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さみしさの後ろのほう 16~20

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16

くすん、くすん。誰かがすすり泣く音が聞こえる。
子供が泣いている。転んだのか、擦り剥いた膝には血が滲んでいた。俯いて黒髪に隠した眸はきっとうるんでいるのだろう。

「大丈夫か?」

今まで俺が居る事に気付かなかったのだろう。少年はばっと顔を上げた。腫らした目を丸くして俺を見たのも一瞬で、すぐに腕で擦って涙を拭う。そんなにしたら痛いだろうに。馬鹿だなあ。

「そこに居るなら居るって言ってくださいよ。うさちゃんの意地悪」

彼は自分の表情をいつもの仏頂面に戻しているつもりなんだろう。全然違う。まだ傷が痛むのだろう、顔は引き攣っているし、目もまだ潤んでる。何処にそんなに強がる必要があるのだろうか。

「痛く無いのか?泣いても良いんだぞ?」

そう言うと暫く迷う素振りを見せた後、ふるふると子供は首を振った。

「弱い私なんて必要無いのです。皆の求める私は、これぐらい何とも思わない強い私なんです」

何馬鹿な事を。皆の求める私ってなんだ。お前はお前でしか無いだろう?皆の求めるも何も無いじゃないか。馬鹿だなあ。本当に馬鹿だ。まるでそれじゃあ本当のお前自身が要らないみたいじゃないか。そんなの、淋しい。淋しいだろ?
大丈夫だよって、そのままのお前で良いんだよって。抱き締めようとして気付いた。ぬいぐるみの体をしている今の俺には彼を抱き締める事なんて出来ない。ぬいぐるみに帝の傷を癒す事は出来ないのだと。