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炬善(ごぜん)
炬善(ごぜん)
novelistID. 41661
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CoC:バートンライト奇譚 『毒スープ』前編(上)

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0、プロローグ



 狂気に満ちた死のゲームの果て。
 暗闇の中――バリツ・バートンライトは今、死に瀕していた。
 
 伏した体は自由が効かない。
 拳銃で撃ち抜かれた左膝からは、今なお血が流れていく。
激痛は止んでくれない。

 目指す先まで這っていこうと試みるが、とにかく体が重い。指先からつま先まで、体がひたすらに熱かった。

 背後からは、ゲル状の怪異――いわばスライムが、刻一刻と迫っている。
 そいつの速度は赤子程度。だが自分はカタツムリと肩を並べんばかりだ。 
 このままでは追いつかれ、取り込まれることになるだろう。

(どうして――こんなことになってしまったのだろう……?)

 バリツは薄々勘づいていた。
 これはゲームなどではない。実質の処刑なのだ。
 どれほど取り繕うとも、理不尽極まりない気紛れによる。
 チャンスなどないエクストラステージなのだ。

 出血状態で無理矢理体を動かしている結果だろう。
だんだん意識が遠のいてきた。
 何のために這っているのかも、考えられなくなってきた。 
 そもそも自分は――もはや体を動かせているのか?

『思ったより……――さあさ……その銃で……撃って差し上げなさい』

 ぼんやりと声が聞こえた気がしたが、もはや幻聴か否か、区別が付かなかった。だが、どの道自分は追い打ちをかけられるらしい。

(私の人生は――こんなところで、終わってしまうのか……?)