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悪魔言詞録

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150.邪神 トウテツ



 なあ、おまえは食についてどう思ってる?

 今の人間って、だいたい一日に2、3回は飯を食ってるんだろう? 貧しかった昔だって、可能なら1日に1回は飯にありつきたかったはず。そんな食べる日々を何十年と人間は過ごして一生を終えるんだから、人にとって食はすげえ重要だよな。だからこそ、世の中にはグルメを自称する口内の快楽に身も心もささげた人間たちがいるわけで。

 でさ。俺はこう思うわけよ。こいつらみたいに食に執着するやつらが一番頭が良いんじゃないかってね。

 だって、食べるということは他の欲望よりも高効率なんだよ。睡眠は1回で1日の1/3近くを使っちまう。あれも気持ちはいいが、いささか時間がかかりすぎる。性欲なんかはさ、交われるだけの体力と素晴らしい相手が必要だ。で、仮にそれが手に入ったとしても、そうたくさんは交われないだろ? あと、人に認められたい欲望なんてのは一見、お手軽なように見えるけどさ、その欲望のおかげでネットで炎上していったやつらも腐るほどいるわけじゃん。これもリスクが大きすぎるよな。

 結局さ、食欲が一番効率的に気持ちよくなれるのさ。まあ、食べることももちろん肥満や病気のリスクはあるけどさ、なんだって過ぎたるは及ばざるが如しだよ。まあ、大食いの俺がこれを言うのはちょっとアレだがな。

 で、結局何が言いたいんだ、大食いの悪魔だからマウントを取りたいのかって?

 いや、そうじゃねえ。そう思われたのならすまん。実はさ、邪神にグルメ仲間がいないもんだから、ちょっと話の合う友人がほしかったんだよ。特に人間界はうまいもんが多いからさ、元人間のおまえと仲良くなったら、あのこってりアブラがマシマシのラーメンとか食えねえかなとか思ったんだよ。

 え? お店は知ってるけど、受胎した今じゃいけない?

 うーん。じゃ、頑張っておまえに協力するからさ、新たな世界にでっけえラーメン屋を作って仲良くマシマシのラーメンをかっ食らおうぜ、約束な!


作品名:悪魔言詞録 作家名:六色塔