悪魔言詞録
23.妖魔 アプサラス
……何ですの? 戦っている最中に、いきなり話しかけてきて。わたくし、あなたとなれ合うつもりなど、一切ありませんわ。この戦いで私たちにできることは雌雄を決すること、ただそれだけです。余計な言葉など不要、さっさと勝負してください。
そんなことない、わたくしを探していた? そんなセリフに、やすやすとは乗りませんわ。
いいですか。私たちアプサラスの中には、人間と結ばれた者もいることはいます。ですが、私たちにだって選ぶ権利はあるのです。あなたのような、実力不足の方と連れ添うのはごめんです。ですから、わたくしを求めるのは諦めてください。
それだけではありません。少し前に通路で、あなたが何をしていたのか、わたくしちゃんと知っていますのよ。ええ。肌の浅黒い、羽の生えた汚らわしい夜魔と親しくしていたではありませんか。そんな女性とねんごろになっておきながら、わたくしにも手を出そうというその性根。それが許せないのです。
さあ、私の睡眠と電撃で楽になってしまいなさい!
ん? それは誤解だって? ……あなたは、あのときの夜魔の方ですわね。問答は無用です。このまま話し続けるなら、ついでにあなたも電撃の餌食にするまでです。
何ですって? この方は、始めからわたくしを求めていた? そんなうそをついて、丸め込もうとしても無駄です。で、そのことを聞いたあなたも、わたくしと仲良くなりたいから行動をともにすることにした? そ、それがどうしたというのですか。たとえそれが真実でも、わたくしはあなたがたを倒すまでです!
……弱そうに見えるけど実際強いし、いいやつだから一緒に仲魔になろう? ふざけないでください、誰がこのような男などに!
じゃあ、奥の手を使うしかない? ふう。やっと、戦う気になったんですのね。
何? カグツチ? 今は静天ですが……、あっ。
リリムさん。静天時のあなたに誘われたら、断ることなどできませんわ。あなたを信じて、この方を主と認めましょう。