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炬善(ごぜん)
炬善(ごぜん)
novelistID. 41661
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CoC:バートンライト奇譚 『毒スープ』後編(下)

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14、裁き



 修道女の銃で左膝を撃ち抜かれたバリツは、たまらず倒れ伏す。

「ぐっ……あああッ!」

 転倒の衝撃。一拍子遅れて全身をめぐる、かつてない激痛。
 バリツはひたすらにもだえる。頭が真っ白になりかねなかった。ひどい目眩がした。膝を直視するのが怖かった。だが、鮮血は真っ黒な地面に広がり、パジャマに染みこんでいくのがはっきりとわかった。

『さあ~、エクストラゲームだよぉ……』

 エクストラゲーム――先ほども放っていた言葉だが、全く意味がわからなかった。
膝を理不尽に打ち抜いておきながら、何を始めるというのか!?

 激痛の中、バリツの聴覚は異変を察知する。

 不愉快な粘液が混ざり合い、脈動するような音。それも、かなりの大きさ。

伏したまま振り返ると、そう遠くない背後で、扉と化していたはずのあのスライムがのたうっているではないか。

カラン――。

今度は遙か先からの、かすかな音を辿ると――100メートルはあろう先に、調理室にあったはずの鍋。
完成した毒入りスープを入れていたはずの鍋。

仄かな光を放つそれは、バリツを手招きしているかのようだった。
 チャウグナ―・フォーンは告げる。ゲームの勝利条件を。

『その状態で、あの鍋まで這い寄って、スープを飲み干してみせなさい』
「……な……?」
『そうすれば脱出させてあげよう。スライムに追いつかれればゲームオーバーだよ』
「そんな、むちゃくちゃだ……!」
『さあ、ゲームスタートだあ!』

 素っ頓狂なほどに高揚した声で、怪異が宣言した途端、スライムがバリツめがけて接近を開始した。決して早くはなかったが、その恐怖は今のバリツにとって計り知れない物だった。

 悲鳴を上げて死に物狂いで立ち上がろうとするが、バランスを取れようはずもなくすぐに倒れ込んでしまう。

 左足を重りとするようにして、残る手足で匍匐する他なかった。だが、速度を上げるバリツをもてあそぶかのように、液状の怪物もまた速度を合わせてくる。

バリツは必死で這う。
 人肉と毒を材料に組み込んだ悪夢のスープが、この瞬間はゴールであり希望。なんたる皮肉だろうか。

 必死で這い続ける中――バリツは考える。

(どうして――こんなことになってしまったのだろう……?)

 バリツは薄々勘づいていた。
 これはゲームなどではない。実質の処刑なのだ。
 どれほど取り繕うとも、理不尽極まりない気紛れによる。
 チャンスなどないエクストラステージなのだ。

 出血状態で無理矢理体を動かしている結果だろう。
だんだん意識が遠のいてきた。
 何のために這っているのかも、考えられなくなってきた。 
 そもそも自分は――もはや体を動かせているのか?

『思ったより動けてるじゃないか――さあさ下僕君。その銃で今一度適当に撃って差し上げなさい。脇腹あたりがいいよぉ』

 ぼんやりと声が聞こえた気がしたが、もはや幻聴か否か、区別が付かなかった。だが、どの道自分は追い打ちをかけられるらしい。

(私の人生は――こんなところで、終わってしまうのか……?)
 

 ゴールたる鍋があるはずの場所で、異なる何かの象が見えた。
人影――明らかな幻覚だった。

 誰かがこちらを見つめている。
 揺らぐ銀髪の――ゴシック・アンド・ロリータ。

(アシュラフ君?)

 その表情は窺えなかった。
 ただただ、アシュラフはバリツに背を向けた。
その姿はまたしても、変化していく。
赤毛の髪の、少女の姿に。

(赤毛の……あの子……結局……分からずじまい、か……)

 ――……。