CoC:バートンライト奇譚 『毒スープ』前編(下)
「ウリィイイイイイイッッ!!!」
桁違いな音量の雄叫び。
何かがはじけ飛ぶ轟音。
それらはバリツを覆い隠そうとしていた死の暗闇を、吹き飛ばした。
「ぶぁっはあ!?」
激しく咳き込む。唐突に首の拘束が解け、呼吸ができるようになったのだ。急激に流れ込んだ空気のために、内臓からぶん殴られたような気すらした。
先ほどまでの幻覚は消えていた。
やたらとくらつく。情報が追いつかない。
それでもまもなく把握できたことは――バリツからみて左の本棚の一角が、派手に吹き飛んだこと。
植物人間たちの意識が、一斉に、闖入者した何者かへ向けられたことだ。
この書物庫に、巨大な“何か”が、突如として現出したのだ。
☆後編(上)へ続く
作品名:CoC:バートンライト奇譚 『毒スープ』前編(下) 作家名:炬善(ごぜん)