アバランチinわたし
アバランチinわたし
今立っているここは名作RPGといわれる、ファイナルファンタジー7の『アバランチのアジト』なのですよ。ティファがカウンターにて酒を出してくれるという展開です。
「君、この辺りでは見ないお客さんよね。何番街から来たの?」
初めてのお客にはサービスとして一杯おごるのが酒場セブンスヘブンの習わしらしい。ティファが手慣れた手つきでカクテルの瓶をカシャカシャと振るいながら、オリジナルドリンクを差し出す。
「君、未成年みたいだし、一応アルコールは抜いておいたよ。」
昼間だからか店には他に誰もいない。客がいないのは判るが、ここがゲームの世界ならお約束的なバレット娘、マリンがいそうだが…
マリンの姿は見えない。原作ならば店店に備えてつけられたゲーム機(ピンボール)から隠された地下室に行けるが、マリンもそこにいるのだろうか。もしかしたらクラウドやバレットもそこにいて、魔光炉襲撃の作戦計画等をしているのだろうか。
おっと話がそれてしまった。本題に戻そう。
どういう訳か気付いたらゲームの世界に迷い込んでいた私、その世界から元の世界に帰る方法があるとすれば、やはりお約束的な流れとして、ゲームクリアしかないのだろうか。
だがクラウド達と共にセフィロスと戦うなら正宗で突き刺されるイメージしかない。
戦わずしてミッドガルに引きこもり、クラウド達が勝手にセフィロスを倒してくれれば、ゴールできる気もするが…
考えているとティファと目が合った。おそらく、さっきの問いのことだろう。
さて、どうしたものか。どこから来たと問われて、「ゲームの外からです」なんて答えてまともに会話が成り立つだろうか。
FF7の世界。マニアと呼べる程詳しい訳でないが、神羅の街は8番街まである事は覚えている。ここは7番街であるから、隣街の6番街ということにして話を合わせよう。
「貴方6番街の人なの? この街はじめて?」
はじめてというか。街についてはゲーム以上の事は知りません。ですが目の前にいるティファさんの事であれば身長から体重、スカートの丈サイズ、オッパイの大きさまで把握しております。アルティマニアで覚えております。
ティファはこの青少年の不純な視線を察知してか、奥から緑色の玉。恐らく魔法のマテリア一つ取ってきて目の前で握り潰した。
「魔法を放つ事もできるけど、まあ大切なお客様だしね…。わかってくれるよね…」
セクハラに対しては年齢に関係なく、断固やり返すアピールなのだろう。私は目をつむり、露出狂に近いティファから命を守る為に頑張った。
優しさの中に狂気あり、私は目を閉じて空を見上げた。
ティファの存在を脳内から消したとき、残って見えるものはマテリアで
「マテリアって一体なんなんだろう?」という疑問が沸い出てくる。
ゲームをプレイしていてもマテリアはどうやって使うものか良くわからなかった。武器や防具の穴に装備しないと使えない。そういう知識くらいはあるが、なぜそんなまどろっこしい事をするのだろう。
「え? マテリアの使い方? 貴方それ本気で言っているの?」
そう来るだろうとは思った。ここがゲームの世界に忠実であるならば、初心者の館でマテリアについて色々と説明を受けられる。だが、このFF7の世界は妙なところがリアリティに出来上がっている。
例えばこの世界の人々はマテリアの使い方なんて5歳児でも知っていて当然の様に言う。メニュー画面の開き方からアイテムが各99個持てる不思議な異次元ボックスの存在等も知っていて当然かの様な態度だ。
「そんな事も知らないのか!」という住民の冷たい態度から逃げる様にこの酒場に辿りついたのである。
私からしてみればその様な異常なシステムがある事に疑問すら抱いていない住民達の方に疑問を抱かずにはいられない。
もう楽にしてくれ。私は記憶喪失をしている振りをした。
「貴方、記憶喪失なの!? だからマテリアの使い方も判らなかったのね…」
「なるほど…。だから物珍しく周りをキョロキョロしてたのね…。私の事もチラチラ見るから、てっきりムッツリセクハラのお客さんかと思ってしまったわ。」
ティファは同情してくれ、マテリアの使い方を手とり足とり教えてくれた。
ティファがカウンターの奥から、氷のマテリアを持ち戻ってきた。手に持ち念じると、マテリアから離れた空間から冷気が発生する。
「マテリアはね、装備しないと使えない訳ではなくてね。マテリアが複数近接していると互いに影響しあって力を発動しないの」
「マテリア穴のある武器や防具は近接するマテリア同士が影響を受けない様に特殊加工が施されているの」
マテリアは手に持ち、ただ念ずる事で魔法を発動できるらしい。だがそれだと手がふさがり、実際の戦闘においては武器や盾が持てなくなる。
手が塞がれば戦いの最中にマテリアを装備し直す事が困難になる。故に通常、マテリアのみを手に持って戦う事は考えられないのだそう。
「どう? マテリアの使い方、簡単でしょう?」
念ずるだけで魔法が使える。これはあまりに便利の様な気もする。きっとセフィロスがニブルヘイムの火事を引き起こしたのは水系統のマテリアさえあれば防げたという事だろう。と同時に疑問に思った。FF7世界には水を操る魔法が存在しない。召喚獣のリヴァイアサンと敵の技のアクアブレスくらいしかない。
なぜ水を生み出す魔法がないのだろうか?
