バンドリ if物語 ハロハピ大学生 〜ひと夏の思い出〜
一章 誘い
ジリリリ! ジリリリ!
「うーん…もうちょっとだけ…」
ジリリリリリ‼︎
「あーもう、起きるよ!」
けたたましく鳴る目覚まし時計を止め、枕元に置いてったスマホを半開きの目で覗く。
「もう八時か…起きなきゃ講義に遅れる」
愛しいベッドに別れを告げ、キッチンに向かう。
…食パンでいいか。
慣れた手つきで食パンをトースターに入れ、焼けるまでの間に軽くシャワーを浴び、インスタントコーヒーをコップに入れ、一息つく。
これが私こと奥沢美咲の朝のルーティンだ。
チン!
はっ!一瞬寝てしまっていた…。
焼けたトーストにジャムを付け一口。
美味い…。
トーストを完食し、鞄の中に今日の講義に使う教科書を詰め込む。
よし、行くか!
玄関で気合を入れ、勢いよくドアを開ける。しかしドアを開けた瞬間湿気と熱気が混ざった嫌な空気が肌に伝わる。
暑い…。
玄関から外に出た一歩で家に帰りたくなる。
帰りたくなる気持ちを抑え、私は階段を降りて、アパートを後にした。
アパートから徒歩十分最寄駅に到着する。改札を抜け、いつもの様に電車を待ち、その間にスマホをポチポチ…。
気づくと電車が到着し、そのまま乗り込み十数分間電車に小刻みに揺られる。これが日常だ。
目的地に到着し、改札を抜け歩き出す。駅を出て数分、目的地が見えて来る。
そう私は奥沢美咲は大学生ってやつになった。大学入学前は色々と緊張したけど、入って一週間で大体慣れた。
講義は必須科目以外は自由だし、授業自体も軽く受けられる。特に図書館は静かだし、この時期には冷房が完備されていて、私の癒し空間だ。
友達は多くも、少なくもない。付き合い自体も軽い付き合いで、私の性に合ってる。高校の時とは全く違う…。
「はい。今回の講義はここまで、次回の講義までに今回のテーマに関するレポートを二千文字以内でまとめてくる様に」
暫くして教授の声でハッと我に帰った。やばい…今回のテーマってなんだっけ?
すぐさま隣に座っていた人に訊こうとしたが、時すでに遅くすでに席は無人だった。
はぁー。めんどくさいけど、教授に聞きに行くか? いやいや、あの教授嫌味が半端ないんだよね。
数分悩んだ挙句、結局教授の研究室に向かった。
しかしついていない、まさかもういないとは…
「あぁ、教授なら今日はもう帰られたよ。何でも今日は娘の参観日らしい。全く娘に甘いよ。その優しさを教え子にも分けろっての」
何とか教授のゼミ生からテーマを聞き出せたけど、資料が圧倒的に足りない。仕方がない。明日にでもに誰かに聞くか
この大学生活は好きでも、嫌いでもない。昔の私はこの生活をなによりも大事にしていたんだろう。だけど今は…。
ダメだ! ダメだ! 弱気になるな私。とにかく今日は帰ってテレビでも見よう。
立ち止まっていた自分に気合を入れると、再び歩き出し、校門をくぐった。
「あの、すみません」
突然背後から声をかけられ、ビクッとしたが、何処か聞いた事がある声だ。
ゆっくりと背後に振り向くと、全身黒いスーツに、黒いサングラスをかけた女性が立っていた。
「お久しぶりです。奥沢様」
………!
「あ、もしかして黒服さん⁉︎」
黒服さん。私が高校の時組んでいたバンドのメンバーに仕えていた人達で、とにかくそのメンバーの無理難題をこなす凄い人達だ。
「あの、突然どうしましたか?」
黒服さんは周りを見渡し、しばらくして近くに待機させていたのか、慣れた様にリムジンを呼び、ドアを開ける。
「奥沢様、ここでは少々人目に着きます。奥沢様も目立つのは避けたいでしょうから」
いや、平凡な女子大生が黒服の人達にリムジンに乗せられる時点で、手遅れでしょうが。
「わ、分かりました」
好奇の目線が背中越しでも伝わってきたが、それらの視線を無視し、私は足早にリムジンに乗った。
「ところで、一体どうしたんですか? わざわざこんなところまで来て」
窓の外の過ぎ去っていく景色を眺めながら、私は問いかけた。
「こころ様を覚えていらっしゃいますか?」
「…忘れるわけないですよ。こころには何度も振り回されましたからね」
こころ、弦巻こころとは高校の時のバンド仲間で、この黒服さん達が使えている。超が何個もつくほどのお金持ちである弦巻財閥のお嬢様だ。
私が高校生の時に組んでいたバンド『ハロー、ハッピーワールド』はこころが世界を笑顔にするをコンセプトに結成したバンドで、私はそこでミッシェルというピンク色のクマの様な外見をしたぬいぐるみを着てDJをやっていた。
まぁなんでぬいぐるみを着て演奏をしていたのかとか、色々疑問はあるだろうけど、大体の原因は弦巻こころだ。
こころは天真爛漫をまさに体現している人物で、それに型破りな普通では想像でできないことをやってのける。
まぁ大体そんな事をしていれば、誰かが巻き込まれるわけで…主に私なんだが。
とにかく弦巻こころという人間は語るには語りきれないほどの要素を詰め込んだ人物なのだ。
こころとの思い出が脳裏を駆け巡る。懐かしい…。
「奥沢様? 宜しいでしょうか?」
「あ、はい。すみません」
黒服さんの視線をルームミラー越しに受け、私は再び黒服さんの話に耳を傾けた。
「実はこころ様が日本に戻られたのです」
「え! 本当ですか⁉︎」
そうこころは高校卒業後まもなくして、海外に飛び出したのだ。
『世界中の人達を笑顔にするの!』
そう言ってこころは飛び出て行った。全く相変わらず勝手な…。
「えぇ、つい数日前に。そしてその際こころ様が仰ったのです」
『こころ様お帰りなさいませ』
『あ、黒い服の人達じゃない! お出迎えありがとうね!』
『とんでもございません』
『あ、私あなた達にお願い事がしたいのだけど!』
『‼︎ こころ様自ら私達にお願い事ですか?
