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宇宙に虹、大地に黄昏 2巻

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フロンティアⅡ


司令室は、今日も静かであった。
半世紀ほど前に起こった大戦の爪痕などは、忘れ去ってしまうほどに穏やかな
のだ。
その司令室のモノクロ調の壁に、ステンレス製の窓枠をもつ飾り気のないガラスは、古くから男の仕事場を連想させる典型的なものだ。
奥向きにある一人用の作業デスク上には、2台のコンピューターがあるのだが、隅には土台にのせた黄土色のラグビボールが置いてあって、少しの異彩を放っていた。
それは司令官の趣味によるものらしく、活発さをかんじさせた。

「失礼致します。ラザロ部隊、チャールズ・ピングリー大尉であります」
「よし。訓練はいつも通り、だぞ。不測の事態があったとして、経験不足では
言い訳が立たないということを忘れるな」
こう厳然と言いきったフィッツウィリアム・ダーシー大佐は、基地司令として、突然舞い込んだ書類仕事の処理をやらなければいけなかった。
だから少しでも鬱憤を晴らそうと訓練の視察に出たい気分になっていたのだが、書類仕事のせいでそうもいかない、というジレンマに陥っていた。
そんなほどに平和なのだから、ダーシーは気を抜くことを極力避けたかった。
昔こそ遊びたい盛りのような若い兵士だったが、いっとき、足を掬われて後悔したおぼえがあるのだ。
そのおぼえは軍務にあまり関係のないことではあるが、だからこそ忘れないように人生の糧とするのだ。
けれど、軍服の息苦しさは、今も変わらなかった。