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悪魔言詞録

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118.妖鬼 シキオウジ



 さて、召喚されたからにはしっかり仕事をしなければ。式神たるもの、それぐらいのことができなけりゃ信用に関わるってもんですよ。

 ええ。頼もしいでしょう。召喚主さんが今まで仲魔にしてきた奴らとはひと味もふた味も違いますからね。格の違いってものを見せなければ、召喚主さんに申し訳が立たないというものですよ。

 さあ、こんな邪教の館など早く飛び出して、私たちと敵対する奴らをぶちのめしに行きましょう。何やらきな臭い勢力が、新たなるコトワリを打ち立てようと暗躍しているなんていう面倒くさい状況なんでしょう。でも、あなたはそんな奴らのくだらない思想に耳を傾ける必要などありませんよ。いつだって勝負はシンプルに強いほうが勝ち残るっていうもんなんですから。

 さあ、うまい具合に相手がやってきました。早速、私の出番というわけです。まず、あの剣を持っている青ざめた象をやっつけてやりましょう。こうして、こうして、こうやって、えいっと。さあ、召喚主さん。これでもう安心です。少し様子を見ていれば、あいつは苦しんで倒れるはずですよ。

 ……あれ、おかしいな。倒れない。効かなかったのかな。珍しいこともあるもんです。じゃあ、もう一回。こうして、こうして、こうしてと。今度こそ大丈夫なはずです。彼奴め、苦しんで今にも息の根が止まるに違いありませんよ。

 ……。ん? おかしいな。私の呪殺が二度も失敗するなんて、そんなはずはないのに。

 ……なんですか? 召喚主さん。あの象は呪殺を無効にするスキルを持っている? ええ、そんなやべーやつがうろうろしているところであなたは戦っているんですか。うーん。そりゃ、参ったなあ。私の一番の得意技である呪殺が使えないとなると、これはもう力任せに殴るしかないですね。

 はい? あの象は物理攻撃も反射する? 物理も呪殺も意に介さない悪魔は自分だけかと思っていましたが、世の中は広いんですね。ちょっと自信がなくなってきましたよ……。


作品名:悪魔言詞録 作家名:六色塔