「水を生み出す魔法? どうしてそんなものが必要なの?」
ニブルヘイムの火事の一件、火を消す事ができたら。そう言ったら今、記憶喪失したと言った手前、ややこしい事になるかもしれない。
とはいえ、クラウドにくっついてクリアするならゲームの進行、未来予知ができる立場の者として役に立つかもしれない。戦力外だとしても、予言者として立ち回れば死ぬはずのエアリスも救う事ができるかもしれない。
たが言葉にする事はできなかった。
まるでゲームのシナリオに左右するチート行為はしてはいけないかの様に。
私自身がゲーム内のコマの一つのNPCかの様だった。主人公達の未来に強い影響を与える事ができない様にプログラムされているかの様に、見えない力に支配され、言葉にする事ができなかった。
私は一体どういう位置づけで、この世界で何をする役どころなのか?
私はティファから借りたマテリアを手に持ったまま、考えてながらいじっていた。
冷気と火のマテリアを手の中でゴロゴロさせていると、手が濡れていた。
冷気が熱で溶け、水が発生していた。
「な、何これ! どういうことなの!?」
聞きたいのはこっちである。2つ持って念を加えると水が発生する。それは普通な事ではないのか?
「さっきも説明したけど、マテリアはそれぞれが近接していると互いに影響を受けて力を発揮できないの。冷気のマテリアは冷気を出す以外には使えないし、火のマテリアも火を出す事にしかつかえないの。」
ティファは私を外に連れ出して、強い念を込める様に促した。
今立っているここは名作RPGといわれる、ファイナルファンタジー7の『アバランチのアジト』なのですよ。ティファがカウンターにて酒を出してくれるという展開です。
「君、この辺りでは見ないお客さんよね。何番街から来たの?」
初めてのお客にはサービスとして一杯おごるのが酒場セブンスヘブンの習わしらしい。ティファが手慣れた手つきでカクテルの瓶をカシャカシャと振るいながら、オリジナルドリンクを差し出す。
「君、未成年みたいだし、一応アルコールは抜いておいたよ。」
昼間だからか店には他に誰もいない。客がいないのは判るが、ここがゲームの世界ならお約束的なバレット娘、マリンがいそうだが…
マリンの姿は見えない。原作ならば店店に備えてつけられたゲーム機(ピンボール)から隠された地下室に行けるが、マリンもそこにいるのだろうか。もしかしたらクラウドやバレットもそこにいて、魔光炉襲撃の作戦計画等をしているのだろうか。
おっと話がそれてしまった。本題に戻そう。
どういう訳か気付いたらゲームの世界に迷い込んでいた私、その世界から元の世界に帰る方法があるとすれば、やはりお約束的な流れとして、ゲームクリアしかないのだろうか。
だがクラウド達と共にセフィロスと戦うなら正宗で突き刺されるイメージしかない。
戦わずしてミッドガルに引きこもり、クラウド達が勝手にセフィロスを倒してくれれば、ゴールできる気もするが…
考えているとティファと目が合った。おそらく、さっきの問いのことだろう。
さて、どうしたものか。どこから来たと問われて、「ゲームの外からです」なんて答えてまともに会話が成り立つだろうか。
FF7の世界。マニアと呼べる程詳しい訳でないが、神羅の街は8番街まである事は覚えている。ここは7番街であるから、隣街の6番街ということにして話を合わせよう。
「貴方6番街の人なの? この街はじめて?」
はじめてというか。街についてはゲーム以上の事は知りません。ですが目の前にいるティファさんの事であれば身長から体重、スカートの丈サイズ、オッパイの大きさまで把握しております。アルティマニアで覚えております。
ティファはこの青少年の不純な視線を察知してか、奥から緑色の玉。恐らく魔法のマテリア一つ取ってきて目の前で握り潰した。
「魔法を放つ事もできるけど、まあ大切なお客様だしね…。わかってくれるよね…」
セクハラに対しては年齢に関係なく、断固やり返すアピールなのだろう。私は目をつむり、露出狂に近いティファから命を守る為に頑張った。
優しさの中に狂気あり、私は目を閉じて空を見上げた。
ティファの存在を脳内から消したとき、残って見えるものはマテリアで
