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悪魔言詞録

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152.龍王 ユルング



 あー、はいはいはい。大丈夫、大丈夫。皆さん、何が言いたいかはわかってます。

 召喚主さんも、イケメンのクー・フーリンさんも、妖精女王のティターニアさんも、地獄の番犬ケルベロスさんも、みーんなおっしゃりたいことはわかっています。でも、少しだけ落ち着いて私の話を聞いてもらえませんか。こちら側にも事情ってものがあるんでね。

 まず前置きとして、私、皆さんほど知名度のある悪魔じゃないんですよ。今でいうオーストラリアのある部族でのみ信仰されていたもんですから。常に歴史の中心を担ってきた西洋出身の皆さんと比べると、どうしても知名度で劣ってしまう。そういう宿命を背負っているものでして。

 そうなると、どうしても有名でないものの常として、召喚する前と実際に喚び出してみた後でギャップが生じてしまうことが多々あるんですね。ああ、実際はこんな姿形だったのか、みたいなね。邪教の館の主さんも合体後の予想図を見せてくれますけど、こういうのはマッチングアプリで出会う人みたいなもので、やっぱり実際に見てみないと具体的なイメージはつかめないものでしょう。

 と、ここまで前置きした上で私、龍王族に所属するユルングというものなんですがね……。正直、皆さんが事前に聞いていた「虹色の大蛇」というイメージとは、まあ、かけ離れていると思うんです。

 その点については、自分でも本当によくわかってるんです。やっぱり蛇っていったら、頭の部分がやや太くなっていて、そこにサイコパスみたいな無表情な目が2個くっついていて、赤い舌がチロチロ出ている。そういうイメージなわけじゃないですか。でも、そのうち二つが私には欠けている。目だけは一応ついてますけど、頭部の太さがないし、舌も出ていない。

 そうなると、どうしてもぱっと見で蛇よりミミズに見えてしまうんですよね。ええ。わかってる。わかっていますとも。でも、姿形はどうにもできないし、こっちも困っているんですよ。


作品名:悪魔言詞録 作家名:六色塔