彼方から 幕間3 ~ エンナマルナへ ~
「紹介しておかなくてはな……わたしの友人であり、グゼナの元大臣でもあるエンリとカイノワだ」
少し……
疲れたような口調で、ジェイダはそう言いながら、自身に後ろに控えている二人の下へと、歩を進めていた。
「あなたの話しは、皆から良く、聞かされていますよ」
「道中、何かわたし達にでも出来ることがあれば、何なりと言ってください」
「こちらこそ、最善を尽くさせていただきますわ」
二人と、共に握手を交わすエイジュ。
その間に、ゼーナが二人の少女を連れて来る。
「この娘がアニタ、この娘がロッテニーナ……二人とも、あたしの助手をしてくれているんだよ」
振り返り、紹介された二人にいつもの笑みを見せるエイジュ。
「そうなの、よろしくね」
「あ……はい」
「よ、よろしくお願いします……」
彼女の美しい笑みに、同性ながらも、見惚れてしまう二人……
エイジュから差し出された手を、恥ずかしそうにしながら握り返していた。
「じゃあ、改めて――道中を共にさせてもらって、良いかしら?」
一通りの顔合わせを終え、改めて、皆を見渡すエイジュ。
一人一人と、眼線を交わし、頷き合い、同意を得てゆく。
……最後に――
「あなたも、それで良いかしら? ……アゴル」
きちんとケジメをつけるかのように、ファーストネームで呼び、彼に眼を、合わせていた。
「…………」
眼を合わせたまま、黙すアゴルに、皆の視線が集まる。
「……頼って――いいのか?」
やっと開かれた口から出たのは、少し、『弱気』とも取れる言葉だった。
「……勿論よ」
アゴルに歩み寄りながら、確かな頷きと共に言葉を返すエイジュ。
「そうか……」
彼女の言葉を耳にした途端、アゴルは大きく、息を吐いた。
全身から、力が抜けてゆくのが分かる。
「お父さん?」
怪訝そうに呼び掛けるジーナに向けた笑みは、疲れの色が濃く、浮き出ていた。
砂を踏み締め、近付いてくるエイジュの姿が、霞んで見える。
「最後まで――目的地まで、一緒に……行って、くれるんだな……」
途切れ途切れに並べられた言葉が、だんだんと、弱々しくなってゆく。
「ええ、間違いなく……」
いつの間にか眼前に立ち、ハッキリとそう言い切ってくれる彼女の声が、何故だか、遠く聞こえる。
「そうか……たの、む――」
膝が、ガクリと、折れる……ジーナを、その腕に抱いたまま……
意識が、遠退いてゆく――
――ジーナを……
――降ろさなくては……
このまま倒れるわけにはいかないと、そんな思いが脳裏を過る。
「安心してくれて構わないわ……アゴル――だから……」
閉じた瞼、優しい暗闇の中――
エイジュの声が耳に響く。
「ゆっくり、お休みなさい……」
意識に残ったのは、その言葉が最後だった。
幕間4へ続く
作品名:彼方から 幕間3 ~ エンナマルナへ ~ 作家名:自分らしく