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時をかける女王

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■13話



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クロノの裁判には大臣の思惑が絡んでいた。
クロノとマールと恋仲になる恐れ、万が一にも王族に平民の血筋を混ぜたくない、大臣の血族史上主義により、クロノには死刑を前提とした裁判が行われた。
無罪判決だったとしても後日、大臣の独断で死刑を強行するつもりだった。

サラ
「なんでしょうか? やけに街が騒がしいですが…」

ボッシュ
「どうやら城からおふれが出ているようです。」

クロノの死刑執行のふれがでた。予定日は3日後であり、ガルディアの城下はこの話題で持ちきりだった。

サラ「ひどい…

ジール「このままではゲートの謎が解けぬな…

サラ「彼らを助けましょう! 

ジール
「たしかに我らのチカラを使えば難しくもないだろうが…

サラ達は城下の触書の前で怒り狂うルッカを見た。
ルッカはクロノとマールを助けにゲートに飛び込んだが、今の時点でサラ達はルッカもゲートに飛び込んでいたとは知らなかった。

サラ
「あのう、貴方は以前、千年祭でお見かけした…

ルッカ
「あ、貴方はクロノの無実を訴えてくれた人ね。ありがとう。私はクロノの幼馴染でルッカといいます。

サラ
「クロノさん、このままだと大変なことに…

ルッカ
「そう、だから私決めたの!」
 
サラ
「決めた…って?何を?

ルッカ
「…誰にも喋らないって約束できる?

サラ
「ええ。

ルッカ
「クロノを脱獄させる。 

サラ
「! 脱獄って、そんな大それたこと、大丈夫なの? 

ルッカ
「私、こうみえて天才発明家で天才的頭脳の持ち主だもの。不可能はないわ。

サラ
「でも、脱獄させた後はどうなさるのですか? 逃げる場所などあるのですか?

ルッカ
「私はクロノを連れて過去に逃げるわ

サラ
「過去!? それってやっぱりあのゲートが…

ルッカ
「え!? なんでゲートのこと知っているの?

かくかくしかじか

ルッカ
「え!? 貴方達、過去の時代から来たの!?   

かくかくしかじか

ルッカ
「なるほど。貴方達は暴走したラヴォスというものに巻き込まれて現代に飛ばされたと。だから過去に戻る方法を探していると…

サラ
「はい。

ルッカ
「でも、残念ね…。私が行ってきた時代は400年前の中世期、魔王軍とガルディアが戦争している危険な時代だった。貴方達のいた時代ではなさそうよ…

ジール
「魔王? そういえばケヘランがラヴォスの話をしておったなぁ」

サラ
「え? お母様、今何とおっしゃいました?

ジール
「実はな…




ボッシュ
「もしや魔王というのは我々の時代の知識を持っておるのではないかのう。つまり、その時代に行けば、我々の国の者にも会えるやもしれぬ。」

サラ達は意見が一致した。ルッカと共に中世に行き、魔王から話聞き出すことに決めた。

ルッカ
「え? 貴方達、中世に行きたいの? 

ルッカ「なら、クロノを脱獄させるついでに私と一緒にくる?」

ルッカ
「え? クロノの脱獄に手を貸してくれるの?」


ルッカ
「それは有り難いけど、流石に迷惑なんじゃ…

サラは魔法を見せた。

「なるほど。魔法なんて最初は冗談か何かと思ってたけど…

 これなら脱獄計画は完璧だわ。」


なんやかんやで、サラ、ジール、ボッシュ、クロノ、マール、ルッカが千年祭からゲートに入った。


ルッカ
「な、なにこの感じ…いつもと違う…時空が不安定…

マール
「な、なんか怖いよ、私達、ちゃんとゲートから出られるのかな…

ルッカ
「まさか一度にゲートに入れる数に人数制限とかあったのかな…」


クロノ達はなんとか中世へとたどり着いた。

ルッカ
「ヒヤヒヤしたけど何とか大丈夫だったわね。

6人は山を降りて、このままガルディアの城門を叩いた。


兵士
「まて! お前達の中にいるその者達はなんだ! 魔族ではないのか!」

兵士はサラとジールに向かって、人間とは耳の形が違う事を指摘した。
城門で言い争っていると、大臣とリーネがきてその場を収めた。

大臣
「この者達は問題ない、通せ。」

ガルディアは魔族を警戒していて、恩人であるクロノ達に無礼を働いた事を謝罪した。

サラ達は自分たちのいきさつを説明した。

大臣
「ほう、魔力のある人間がガルディアにいるというのはある意味、吉報であるのう」

サラとジールの存在は軍部会議にかけられ、魔王軍掃討に助力してくれるのなら、衣食住の保証をしてくれ、この世界にいるかもしれないジール王国の人間の捜索に助力してくれるという。

サラは条件を加えた。魔族を滅ぼしても未来では生き残りの魔族が不満を持って生きている。なんとかして、この時代で魔族と和平交渉できないかと。

大臣
「それは魔王側の態度によるところだろう。ソナタらが説得できるというのであればだが…

承諾したサラ達はそのまま魔王軍との戦争に突入した。魔法のチカラにより、魔王城まで行き、そこで魔王の気配がジャキに似ていると気付き、再会した。


「姉様? ほんとうに姉様なのか??」

「この気配はジャキ? まさか、あなたなの?」


儀式の間で二人は抱擁を交わした。
魔王にとっては30年以上ぶりの再会で、サラは時の重みを罪深く感じていた。

ジャキ
「私はこの地に飛ばされて、早々に魔族達に目をつけられて…」


ジャキは中世時代での経緯を説明した。
この時代に来て早々に魔族達に命を狙われ、隠していた魔力を使い、身を守った。魔族王のビネガーはジャキの大きなチカラを見るなり、将来性を感じ、城に連れて行き、手元に置いて育てた。

ジャキは城を抜け出してはこの世界を走り回り、サラを探していたが、見つからず絶望した。

ある時、ジャキは人間の領土に行きサラの聞き込みをすると耳のカタチが違うのだと言われ、魔族と勘違いされて襲われた。ビネガーは襲われるジャキを助けるとサラを探すのを諦める様に促した。

『人間はお前の様な者を受け入れない。サラという姉上もこの世界にいたとしても人間達は受け入れないだろう。殺されるに違いない』と

元々魔力なき人間を差別する文化に育てられていたジャキは、ビネガーの言葉を鵜呑みにした。

それからというものジャキは魔族として生きた。そしてラヴォスを召喚し、ラヴォスに復讐する事を誓った。地下で眠るラヴォスの力、その忌々しい力を日々感じさせられ、復讐する事だけを目的に生きてきた。
魔族達にはラヴォスが繁栄をもたらすと嘘をついて、ラヴォスを呼び出す魔術研究に没頭していて、その最中の再会だった。


ジャキはジールに恨みつらみを吐き出した。
ラヴォスが原因とはいえ、その原因を作り出したジールを憎んでいた。
魔神機計画さえ実行しなければ、こんな目に合わずにすんだのだと。

ジャキがジールの胸ぐらに掴みかかったとき、
ボッシュが止めに入り、魔神機計画の真実を語った。

魔神機計画は単なる不老不死ではなく、王宮全体の思惑があっての事だった。王族の一人ダルトンとその派閥は内心で隙あらば王の座を奪わんとしていた。その勢力は大きく、いつでも王宮は血に染まる可能性があった。
作品名:時をかける女王 作家名:西中