悪魔言詞録
10.女神 サラスヴァティ
失礼にもほどがありますわ!
確かにあなたは、わたくしを召喚した、主と認める方ですわ。だとしても、先ほどのような言葉は、到底看過できません! よいですか。わたくしは、技芸の女神なのです。音曲のエキスパートと言っても過言ではない私に向かって、あなた、先ほどなんておっしゃっいました? その言葉がどれだけわたくしを傷つけたか、分かっているのですか。
わたくしが、肌身離さず持っているこの楽器の琵琶。攻撃する際、この琵琶をかき鳴らすのを見て、あなた確かに言いましたわ。
あれで敵がダメージを受けるのは、琵琶から変な音が出ているからに違いない、と。
ひどい。屈辱ですわ。衝撃高揚つきのマハザンマをお見舞いしたいくらいです。この際ですから、きちんと言っておきます。そこへお座りなさって、ちゃんと聞いてください。
私の攻撃は、決して変な音を出しているんじゃありません。むしろ反対に、あまりの音の美しさに耳福状態に陥って、それでダメージを受けているのです。ですから、いい加減なことをおっしゃって、私の妙な風評を広めないようにしてください。お分かりになられましたか? ええ。分かればよいのです。
……とはいえ、確かにわたくしも、少し感情的になりすぎたところがありましたわ。不快な思いをされていたなら、許してください。わたくし元々、ちょっと気持ちが前に出やすいところがあるようで、それでよく嫉妬深いとか言われてしまいますの。こないだも、祀られている地で、男女がボートを漕いだだけで別れるなんて噂を立てられてしまって……。神様もなかなか難しいものですわね、お恥ずかしい限りです。
それにこの受胎後の東京には、わたくしの夫、来ておりませんでしょう?それをとやかく言われたりしないか、実はそれも心配で……。
ええ。でもわたくし、今ここで、いろいろ吐き出すことができて、スッキリしましたわ。また、あなたのためにがんばりますので、よろしくお願いします。



