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____あれ程、ざわめいた金陵が、
   今は落ち着きを取り戻しつつあった。___



 金陵で起こった、地獄の様な混沌とした出来事は過ぎ、嘘のように、天子のお膝元は、他愛ない日常に戻りつつあった。



 ついこの前までは、七万の精鋭を誇る赤焔軍は、梁の誇りであった。
 だが今は、存在さえしなかったかの如く、誰も彼も、口にするのを避けている。

 いつの間にかこの国では、『祁王』と『赤焔軍』は禁句とされた。
 口にすれば天子に罰されるのだ。
 皇帝の耳に、風が言葉を運ぶのか、御前で語った事では無くとも、処罰を受け、問答無用で死罪となる。
 祁王の助命を嘆願した者は多く、口々に祁王の冤罪と再審を求めたが、皆、尽(ことごと)く、即刻死罪となり、敢無(あえな)く刑場の露と消えた。
 皇帝直属の懸鏡司の取り締まりは厳しく、嘆願した者はもとより、その家族、そして縁者までも、罪に問われ、皆引き立てられ、亡骸となり、咎人(とがびと)故に、野辺に葬られたのだ。
 無辜の亡骸は山と成した。
 民も役人も恐れ戦き、途端に人々は口を噤(つぐ)み、あっという間に、祁王と赤焔軍の存在が、消え失せてしまったのだ。






 ___靖王が梅嶺から戻ったのは、人々が口を噤んだ後だった。

 靖王が金陵に帰還し、城門から入ると、普段通りに市井の生活は送られており、靖王が東海に発った時と、何ら変わりがない。

 だが、都に戻った靖王は、その『異様』さを嗅ぎ取れていた。
 金陵の門を潜り、靖王が城内を進むにつれ、市井の人々の視線が刺さる。

 本来、帰京しているべき所、許しも得ずに、梅嶺に行った。
 王府に立ち寄ってから、皇宮に報告に行ったのでは、諸事手遅れなると、靖王は、急ぎ皇宮に向かった。
━━景禹兄上は、どうしているだろう。
 父上に面会の許可を貰わねば。
 、、、、、母の事も気がかりだ。━━

 
 靖王の帰還を、どこかで聞き及んだが、戦英が馬に乗って、靖王の元に駆け寄る。
「殿下!。」
「?。」
 戦英の表情から、ただ事では無いのが読み取れる。
「殿下、、。祁王殿下が、、、。」
「兄上がどうした?。」
 戦英は馬から降り跪くと、重々しく、口を開く。
「陛下より死罪を申し渡され。、、、、祁王殿下は、即日、刑に処されました。」
「、、、何っ、、、戦英、、何を言って、、。」
 戦英はそう言うと、その場に平伏した。
「、、、、そんな馬鹿な、、、嘘だろう?。皇帝でも許される訳が無い、こんなに早く。」
「殿下が梅嶺に向かった時には、祁王殿下はもう、、。」
 靖王は、頭を何かで、殴られた気がした。血の気が引き、落馬しそうになる。
「靖王殿下!!。」
 戦英が素早く立ち上がり、下から靖王を支えた。
 靖王は支えられ、間近に戦英の顔を見て、嘘を言っているのではない事が分かる。
「、、、何が、、何が起こっているのだ?、この金陵では、、。私の居ない間に、一体何が??。」
 戦英が事細かに、知る限りの事を話した。

 梅嶺から早馬で夏江が戻り、梁帝に上奏した所から始まり、祁王府は閉鎖され、祁王と祁王妃は寒牢に送られ、数日後には死罪となった。
 その間、太師を始め、大勢の文武両官が、祁王の無実と再審査を求めたが、一つも取り上げられず、それどころか、罪人と徒党を組んだと、彼らも即日処刑された。
 そして林府は封鎖され、詳しくは分からないが、どうやら、林殊の母親の晋陽公主が、自害をしたという噂があると。
 晋陽公主の自害の件では、懸鏡司が、陛下から酷く叱責をされたらしい。




