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その両手をポケットにしまいたい。

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「私さめっちゃさあ、漫画読んでてさ。絢音ちゃんと、未央奈と、みり愛?で電話しててさあ、電話してたじゃん、覚えてる?」
「うん覚えてるよ」みり愛は頷いた。
「あー、してたねー」未央奈が言った。「夜ね」
 鈴木絢音も御仏のような眼差しを俯けて、頷いていた。
「だけど私漫画読んでたら気付かなかったからさあ」
「出なかったやつだよねえ?」みり愛は日奈子に言う。
「そう。途中で参加した。びっくりした、もうみんな出来上がってて、夜のテンション」日奈子は可笑しそうに言った。
「そうだよ。晩かったよ」みり愛が答える。
 比較的<レストラン・エレベーター>に近い席にいた堀未央奈を先頭に、風秋夕と稲見瓶も加えた三人が、表立って皆のリクエスト・ドリンクを長手が十五メートルはあろうかという長方形のテーブルへと分配していった。
「しかも真っ暗だったよねなんか」みり愛は思い出して微笑む。
「真っ暗、そ。暗闇の中で、私、あの、妹と部屋が隣り合わせで、仕切りが、こう、動くドアなの。で仕切ってて、寝るとき寂しいから、ベッドの間だけ開けてるの、妹との間仕切り。だから私の部屋つけちゃうと妹も起こしちゃうじゃん?そうっかりしてたけど途中でつけたよね」
「ニカって出てきて、はわあ、てなった」みり愛は楽しそうに日奈子に言った。
「イナッチって恋愛感情とかあるの?」純奈が不思議そうに稲見に言う。「なんか、あんま聞いたことない、てか、こういう話あんまりしたことないよね」
「ミステリアスな奴って得だよな」夕が稲見を一瞥して言った。「乃木坂の伊藤純奈ちゃんから、恋愛の質問されちゃうんだもんな。俺なら家宝にするよ」
「ずるいでござるよイナッチ殿!」あたるが顔面を歪ませて稲見を指差して言った。「て、敵でござる!」
「恋愛感情はあるのか、ていう疑問を持たれることが羨ましい?」稲見は夕とあたるを交互に見ながら言った。
「う、羨ましいでござる……」あたるは何故か、赤面して下を向く。
「いいから。じゅんちゃんを待たせるなよ」夕は気持ちを一新させて稲見を一瞥して言った。
「恋はしたことあるよ」稲見は純奈に言った。
「誰に?」純奈が興味深そうににやけて言う。
「学校の先生」稲見はそう言ってから、夕を指差した。「夕の背中にはタトゥーがあるんだけどね」
「え!」蘭世が思わず声を上げた。「はい、ってるの?」
「ほんと話題が自分に向くの苦手だな」夕は苦笑して、会話の参加者達に視線を向ける。最初に蘭世を見つめた。「十五の時に入れたやつね。まあ、最近追加した絵柄もあるけど」
「中心に大きな一羽のフクロウが入ってるんだけどね」稲見が会話の参加者達に視線を配りながら言った。「羽ばたいてるフクロウが、一つ玉を握りしめてる。宝玉?ていうのかな」
「夕君、意外と不良でござるな」あたるが夕を見つめながら言う。
「入れ墨入れたら不良なの?」夕が不思議そうにあたるを見つめ返して言った。
「不良だよ」怜奈が可笑しそうに言う。
「そのフクロウの握りしめてる玉の中にね」稲見は僅かに、口元を引き上げた。「夕の好きな人の名前が入ってる」
「馬鹿なことを」夕は呆れて溜息を見せた。
「誰の名前?」純奈は顕在的に大きな瞳を一瞬だけ更に大きく見開いて夕にきく。「あ、一般人?」
「イナッチは知ってるの?」蘭世が眼を丸くして稲見に言った。
 稲見瓶は頷く。「もちろん、知ってるし、知ってる人だし」
「秘密だって言ったのに……」夕は呆れ顔で稲見を見る。「お前ってやつは……」
「名前を他言しないのは誓ったけどね、名前があること自体は秘密と思ってない」
「思ってない、て……」夕は稲見にあっけにとられる。
「え誰?」日奈子が話に参加した。「私の知ってる人?」
「イエス」稲見が答える。
「お前さ」夕は困って言った。
「乃木坂の人?」怜奈が夕と稲見を交互に見てきいた。
「乃木坂の人」稲見が答える。
「そこまでね」夕はにこり、と怜奈に微笑んだ。「秘密があった方が、俺も少しはミステリアスになれるからね」

