CoC:バートンライト奇譚 『毒スープ』前編(上)
0、プロローグ
狂気に満ちた死のゲームの果て。
暗闇の中――バリツ・バートンライトは今、死に瀕していた。
伏した体は自由が効かない。
拳銃で撃ち抜かれた左膝からは、今なお血が流れていく。
激痛は止んでくれない。
目指す先まで這っていこうと試みるが、とにかく体が重い。指先からつま先まで、体がひたすらに熱かった。
背後からは、ゲル状の怪異――いわばスライムが、刻一刻と迫っている。
そいつの速度は赤子程度。だが自分はカタツムリと肩を並べんばかりだ。
このままでは追いつかれ、取り込まれることになるだろう。
(どうして――こんなことになってしまったのだろう……?)
バリツは薄々勘づいていた。
これはゲームなどではない。実質の処刑なのだ。
どれほど取り繕うとも、理不尽極まりない気紛れによる。
チャンスなどないエクストラステージなのだ。
出血状態で無理矢理体を動かしている結果だろう。
だんだん意識が遠のいてきた。
何のために這っているのかも、考えられなくなってきた。
そもそも自分は――もはや体を動かせているのか?
『思ったより……――さあさ……その銃で……撃って差し上げなさい』
ぼんやりと声が聞こえた気がしたが、もはや幻聴か否か、区別が付かなかった。だが、どの道自分は追い打ちをかけられるらしい。
(私の人生は――こんなところで、終わってしまうのか……?)
作品名:CoC:バートンライト奇譚 『毒スープ』前編(上) 作家名:炬善(ごぜん)