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誰にも君を渡さない【番外編2】〜今、ここにある幸せ〜

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料理が趣味だとは聞いていたが、まさかアムロの手料理が食べられるとは思わず、シャアが驚く。
「嬉しいな、今日は本当にいい日だ」
「あんまり期待しないでくれよ」
照れ笑いをしながら招待された家では、昨日から仕込んであったらしい料理の数々がふるまわれた。
魚介の前菜にじっくり煮込んだ肉料理。そしてなんと手作りのパン。
美味しいワインと共に二人でテーブルを囲み、穏やかな時間を過ごした。
「君とこんな風に過ごす事が出来て嬉しいよ」
「いつも総帥業を頑張っているからな。たまにはご褒美だよ」
グラスを片手に、ほろ酔いのアムロが微笑む。
「映画もなかなか面白かったな」
「ああ、初めはラブストーリーかぁって、王道なのは分かるけどこのセレクトは勘弁してくれよって思ったけど、予想以上に面白かった」
大分酔いの回ったアムロに、シャアが密かに口角を上げる。
「確かに、王道だな。ところでアムロ、今日のデートプランは誰が考えたんだい?」
「え?誰ってララ…」
と、そこまで言い掛けて慌てて掌で口を塞ぐ。
「ララァ?」
「ち、違う、えっと…だから…」
動揺するアムロの顎をシャアが指で掴んで固定する。
「ララァが君に頼んだのか?」
「いや、だから…」
「隠さなくても良いだろう?」
ブルーの瞳にじっと見つめられ、アムロは観念した様に溜め息を吐く。
「ララァがさ、貴方とデートしたいって言うから…」
ララァが死んだあの時、ララァの心はアムロの中に溶け込んだ。
それ以降、ア・バオア・クーで語り掛けてくれた様に、今でもアムロに寄り添ってくれている。
アムロがネオ・ジオンに特使として派遣され、シャアの側にいる様になってからは頻繁に表に出るようになっていた。
そして、一度で良いからシャアと普通のデートをしてみたいと頼み込まれたのだ。
こうしてララァがプランを考え、アムロと共にシャアとのデートを体験したのだ。
「なんか…貴方を騙す様な事してごめん」
「何を謝る?私は今日、本当に楽しかった。君は違うのか?」
「そんな事ない!凄く楽しかった」
「ならば良いではないか。きっとララァも自分だけでなく、君にも楽しんで貰いたかったのだろう?」
「そうかな?」
「ああ、彼女はそう言う娘だ」
「うん…そうだな」
アムロは眼を伏せると少しはに噛む様に笑う。
「ララァにお礼を言ってもいいか?」
「え?」
「今も君の中にいるのだろう?」
「あ、うん」
シャアはアムロの手を握ると、優しい瞳を向ける。
「ララァ、ありがとう。今日は本当に楽しかった。君も楽しんでくれたか?私にも君の声が聞こえると良いのだがすまない、何ぶん、出来損ないなものでな。アムロを通して私の気持ちが君に届く事を願うよ」
そして、そっとアムロの手の甲に口付ける。
「わぁ!シャ、シャア」
「ふふ、君にもお礼がしたいのだが良いかね?」
「へ?」
アムロが声を上げたその瞬間、シャアの唇がアムロの唇に重なる。
「ララァは生まれ変わってはくれなかったが、代わりに君を私に与えてくれた」
アムロの頬を両手で包み込み、愛おしそうにアムロを見つめる。
「アムロ、もしも君が私を置いて死ぬ様な事があれば、私の命も絶ってくれ…。もしも来世で巡り合えるとしても、置いていかれるなど耐えられない」
「シャア…」
昼間の映画を思い出し、アムロが哀しげにシャアを見つめる。
「貴方を置いていったりしないよ…」
「…ああ、頼む」
今にも泣きそうな表情のシャアを、アムロが優しく抱き締める。
「貴方を置いていったりしたら…何をしでかすか分からないからな」
「酷いな…」
「前科があるからな。何がなんでも連れて行くよ」
「ふふ…そうしてくれ」
アムロの胸に頬を埋め、シャアが穏やかな笑みを浮かべる。
「ところで、デートはまだ続行中かな?」
「え?」
「恋人同士のデートの締め括りといえば…身体で愛し合う事だろう?」
「なっ…」
そう言うや否や、アムロのシャツの中に手を差し入れる。
「おいっ!こら、ララァが見てる!」
「彼女はそんな野暮じゃない」
シャアに言われてララァの気配を探せば、本当に気配がない。
「あ、あれ?」
「言った通りだろう?」
「え、ちょっと…待て!わぁ」
そのままベッドへと運ばれ、流れる様に唇を塞がれた。



 互いの熱を分け合った後、アムロは気怠い身体を厚い胸板に預ける。
そして、そこから聞こえる心臓の鼓動に耳を傾ける。
「貴方…ちゃんと生きてるな…」
そんな事を呟けば、柔らかな癖毛をクシャリと撫でられる。
「君もな…」
「ああ…」
アムロは目を閉じると、昼間の映画を思い出す。
「あの二人が…最後に幸せになれて良かった…」
「そうだな。結局、互いに相手を想う余り長い時間が掛かってしまった」
「ああ、でも男の方も彼女に気付いてるとは思わなかったな」
「そうか?そう言えば、カラバで君に再会した時、姿が見えた訳ではなかったが、君だと直感した。君の事はきっとどんな姿であろうとも判る気がするな」
「ふふ、そう言われれば俺もだ」
クスクス笑うアムロの手を取り、そっと両手で包み込む。
「多くの罪を犯した私も、今、ここにある幸せに手を伸ばしても良いだろうか?」
縋るようなシャアの瞳に、アムロが優しい笑顔で応える。
「当たり前だろう?例え過去に罪を犯したとしても、貴方は今、正しい道を歩いている。だから貴方にも幸せを手に入れる資格はあるよ。俺が認める」
真っ直ぐに自分を見つめて言い切られ、シャアの心に喜びが込み上げる。
「ありがとう、君の許しが何よりも嬉しい…」
「大袈裟だな」
クスクスと笑いながら互いに抱きしめ合う。
「もし君が良いと言ってくれるなら、私の手を取ってくれないか?私は君と、この先の人生を共に歩みたい」
「なんだよそれ、あの映画のセリフのまんまじゃないか。大体あのセリフはプロポー…」
「そのままだよ。私は今、君にプロポーズをしている」
「え?」
アムロはガバリと起き上がり、シャアの顔を見つめる。
「アムロ、返事を…」



“今、ここにある幸せ”
それに手を伸ばす事が出来る。
少し前には考えられなかった。
互いに破滅の道しか見出す事が出来なかった二人。
その二人が、今は幸せを求める事が出来る。
それこそが、本当の幸せなのだと、アムロはそんな事を考える。
そして、プロポーズの返事を待つシャアに、照れ臭そうにプロポーズの返事をした…。


〈了〉