       5

 七月も半ばを過ぎた頃、世界中のソーシャルディスタンスは保たれたままであるが、リモート作業であった多くの職場がようやく、満を持して本格的に動き出したといえる。
 今晩深夜二十五時からの放送になるラジオ番組、乃木坂46のオールナイトニッポンの番組出演を控えた四人は、<リリィ・アース>の地下六階にある<無人・レストラン>一号店にてディスカッションをしていた。
 そこにはリスナーであるこの男の存在もあった。
「この曲は、やっぱり知ってた?二人とも」新内眞衣(しんうちまい)が後輩である乃木坂46四期生の遠藤(えんどう)さくらと賀喜遥香(かきはるか)に向けて言った。「ゲットワイルドね」
「なんだ、ど、なんか、やっぱりシティーハンターっていうアニメもぉ、知ってましたしぃ」遥香は半分真剣に、半分笑顔で答える。「だからなんか、車運転したくなりました、なんか。乗れないけど。あはは」
「乗せるぜ、いつでもだ」磯野は顔をハンサムに作って親指で自分を指差して言う。
「気分だけ?」笑顔のお手本のような笑みで秋元真夏(あきもとまなつ)が言った。
「気分、気分だけちょとやりたくなりました」遥香は楽しそうに言う。
「あれ、シカトしてね?」
「あー、憧れるのはわかるなー」真夏はにこやかに言い、さくらの方を見つめる。「知ってた?」
「はい」さくらは素朴な笑顔で頷いた。
「さくちゃんも乗せるぜ」磯野は格好つけて言う。親指が立っている。「いつ、でもだ」
「ノギザカスキッツ、だっけ?」眞衣が会話のリードを握っている。「頑張ってるよね、さらば青春の光、さん?番組で一緒なんだよね?」
「はい」
「はい」
「どんな方?」眞衣は四期生の二人にきく。
「どんな方だろう」遥香はにやけて言う。
「どんな、方ぁ?」さくらも薄目で考える。「でしょうねえ?」
「さらば青春の光さんはぁ、優しくてぇ、ちょっとエッチなのがたまに傷かなあ。があっはは」
「うるさい、波平!」眞衣は磯野を睨みつける。「ハウス!」
「ぴえんぴえん、てか!」磯野は不服そうに鼻を鳴らした。「今日の俺の扱いひどくね?まいちゅん急に何だよ……」
「じゃあ、ちょっと二人で会話してよ」真夏が女神のような笑顔で磯野に言った。「二人コメントの練習してるからさ、ね」
「まなったん!」磯野は鼻の穴を膨らませて喜び、両手で形どった拳銃で真夏を撃つ。「ズッキュン!」
「はいはい」真夏は、やれやれ、と思う。
 新内眞衣は視線で四期生二人に合図する。パス・ア・マイクである。
「あのう……、お二人とぉ、番組をぉ、やらせてぇ頂いたぁ時ぃとかぁ」遥香は視線を宙に留めながら、ゆっくりと話す。「森田さんは凄いぃ、あの話しかけて下さって」
「おー」眞衣が反応する。
「出身地の話とかぁ、大阪の事とか教えてくれたりとかぁ」遥香が続ける。「なんか裏でも凄い、なんかお話したりとかしてぇ」
「へー」眞衣は合いの手のように反応する。視線は自然とさくらへと移された。
「なんかコントに対してのう、色々アドバイスくれたりするのでぇ」さくらが言う。「一緒にやってて凄い安心感がある」
「最初やっぱ緊張とかしたの?」眞衣がきいた。