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悪魔言詞録

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81.魔神 ホルス



 ホルスと申します。よろしくお願いします。

 召喚されてすぐこんなことを言うのもなんだけど、元気がなさそうだ? いや、まあ、そんなことはないんですけども……。まあ、正直、ちょっと心配事がないと言ったらうそになってしまいますね。

 うーん。あなたにお話していいのかどうか、それが一番の問題なんですよ。こんなことを話したら、戦いに参加する前から仲間を外されてしまいかねません。

 いいから話してみろ? ええ、ここまで来たならもう正直に話しますけども。

 私たち古代の神というのは、最初はちっちゃい領土で少数の人物によって崇められていました。そして、人間ですから当然、縄張り争いが勃発します。では、その争いで私を崇拝してくれている部族が、隣の部族をやっつけたらいったいどうなるでしょうか。

 答えはいろいろありますが、概して自分が信じている神を信じるよう、負けた部族に強要するのです。

 負けた側が受け入れるパターンもいくつか存在するのですが、その際、負けた側が崇拝していた神の所業が勝利した側の神の所業にされる、すなわち所業が移行することが多いようです。

 今までお会いした神と冠せられた仲魔たちの実力も、多かれ少なかれそんな感じだと思います。そして、私はその傾向が特に顕著な神です。かつて私の信者が倒してきた部族が崇めていた神の行いが、やったこともない自分の成果にされている。分かりやすく言えば、就活の際に履歴書や職務経歴書を盛りすぎた状態なんです。

 なので、正直にお話しすると私自身はそれほど対した神ではありません。あなたたちに帯同していてもできることはそれほどないのです。ですからいっそのこと、仲間から外してくれないかと、そのように考え込んでいたのです。

 まあ、これから強くなることはなるでしょうが、どれほどのことができるか……。

 はい。はい。パーティにいさせてくれるなら、やれるだけやってみます。では、これからよろしくお願いいたします。


作品名:悪魔言詞録 作家名:六色塔