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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
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思い出は億千万(A Part)

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 結局俺は孤独なのかもしれない。しかし、そうだとしても、少しの希望にすがりたくなる。まだ俺はみじめじゃないはずだ。そう思うたび…みじめになる。それが、そういうもんだ、としかとらえられない自分に、幻滅する。

I'm sure that I had done it in my childhood, which is nearly forgotten.
With a red-white cap on my head, we called "Ultraman Ultraman, Seven!"

 独身の俺は会社にとって扱いやすいコマである。妻子持ちは動かしにくい。これは結婚したことによって同じ職場にいつづけ安いという点でメリットがある。業績を普段から積み上げられるという面で。よって俺は昇進をするのは本当に大変であり、もう出世はできないだろうと思っている。出世できないのは結婚していないからだが、一方で結婚できないのはこの年になってもまだ平社員をしているところである、というところがある。ウロボロスの蛇だな、なんて自嘲してみる。
 「おーい、高梨」
 不意に自分の名前を呼ばれた気がして、振り返る。
 「…海江田?海江田じゃないか」
 「やっぱり高梨なんだな」
 「久しぶりだな」
 「久しぶり。どうしてこんなところにいるんだ」
 「転勤してきたんだ」
 「はぁ―そりゃあ大変だな。どこに今は住んでいるんだよ」
 「ほらそこ」
 俺は駅前の安い賃貸マンションを指す。
 「あそこかぁ…ならうちは近いぞ」
 「どこにあるんだよ」
 「ちょっと向こうに行ったところの住宅街」
 「もう一軒家を持ってんのかよ」
 「この前買ったばっかりでローンがまだ山積みだけどな」
 「ということは…もう結婚してんのか?」
 「ああ、実はな…お前にも報告したかったけど、連絡先がわかんなくて」
 「いいなあ…結婚かあ」
 「お前はまだ独身なのか?」
 「ああ、おかげで会社に取ったらPawn(歩兵)でしかないぜ」
 「せめてKnightかBishopにはなりてえな」
 「神様を信じてないのにどうやってBishop(神官)になるんだよ」
 「そうだな、ははは…。で、今帰るところか」
 「ああ、少し残業やっての帰りだよ。でも部屋もまだ段ボールがあってせまっ苦しいぜ。ただでさえ安い賃貸だっていうのに」
 「ははは…また今度会って話そうぜ」
 「そうだな。そうだ、これが俺のケータイメールアドレス」
 俺はおもむろにメモ帳を取り出すとメールアドレスと電話番号(携帯と部屋の固定電話)を書いてちぎって渡す。
 「じゃあ俺のも教えておこう」
 同じようなことを海江田もして、俺たちはわかれる。
 マンションの入り口に立ち、自販機を見て、小銭を確認し、ペットボトルの茶を一本買う。
 エレベーターで階上に上り、俺は自分の部屋に入る。汚い部屋だ。大体生活の拠点というにはここはあまりにかけ離れている。俺は一日の半分というか3分の2は会社か外回り営業なのだから。ここは寝るためのスペース。よって布団は敷きっぱなしだ。土日も俺は働いている。もしかしたらブラック企業なのか、と思うこともあるが、そんなはずはない。いくらなんでも曲がりなりにも大手だというのに。いや、大手であると世間には認知されているのに。俺は布団に寝転がる前にひとっ風呂浴びる。一週間ずっと働きづめで、基本的に月に2,3回しか休みが取れない。俺は手にニンテンドーDSをとると、イアフォンをつけ、少しの間遊んで、そして寝る。それを何度も繰り返して、俺は一週間を過ごす。今日が何曜日かはスケジュール帳を見なければ思い出せないような、そんな生活を繰り返している。
 結婚か。世間では好きな人と結ばれること、それイコール幸せという意味のわからない、実態もないような公式を持ち出してくる。そうでないことは歴史が何度証明し、週刊誌が何度とりあげたか。好きな人と結婚して幻滅して成田離婚(空港離婚)をし、好きでもないはずの二人が見合いで出会って、その後幸せになったり。だが俺は見合いはしたくない。見合いで嫌だなと思っても、断れるとは思えないのだ。断れるならやりたいが、そこまで俺は強くない。
 しょうもないことを考え続け、今日は寝た。

It's a memoly that I almost forget.
With two spoons of silver, we called "Ultraman Ultraman, Seven!"

 会社の上司は厳しい人で、少しのミスにも顔を真っ赤にして怒る。
 「お前は何度言ったらわかるんだ!」
 いや、今回が初めてですよ。何を言っているのだか、この人は、と思うことが多すぎる。
 「お前なんかこの支部に来なければもっといい業績が出るはずなのに!」
 ここに転勤させられた理由は、ここの支部が全然駄目だからだ。俺は少なくとも他人より業績を出しているのに何を言って嫌がるんだこいつは。しかし、俺は大人になり、学んだことがある。社会は無理が通れば道理が引っ込むこと。そして、権力者にはとにかく楯つかなければ荒波立たないということを。
 「すいませんでした」
 「謝れば済むことじゃないんだよ高梨君」
 「重々承知しております」
 「…たく、すぐこれを解決して来い!今月中にできなかったら、今月は給料抜きだからな」
 「はい」
 俺はくすぶる心をどうにかこうにか押さえつけて自席に戻る。怒られる方が首にされるよりかいくらかましだ。俺はさっそく相手先に電話をする。だが今回のことはそもそも相手先のミスによる問題だ。相手もそれを承知していると見えて、ほんのわずかの時間で話し合いにけりがつく。
 
 「はあ」
 「お前どうしたんだよ…もう終わったことだろう」
 「そうも済ませていられないだろう…」
 「まあ、今回はもう仕方ないだろう」
 「…だな」

 サラリーマンの宿命。それは謝り謝り土下座するfateである。何で俺はこういう世界に生きているんだろうか?

 俺はまた一日の終わりを迎える。マンションの入り口に立ち、自販機を見て、小銭を確認し、ペットボトルの茶を一本買う。エレベーターで階上に上り、俺は自分の部屋に入る。また思う。汚い部屋だ。やっぱり生活の拠点というにはここはあまりにかけ離れている。俺は一日の半分というか3分の2は会社か外回り営業なのだ。ここは寝るためのスペースでしかなく、よって布団は敷きっぱなしだ。毎日毎日俺は働いている。もしかしたらブラック企業なのか、と今日も思ったが、そんなはずはない、のだろう。いくらなんでも曲がりなりにも大手だというからには。いや、大手であると世間には認知されているからには。俺は布団に寝転がる前にひとっ風呂浴びる。そのあとパジャマを着て、俺は手にニンテンドーDSをとると、イアフォンをつけ、少しの間遊んで、そして寝る。それを何度も繰り返して、俺は今夜も過ごす。今日が何曜日だったかはスケジュール帳を見なければ思い出せないような、そんな生活を繰り返す。
 上司の邪智暴虐ぶりにあきれて寝た。