思い出は億千万(A Part)
However I forgot what is like that, and now is livin' bein' chased from somewhat.
久々の休みが取れ、俺は海江田にあった。
「高梨も結構頑張ってんだなぁ、その姿に刻まれてるぜ」
「やつれている、の間違いだろ」
「おいおいやめてくれよ、せっかく会ったのにそんな乗りかよ」
「まあ、理不尽すぎるからな…そういやお前、中富と仲良かったよな」
「そうだけど…それが?」
「あいつがどうしているか知らないか」
「…あいつは…」
「どうしたんだよ」
「今は無職だ」
「無職?」
「あいつは過労でぶっ倒れて、病院に運ばれて…回復するころには会社がつぶれてたんだってよ」
「踏んだり蹴ったりだな」
「ああ、そうさ。それで今は半Neet状態だ。まあ、バイトしながら食い繋いでいるらしいからフリーターともいえるが」
「…大変なんだな。吉岡は?」
「あいつは逆に出世しまくってるぜ。大学の教授をする傍ら重大プロジェクトをその手に握るような研究者になった。専門は確か機械工学だっけな」
「まじで!?」
「ああ、そうさ」
「…俺はそんな奴の横で不味い飯を食いながら生活しているのか」
「そんなことを言うなって。今日は俺がおごってやるからよ」
俺は成功者どもに負けたという悲しみの中で、おごられた酒をちびちび飲んでいた。
However many times I looked back, I know it's impossible to go back to the past.
(There's me, who is doing like a fool laughin' with some friends in a forgotten album)
俺はどうしていられようか。結局世界は成功者の一握りと敗北者に分かれるのか。それは小さな成功であっても、やはり成功していないものには天と地の差があるではないか。成功者はただ自らを成功者とは思わないが、敗北者は自らを敗北者であるとわかるというもんだ。俺は後者に属するもの。俺はコンビニに行くことがそのあと、一度あった。そこで俺は、あいつを見つけた。
「中富」
「…高梨」
「久しぶりじゃないか?」
「そうだな…へへ、こんな姿お前には見られたくなかったなあ」
「何恥ずかしがってんだよ。昔っから負けず嫌いだったもんな」
「ああ、…」
中富は少し泣きかけた。
「昔っからお前とか、いろんな奴に、遊びでは負けたくなくて…ロックマンなんか何度も練習して…」
俺は思うのだった。何で生物は生きるのか?生きて何をする?いいこと?いいことってなんだ?人のためになる事?それはどういうことだ?人のためになると何がいいんだ?その人が幸せになるはず?なら俺は親に愛されて、面倒を見られて育ってきたんだ。俺は幸せになる権利があるはずじゃないか。人は言う。くじけちゃいけない。自殺や負傷、殺人に走った「落ちこぼれ」に、世間は冷ややかだ。「あいつは、馬鹿だ」。それならば、何故こいつらが生じたのか。それは仕方ないって連中は言う。「仕方ないさ。社会はグローバル化が進んで、不況は全世界の波に乗ってやってくるんだから。」仕方ないという割には、そいつらは頑張りが足りないという。ちょっとした、ちょっとした論理の破たんだが、そこで苦しんでいる人のうち何割かは西新宿で雑誌を拾い読みしている。何割かは、7時から11時までと表向き銘打ったコンビニの、12時以降の部で働いて、そのうち何割かは、強盗事件に巻き込まれ、またその強盗も何割かは敗北者だ。殺人するのも、自殺するのも、脅すのも、それは結局敗北者だからだ。敗北者は、おのれの運命に甘んじるか、人の運命を傷つけるかしか、選択肢がない。
俺は今日も会社に行く。怒られに行く。月一回の、少額の金を受け取りに行く。そのために、マクドナルドやコンビニエンスストアよりもストレスのたまる仕事に向かう。足が重い。しびれる。凍る。焼ける。今日も働く。昼食はいつもサンドイッチをコンビニで買う。コーヒー片手に今日もやるかと奮起して、結局10分も決意は続かない。今日も俺は帰路に就く。帰りに寄り道するにもあいている店がない。俺はまた一日の終わりを迎える。マンションの入り口に立ち、自販機を見て、小銭を確認し、ペットボトルの茶を一本買う。エレベーターで階上に上り、俺は自分の部屋に入る。また思う。汚い部屋だ。やっぱり生活の拠点というにはここはあまりにかけ離れている。俺は一日の半分というか3分の2は会社か外回り営業なのだ。ここは寝るためのスペースでしかなく、よって布団は敷きっぱなしだ。毎日毎日俺は働いている。もしかしたらブラック企業なのか、と今日も思ったが、そんなはずはない、のだろう。いくらなんでも曲がりなりにも大手だというからには。いや、大手であると世間には認知されているからには。俺は布団に寝転がる前にひとっ風呂浴びる。そのあとパジャマを着て、俺は手にニンテンドーDSをとると、イアフォンをつけ、少しの間遊んで、そして寝る。それを何度も繰り返して、俺は今夜も過ごす。今日が何曜日だったかはスケジュール帳を見なければ思い出せないような、そんな生活を繰り返す。
あああああああああああああああああああああああああああ
俺は、海江田に誘われた。その店に行くと、見覚えのある顔があった。吉岡と、そして、俺の…
初恋の相手がいた。
作品名:思い出は億千万(A Part) 作家名:フレンドボーイ42