な、なんなりと!』
『あのね! みんなにまた会いたいの!』
『みんなとは、誰のことでしょうか?』
『みんなはみんなよ! 薫でしょ、はぐみに、花音、ミッシェル、そして美咲にも!』
『ハロハピの皆さんですか?』
『えぇ! 勿論香澄達にも会いたいわ! でもまずはハロハピのみんなに会いたいの!』
『それは構いませんが、会った後はどうするおつもりですか?』
『そうねぇ…あ、こんなのはどうかしら!』
「て、手作り花火⁉︎」
相変わらずこころはこころだと思い、黒服さんの話を聞いていたが、まさかのワードに思わず大声で驚いてしまった。
「はい。こころ様はハロハピの皆さんと手作り花火を作って、一緒に打ち上げたいとおっしゃっていました」
私の大声に驚く様子もないまま黒服さんは淡々と説明していく。
「手作り花火なんて、素人の私たちには作れないと思うんですけど…」
「御安心下さい。弦巻家には専属の花火師がおります他、既に材料確保や施設建設を含めた準備は滞りなく進んでます」
「へ、へぇー」
流石弦巻家…次元が違う。
「それでは改めてお聞きします奥沢様、こころ様の招待を受けてくださるでしょうか?」
車内に張り詰めた空気が漂う。黒服さんも緊張しているのだろう…。
まぁ回答は一つだけどね
ジリリリ! ジリリリ!
「うーん…もうちょっとだけ…」
ジリリリリリ‼︎
「あーもう、起きるよ!」
けたたましく鳴る目覚まし時計を止め、枕元に置いてったスマホを半開きの目で覗く。
「もう八時か…起きなきゃ講義に遅れる」
愛しいベッドに別れを告げ、キッチンに向かう。
…食パンでいいか。
慣れた手つきで食パンをトースターに入れ、焼けるまでの間に軽くシャワーを浴び、インスタントコーヒーをコップに入れ、一息つく。
これが私こと奥沢美咲の朝のルーティンだ。
チン!
はっ!一瞬寝てしまっていた…。
焼けたトーストにジャムを付け一口。
美味い…。
トーストを完食し、鞄の中に今日の講義に使う教科書を詰め込む。
よし、行くか!
玄関で気合を入れ、勢いよくドアを開ける。しかしドアを開けた瞬間湿気と熱気が混ざった嫌な空気が肌に伝わる。
暑い…。
玄関から外に出た一歩で家に帰りたくなる。
帰りたくなる気持ちを抑え、私は階段を降りて、アパートを後にした。
アパートから徒歩十分最寄駅に到着する。改札を抜け、いつもの様に電車を待ち、その間にスマホをポチポチ…。
気づくと電車が到着し、そのまま乗り込み十数分間電車に小刻みに揺られる。これが日常だ。
目的地に到着し、改札を抜け歩き出す。駅を出て数分、目的地が見えて来る。
そう私は奥沢美咲は大学生ってやつになった。大学入学前は色々と緊張したけど、入って一週間で大体慣れた。
講義は必須科目以外は自由だし、授業自体も軽く受けられる。特に図書館は静かだし、この時期には冷房が完備されていて、私の癒し空間だ。
友達は多くも、少なくもない。付き合い自体も軽い付き合いで、私の性に合ってる。高校の時とは全く違う…。
「はい。今回の講義はここまで、次回の講義までに今回のテーマに関するレポートを二千文字以内でまとめてくる様に」
暫くして教授の声でハッと我に帰った。やばい…今回のテーマってなんだっけ?
