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炬善(ごぜん)
炬善(ごぜん)
novelistID. 41661
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CoC:バートンライト奇譚 『毒スープ』前編(上)

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 幻覚ではないかと考えた。疲労が祟ったのではないかと。
 現実にあり得ざる光景だったのだから。
 だが、その顔の輪郭は、あまりにも現実味を帯びていた。 

 つぶらな水色の瞳。鼻周りのそばかす。
 彼女は肩を竦めた。そして、かすかに微笑んだ。
 その笑みの意図は、バリツの心理学を持ってしても、推し量れなかった。

「え――」

 瞬きした後には、もうその姿はなかった。
 アシュラフもいなくなっていた。

「……バリツ?」
「おーい? バリツ? 大丈夫か~?」
 訝る二人の客人が声をかけてくるまでの間、バリツは立ち尽くしたまま、動けなかった。


 それから程なくして、斉藤とバニラはそれぞれの帰路についた。
 彼らは帰り際も体調を気遣ってくれたが、バリツは大事ないと伝えた。

 それでも一日を終えようとするバリツの胸中には、困惑と、疑念が渦巻いていた。

(あれは――誰だったのだ?)


☆続