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狩沢さんと帝人のデート

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10/04/02 07:24
To 紀田正臣
件名 ごめん!
ーーーーーーーー
寝坊しちゃった!
先に行ってて!
ーーーENDーーー



家から駅までの道を走りながら正臣にメールを送る。

いつもならば学校に行くまでは正臣、杏里と一緒に登校するのだが

夜更かしをしたせいで完全に家を出る時間が遅れてしまっていた。

まずい、完全に遅刻だ。いつもの電車に間に合いそうにないな・・・。

そこで諦めて走るのをやめ、呼吸を整える。

予鈴には間に合わないかもしれないがHR中には学校に着けるだろう。

開き直って電車を一本遅らせることにする。

ラッシュアワーには変わりは無いがいつもとはもしかしたら違う何か

特別なことが起こるかもしれない。

・・・非日常はそう簡単には起きないからこその非日常なんだけど・・・。

池袋。僕たちの通うこの場所は時に非日常の舞台となる。

確かにその渦の中にいる自分を感じた瞬間もあったけれどそれも一瞬の出来事で

どこか夢の中の出来事だったような気もする。確かに僕の手の中にある「力」は

でもやっぱり僕のものではなくて、まして僕自身の力ではない。

またしばらくは変わらない日常が過ぎていくに違いない。




足早に行き来するスーツの波を掻き分けていつものようにサンシャインの近くに差し掛か

る。


「あれ?竜ヶ峰君? ・・・ああ、やっぱり。おーい。」

声のした方を振り返ると そこには全身を黒で包んだ細身の女性が笑顔で手を振ってい

た。

「あれ?狩沢さん。おはようございます。どうしたんですか?こんなところで。」

「それはこっちのセリフだよー?そっちこそ学校はどうしたのさー?

もう学校始まってる時間なんじゃないのー?」

「あ、遅刻しちゃって・・・どうせ間に合わないので、ゆっくり来たんですけど、サボリ

ではないですよ!」

慌てて弁解すると狩沢さんは目を細めながらこちらに近寄ってきた。

「ふーん?まぁ竜ヶ峰くんは真面目そうだから私は疑っては無いけどね。

重役出勤って感じ?何か大物になりそうな予感!」

「そんなことないですって!・・・狩沢さんは本当にどうしたんですか?門田さんとか遊馬

崎さんと一緒じゃないんですか?」

「あぁ、皆?今日は私だけー。プライベートなの!」

いつもはプライベートではないのかと突っ込みたくなったが抑える。正臣の時みたいには

何だか突っ込む気がしないのだ。

・・・狩沢絵理華さん。正臣の知り合いで、アニメやマンガがとても好きな人で・・・。

言ってしまえばこの人のことでわかっているのはそれくらいなものだ。

悪い人ではないと聞いているし、自分でもそう思うのだが・・・。

こんな風に2人で話すというのももしかしたらはじめてかもしれない。

「あ、じゃあ、勉強頑張ってね!私はこっちの方角だから!ばいばい!またねー。」

最後にまた笑顔を振りまいた後、狩沢さんは逆方向へと向かっていく。

「あ、はい!失礼します!」

腕時計で時間を確認すると帝人はそのまま体を翻し、学校まで走ることにした。





「ごめんね正臣、園原さん、朝の登校時間に間に合わなくって」

何とかHRに間に合った帝人はその後の休み時間に2人に頭を下げる。

「なーに、気にすんな!帝人。帝人が寝過ごしてくれたおかげで俺は杏里とラブラブでス

イートなナイスタイムをそりゃもうたーっぷりと満喫できたんだから。なぁ、杏里。」

「え?え?」

いつものように急に話を振られて戸惑う杏里。それを見てすかさず帝人が突っ込みを入れ

る。

「またそんなこといって。正臣は。」

「何だ?信じないっていうのか帝人!言っておくが、俺はお前という恋敵が居ない時でも

いや!むしろ居ないことで!この愛の炎を更に燃え上がらせる情熱の男!ラ・マンなの

だ!その炎で杏里のハートをぐっつぐつと煮えたぎらせて・・・」

「煮えてるのは正臣だけなんじゃない?」

「煮物か!?俺は煮物なのか!?いーや、だがな帝人!確かに今日、俺とお前の杏里への

距離はかなりの差がついたと言って過言ではない!まさに俺の独走!オンリーラン!お前

は俺の背中を見ながらこの恋のレースの敗北を予感するのだ!」

「うざいよ正臣。あとさっきからいちいち言い直すのも何かうざい。」

「辛辣!そっちこそもっと柔らかく包んで突っ込まないと俺泣いちゃう!すごいセンシテ

ィブだから!」

いつものように掛け合い漫才のような会話を続けながらクスクスと笑う杏里の顔を眺めて

2人でこっそりと笑いあう。正臣はこうやっていつも杏里に迫るようなことを言うけれど

そこから一歩踏み込もうとはしないし、帝人自身もこの関係を崩すような態度を取るつも

りはなかった。

杏里もおそらくそれは同じだろう。好意的には思われていると信じたい。

だが、どこか周りとは一歩身を引いているように見える彼女が、自分を好きになってくれ

ることはとても難しいことのように思えた。変に焦ってこの関係を失ってしまうことのほ

うが今は怖い。


「あの、私今日はちょっと用があって、一緒に帰れなくって・・・。ごめんなさい。」

帰りの支度をしていると杏里が近づいてきて申し訳なさそうに頭を下げた。

「あ、そうなんだ?ううん、わかった。正臣にも言っておくね。」

「ありがとう。じゃあ、また明日。」

帰りのHRが終わった瞬間に外に駆け出していってしまった正臣を追いかけるために

急いで教室を出る。

校門の前で自分たちを待っていた正臣に杏里のことを伝えた。


「そっか、杏里は用事か。行きは杏里で帰りは帝人。何だか今日は特別な日か〜?」

「特別っていうか珍しくはあるけどね。どうしようか。真っ直ぐ帰る?」

「そうだな、どっかで3人で軽く茶でも飲もうかなって思ってたんだけどな。」

「2人でも全然かまわないよ?とりあえず、お店のある方まで行こうか。」

どこか落ち着ける場所を探そうと歩き始める。


サンシャイン60通りを抜けて裏路地のほうへ回ろうとしていると

「おふたりさーーーん!ちょっとー!」

聞き覚えのあるーそれもかなり最近聞いた声が後ろから聞こえる。

見ると狩沢さんがこちらへ向かって歩いてくるところだった。

「今帰りー?竜ヶ峰君とはちょっとぶりだねー!すごい偶然!」


正臣は狩沢さんと帝人を見比べながら意外そうな声を出す。

「あれ?狩沢さんじゃないですか!どうしたんですか?一人で。

なに帝人、お前狩沢さんと会ったばっかりなの?」

「そうなの!今日の朝も偶然鉢合わせして!ね!」

うれしそうに帝人に話しかける狩沢さんに思わず帝人も笑顔を返す。

「ほんと、よく会いますね。・・・っていうことは、今日は一日中池袋に居たんです

か?」

「うん、ほら、これちょっと買い物してたんだ。」

狩沢さんが軽く見せてきた紙袋の中には本やらマンガやらがずっしりと入っていた。

「うわ。重くないんですか?これ。」

「ふっふっふ。この重さですら私には喜びに感じられるんだよ。」

少し怪しい発言をしながら狩沢さんは2人を交互に見つめた。
作品名:狩沢さんと帝人のデート 作家名:えも野