「マテリアって一体なんなんだろう?」という疑問が沸い出てくる。
ゲームをプレイしていてもマテリアはどうやって使うものか良くわからなかった。武器や防具の穴に装備しないと使えない。そういう知識くらいはあるが、なぜそんなまどろっこしい事をするのだろう。
「え? マテリアの使い方? 貴方それ本気で言っているの?」
そう来るだろうとは思った。ここがゲームの世界に忠実であるならば、初心者の館でマテリアについて色々と説明を受けられる。だが、このFF7の世界は妙なところがリアリティに出来上がっている。
例えばこの世界の人々はマテリアの使い方なんて5歳児でも知っていて当然の様に言う。メニュー画面の開き方からアイテムが各99個持てる不思議な異次元ボックスの存在等も知っていて当然かの様な態度だ。
「そんな事も知らないのか!」という住民の冷たい態度から逃げる様にこの酒場に辿りついたのである。
私からしてみればその様な異常なシステムがある事に疑問すら抱いていない住民達の方に疑問を抱かずにはいられない。
もう楽にしてくれ。私は記憶喪失をしている振りをした。
「貴方、記憶喪失なの!? だからマテリアの使い方も判らなかったのね…」
「なるほど…。だから物珍しく周りをキョロキョロしてたのね…。私の事もチラチラ見るから、てっきりムッツリセクハラのお客さんかと思ってしまったわ。」
ティファは同情してくれ、マテリアの使い方を手とり足とり教えてくれた。
ティファがカウンターの奥から、氷のマテリアを持ち戻ってきた。手に持ち念じると、マテリアから離れた空間から冷気が発生する。
「マテリアはね、装備しないと使えない訳ではなくてね。マテリアが複数近接していると互いに影響しあって力を発動しないの」
「マテリア穴のある武器や防具は近接するマテリア同士が影響を受けない様に特殊加工が施されているの」
マテリアは手に持ち、ただ念ずる事で魔法を発動できるらしい。だがそれだと手がふさがり、実際の戦闘においては武器や盾が持てなくなる。
手が塞がれば戦いの最中にマテリアを装備し直す事が困難になる。故に通常、マテリアのみを手に持って戦う事は考えられないのだそう。
「どう? マテリアの使い方、簡単でしょう?」
念ずるだけで魔法が使える。これはあまりに便利の様な気もする。きっとセフィロスがニブルヘイムの火事を引き起こしたのは水系統のマテリアさえあれば防げたという事だろう。と同時に疑問に思った。FF7世界には水を操る魔法が存在しない。召喚獣のリヴァイアサンと敵の技のアクアブレスくらいしかない。
なぜ水を生み出す魔法がないのだろうか?
「水を生み出す魔法? どうしてそんなものが必要なの?」
ニブルヘイムの火事の一件、火を消す事ができたら。そう言ったら今、記憶喪失したと言った手前、ややこしい事になるかもしれない。
とはいえ、クラウドにくっついてクリアするならゲームの進行、未来予知ができる立場の者として役に立つかもしれない。戦力外だとしても、予言者として立ち回れば死ぬはずのエアリスも救う事ができるかもしれない。
たが言葉にする事はできなかった。
まるでゲームのシナリオに左右するチート行為はしてはいけないかの様に。
私自身がゲーム内のコマの一つのNPCかの様だった。主人公達の未来に強い影響を与える事ができない様にプログラムされているかの様に、見えない力に支配され、言葉にする事ができなかった。
私は一体どういう位置づけで、この世界で何をする役どころなのか?
私はティファから借りたマテリアを手に持ったまま、考えてながらいじっていた。
冷気と火のマテリアを手の中でゴロゴロさせていると、手が濡れていた。
冷気が熱で溶け、水が発生していた。
「な、何これ! どういうことなの!?」
聞きたいのはこっちである。2つ持って念を加えると水が発生する。それは普通な事ではないのか?
「さっきも説明したけど、マテリアはそれぞれが近接していると互いに影響を受けて力を発揮できないの。冷気のマテリアは冷気を出す以外には使えないし、火のマテリアも火を出す事にしかつかえないの。」
ティファは私を外に連れ出して、強い念を込める様に促した。
作品名:アバランチinわたし 作家名:西中