「そんな、、そんな馬鹿な。一体、何が起こっているのだ、、、。」
 靖王は、目眩を振り払うかのように、首を振った。
「父上に、、父上に会わねば、、、。」
「殿下、、私も一緒に。」
 戦英の言葉が聞こえたか聞こえぬか、戦英が馬に乗る前に、靖王は皇宮に向けて駆け出した。
「殿下───!。」
 遅れまじと、戦英は追っていくが、人垣を縫う様に駆けていく靖王に離され、次第に遅れていく。





 皇宮では、今、朝議が開かれているという。
 馬を下り、朝堂を警備する、禁軍や太監を、すり抜け、押し退け、真っ直ぐに朝議の行われている大殿に向かった。
「殿下!!!、靖王殿下!!、、なりません。」
「朝議の最中です。どうぞ時を改めて、、、。」
「入ってはなりません。」
 止める禁軍兵と太監達を振り払い、大殿の入口に立つ。
 大殿の外の騒ぎに、何事かと、ざわついていた臣下達がぴたりと静まり、一斉に大殿の口の靖王を見る。
 視線は冷ややかだ。
 そして、靖王が進む先の壇上には、梁帝、父簫選が玉座に座り、じっと靖王を睨んでいた。
「景琰!、ここを何処だと。」
 皇帝よりも早く、靖王の上の兄、献王が口を開く。
「屋敷に戻って謹慎しておれ!!。父上はお前に、非常にお怒りだ!。」
 皇帝よりも、一段、低いところに立っている献王が靖王に向かって、声を張った。
 靖王は献王の言葉に構わず、ずかずかと大股で、御前に向かって歩いてゆく。
「景琰、無礼ではないか。誰の許しを得て大殿に入った?。しかも帯剣したままで、、、。お前と来たら、昔からそうだ。母親が卑しいと、子供のお前まで礼儀がなって無い。、、、郡王如きが、、戻れっ!!。」
 献王が吐き捨てるように、靖王に言った。
 下の兄誉王は、献王と向かい合わせに登壇しているが、誉王は目を伏せ、横を向いたまま、靖王を見ようともしない。
 靖王は献王を一瞥し、御前に跪く。
 その態度に献王は怒る。
「何だっ!、その反抗的な目はっ!。私はお前に、教えてやっているのだぞ。、、、父上、景琰ときたら、いつもこうです。厳しく罰して下さい。」
 途端に献王は、皇帝に甘える様な声を出す。まるで、この者の母親を見ているようだと、靖王は思った。
 玉座から、皇帝はただ黙って、靖王を見下ろしていた。
 今、この状況で、心落ち着けて言葉を出すことは、靖王にはなかなか難しいが、出来るだけ穏やかに平静に、そう心がけた。
「父上、祁王と林主帥が反逆など、有り得ません。何より父上がお分りの筈。どうか、、どうか、、お調べを。」
 そう言って、靖王は平伏した。
「何を言っているのだ、景琰。調べはついて、既に終わった事案なのだ。父上がお決めになった事に、不満があるのか?。」
 皇帝は一言も発さず、代わりに献王が、靖王に食ってかかる。
 『献王の手口に乗ってはいけない、反抗的な言葉を言わせて私を貶める気だ』と、いつもの手口だと、分かっていた。言葉を選んで靖王は話す。
 「何かこれには裏があります。有り得ません。まさかよりによって、祁王と林主帥が、、。」
「景琰、お前などに何が分かるのだ。目に余るほどの横暴ぶりだったのだ、祁王と林主帥は。父上がよく知っておられる。」
 靖王は、わめきたてる献王の声に、苛ついているのがわかる。我慢はしているが、祁王や林燮の名を、献王の口から出されると、途端に嫌悪感が沸き起こった。
「、、、有り得ぬ。どれ程林主帥が、この梁と皇室を守ってきたか、、。」
 靖王は献王を睨み返した。
「景琰!!!、なんだその目は!!!、、この私をその様な目で!!。」
作品名:再見 参 作家名:古槍ノ標