカ」
 くつくつと笑いながら、荒北が新開の頭をぽこん、と大して力も入っていない拳骨で叩き、くしゃりと髪の毛を撫でた。
「しょうがないだろ。もちろんおめさんと一緒に皆で話せたのは楽しかったけどさ。ホントにやっと、やっと二人っきりになれたって気持ちなんだ」
 拗ねたような口調で新開がそう言うと、さらにぎゅぅと力を込めて荒北の身体を掻き抱く。骨がギシギシと鳴りそうな強さで、今にも握り潰されてしまいそうだ。
「オイ、新開。イテーって」
 新開の独占欲が柄にもなく可愛いと思ってしまって、文句とも言えない口調で言う。いや、マジに骨が折れそうで息が苦しいから、もう少し力を弱めて欲しいのだが。それでも、新開の頭を抱いた手が、少しクセのある髪の毛を自分でも驚くほどに優しく梳っている。
 ――柄じゃねーんだヨ。こういう……、甘い感じ、とかァ。
 荒北は心の中で溜め息を吐く。
 焼き鳥をメインに出す店だったせいか、互いの体から少し煙の匂いがしていた。
 ――ちょっと身体大きくなったか。
 いつの間にか見慣れた天井を見上げながら、ぼんやりとそんなことを思う。自分に覆いかぶさる身体の厚みが随分と増した気がした。スプリンターの新開と、オールラウンダーの荒北では調整して作り上げる身体が異なる。大学の部活では、高校の頃よりもっとそれが厳しく求められていた。数ヶ月合わない内に身体つきが変わっているのも当たり前だろう。
 ふと、新開が首筋に吸い付いているのに気づく。
「……オイ」
 身体を折りそうだった勢いの力もいつの間にか緩んで、ごそごそと荒北のシャツの裾から肌に触れようとしている。
「オイ。ナァニしてんだヨ」
 ぼすん、と大した力も入っていない拳で、大きく盛り上がった肩を小突く。
「……ダメ?」
 新開は悪戯が見つかったような気まずさを浮かべながら、それでも上目遣いで強請ってくる。その顔に切ない程の情欲が浮かんでいるのを見たら……。
 ――断れるワケねーだろ。
 荒北は腹の中で苛立たし気に舌打ちをする。もうその顔だけで、荒北の腰の奥が痛いほどに熱くなる。
「……いーけどォ?」
 精一杯の強がりで答えるしかない。新開が自分を強く求めているその表情を見ただけなのに、身体が勝手にその後の刺激を求めてしまっているなんて、それを悦んでいるなんて、素直に認めたら、自分が自分で無くなってしまいそうだったからだ。
「好きだぜ、靖友」
 そんな荒北の意地も見透かしたように、新開がニヤリと笑う。その笑みが嬉しそうで、やたらと官能的で。
「っせ」
 荒北はやっとそれだけ言うと、乱暴に新開の頭を抱き寄せた。

「オイ……」
 風呂から上がった荒北は羞恥と怒りで、やっとそれだけを言う。
「サイズどう?」
 新開は荒北のそんな様子に構う風もなく、朗らかに尋ねてくる。
「サイズどう? じゃねーヨ。なんで俺の服の代わりにこんなもんが置いてあんだヨ」
 二人はユニットバスの扉越しに攻防を繰り広げていた。中から扉をほんの少し開けて文句をつける荒北に、新開が更に大きく扉を開こうとする。
「見せてよ」
「着てねーヨ」
 荒北の答えに、新開がえー、と残念そうな声を出した。
「えー、じゃねーよ! なんで着てる前提なんだヨ。てか、普通広げたら違うって判るだろォ!」
 深夜も深夜、むしろもうすぐ夜明けに近い時間だ。荒北は冷静に、小声で、だが怒りは隠さずに言う。
「大体、なんなんだ、この服は!」
「いやぁ。おめさんが着てるの見たいなぁと思ってさ」
 新開は微塵も悪びれた風もなく言う。
「こんなもん着るか! ふざけてねーで俺の服返せよ!」
 荒北はぶんぶん、と手にした服を振り回した。彼が持ってきた寝間着代わりのTシャツ、短パンが風呂から上がると無くなっていた。代わりに脱衣所に置かれていたのは、股ぐりが大胆に切れ上がって、お尻にちょこんと白く丸い尻尾がついた、黒いビニール製のバニーガールの衣装だった。ご丁寧に網タイツと、片方が可愛らしく折れたウサギの耳のカチューシャまで添えられていた。
「大体こんなもん、入るワケねーだろ!」
「それ、男性用だから大丈夫だと思うぜ」
「……どこで売ってんだよ、そんなもん……」
「ド○・キ○ーテだよ」
 新開があっけらかんと答えるのに、荒北は何をどこから怒ったら良いのか判らなくなって、眩暈を覚えた。
「おめさんが着てるの見せてくれないか」
「ナニ、マジな顔で言っちゃってんのォ? 良いこと言ってる風の顔してっけど、おめーが要求してんの、バニーの衣装だからな! 女装だからな!」
 荒北はぼす、と衣装を新開に投げつける。
「着る所から見せてくれても良いぜ」
 ところが、相手は投げられた衣装を上手くキャッチして、更にそんなことを宣う。もう事ここに至っては、荒北は言葉すらも失う。直前の交わりの疲労もあってか、ぐったりと力も抜ける。
「去年の学祭でさ、ウサギの耳をつけた、メイドの格好しただろ?」
 新開が人差し指を伸ばして、バキュンと撃つポーズをする。
「アァ? 誰に聞いたァ? オイ」
作品名:【弱ペダ】Honey Bunny 作家名:せんり