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サヨナラのウラガワ 7

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 瓦礫の山を見遣り、アーチャーは背を向ける。ここにはもう、何もない。アーチャーが到着したときには、すでにこの状態であった。守護者が警戒するような生者は、もう一人も残っていないようだ。
 守護者の鉄槌を待つ前に、人と人が争い、命は削られていく。この様子では守護者などいらないのではないだろうかと、アーチャーは皮肉に口を歪める。
「不要のものとなれば、私は……」
 士郎に棄てられたことを思い出し、胸がきゅっと締め付けられる。
 今となっては新都のマンションに押し込められたことが懐かしい。あのくらいで済んでいればまだよかったのに、と現状を鑑みて、そんなノスタルジーに陥りそうになる。
 今ここに、己をどこかに押し込める士郎はいない。手も触れられないところにいるはずなのだ。
 ふと、生きているのだろうか? という疑問が湧いてくる。
 途端に、背筋を冷たい汗が流れる。
 あの時点で士郎の命が失われていれば、どんなに待っても士郎が召喚されることはない。
「そんなはずが……」
 ないとは言い切れないが、あるとも言えない。
 アーチャーは確証が欲しいと思う。
 生きているのか、守護者になっているのか、いつか召喚されるのか。
 あやふやなままでは、立っていることすら心許ない。
「士郎……」
 どうか、戻ってきてくれと願う。
 信じてもいない神に祈りたくなる。
 どうか、士郎を返してくれ、と……。


サヨナラのウラガワ 7  了(2020/11/23)
作品名:サヨナラのウラガワ 7 作家名:さやけ