すぐさま隣に座っていた人に訊こうとしたが、時すでに遅くすでに席は無人だった。
はぁー。めんどくさいけど、教授に聞きに行くか? いやいや、あの教授嫌味が半端ないんだよね。
数分悩んだ挙句、結局教授の研究室に向かった。
しかしついていない、まさかもういないとは…
「あぁ、教授なら今日はもう帰られたよ。何でも今日は娘の参観日らしい。全く娘に甘いよ。その優しさを教え子にも分けろっての」
何とか教授のゼミ生からテーマを聞き出せたけど、資料が圧倒的に足りない。仕方がない。明日にでもに誰かに聞くか
この大学生活は好きでも、嫌いでもない。昔の私はこの生活をなによりも大事にしていたんだろう。だけど今は…。
ダメだ! ダメだ! 弱気になるな私。とにかく今日は帰ってテレビでも見よう。
立ち止まっていた自分に気合を入れると、再び歩き出し、校門をくぐった。
「あの、すみません」
突然背後から声をかけられ、ビクッとしたが、何処か聞いた事がある声だ。
ゆっくりと背後に振り向くと、全身黒いスーツに、黒いサングラスをかけた女性が立っていた。
「お久しぶりです。奥沢様」
………!
「あ、もしかして黒服さん⁉︎」
黒服さん。私が高校の時組んでいたバンドのメンバーに仕えていた人達で、とにかくそのメンバーの無理難題をこなす凄い人達だ。
「あの、突然どうしましたか?」
黒服さんは周りを見渡し、しばらくして近くに待機させていたのか、慣れた様にリムジンを呼び、ドアを開ける。
「奥沢様、ここでは少々人目に着きます。奥沢様も目立つのは避けたいでしょうから」
いや、平凡な女子大生が黒服の人達にリムジンに乗せられる時点で、手遅れでしょうが。
「わ、分かりました」
好奇の目線が背中越しでも伝わってきたが、それらの視線を無視し、私は足早にリムジンに乗った。
「ところで、一体どうしたんですか? わざわざこんなところまで来て」
窓の外の過ぎ去っていく景色を眺めながら、私は問いかけた。
「こころ様を覚えていらっしゃいますか?」
「…忘れるわけないですよ。こころには何度も振り回されましたからね」
こころ、弦巻こころとは高校の時のバンド仲間で、この黒服さん達が使えている。超が何個もつくほどのお金持ちである弦巻財閥のお嬢様だ。
私が高校生の時に組んでいたバンド『ハロー、ハッピーワールド』はこころが世界を笑顔にするをコンセプトに結成したバンドで、私はそこでミッシェルというピンク色のクマの様な外見をしたぬいぐるみを着てDJをやっていた。
まぁなんでぬいぐるみを着て演奏をしていたのかとか、色々疑問はあるだろうけど、大体の原因は弦巻こころだ。
こころは天真爛漫をまさに体現している人物で、それに型破りな普通では想像でできないことをやってのける。
まぁ大体そんな事をしていれば、誰かが巻き込まれるわけで…主に私なんだが。
とにかく弦巻こころという人間は語るには語りきれないほどの要素を詰め込んだ人物なのだ。
こころとの思い出が脳裏を駆け巡る。懐かしい…。
「奥沢様? 宜しいでしょうか?」
「あ、はい。すみません」
黒服さんの視線をルームミラー越しに受け、私は再び黒服さんの話に耳を傾けた。
「実はこころ様が日本に戻られたのです」
「え! 本当ですか⁉︎」
そうこころは高校卒業後まもなくして、海外に飛び出したのだ。
『世界中の人達を笑顔にするの!』
そう言ってこころは飛び出て行った。全く相変わらず勝手な…。
「えぇ、つい数日前に。そしてその際こころ様が仰ったのです」
『こころ様お帰りなさいませ』
『あ、黒い服の人達じゃない! お出迎えありがとうね!』
『とんでもございません』
『あ、私あなた達にお願い事がしたいのだけど!』
『‼︎ こころ様自ら私達にお願い事ですか?
な、なんなりと!』
『あのね! みんなにまた会いたいの!』
『みんなとは、誰のことでしょうか?』
『みんなはみんなよ! 薫でしょ、はぐみに、花音、ミッシェル、そして美咲にも!』
『ハロハピの皆さんですか?』
『えぇ! 勿論香澄達にも会いたいわ! でもまずはハロハピのみんなに会いたいの!』
『それは構いませんが、会った後はどうするおつもりですか?』
『そうねぇ…あ、こんなのはどうかしら!』
「て、手作り花火⁉︎」
相変わらずこころはこころだと思い、黒服さんの話を聞いていたが、まさかのワードに思わず大声で驚いてしまった。
「はい。こころ様はハロハピの皆さんと手作り花火を作って、一緒に打ち上げたいとおっしゃっていました」
私の大声に驚く様子もないまま黒服さんは淡々と説明していく。
「手作り花火なんて、素人の私たちには作れないと思うんですけど…」
「御安心下さい。弦巻家には専属の花火師がおります他、既に材料確保や施設建設を含めた準備は滞りなく進んでます」
「へ、へぇー」
流石弦巻家…次元が違う。
「それでは改めてお聞きします奥沢様、こころ様の招待を受けてくださるでしょうか?」
車内に張り詰めた空気が漂う。黒服さんも緊張しているのだろう…。
まぁ回答は一つだけどね
作品名:バンドリ if物語 ハロハピ大学生 〜ひと夏の思い出〜 作家名:ゆー