さみしさの後ろのほう 16~20
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「ん……」
呻く声が聞こえた。読んでいた文庫本を置いて、ベッドを覗き込む。うっすらと開いた目が俺の影を僅かに映した。まだ覚醒し切っていないらしく、ぼんやりと俺を見ている。
「…………」
「…………」
「……え、あ」
がばりと帝が体を起こす。俺は急いで顔を引いたけれど、一瞬でも遅れていたら衝突していただろう。
「おま、あぶな――」
「今何時ですか!?此処は何処ですか!?」
立ち上がろうとしている帝の肩を押さえながら、答えてやる。今は四時半前、此処は病院だ。すると帝は顔を真っ青にした。
「嗚呼、授業が終わってしまったでは無いですか……!」
「何言ってんだよ!それどころじゃないだろうが、ばかっ!お前過労で倒れたんだぞ?分かってんのか!?」
ひくりと眉を動かしたけれど、帝の返事はそうですかととても他人行事なものだった。自分の事も他人事か?授業に欠席なんてしない優等生の為ならぶっ倒れた奴なんか切り捨てるのか?
思わず溜息を吐きかけたけど、止めた。変わりに頭を撫でてやる。
「何するんですか。止めて下さい」
「でも寝癖付いてる」
「嘘」
まあ、嘘なんだけどな。切り捨てておきつつ気になったらしい帝が右手を自分の髪に伸ばす。指先が触れる寸前に細い手首を掴んで、無理矢理華奢な体をベッドに押し戻す。抗議される前に唇を塞いでしまった。
「ん……」
呻く声が聞こえた。読んでいた文庫本を置いて、ベッドを覗き込む。うっすらと開いた目が俺の影を僅かに映した。まだ覚醒し切っていないらしく、ぼんやりと俺を見ている。
「…………」
「…………」
「……え、あ」
がばりと帝が体を起こす。俺は急いで顔を引いたけれど、一瞬でも遅れていたら衝突していただろう。
「おま、あぶな――」
「今何時ですか!?此処は何処ですか!?」
立ち上がろうとしている帝の肩を押さえながら、答えてやる。今は四時半前、此処は病院だ。すると帝は顔を真っ青にした。
「嗚呼、授業が終わってしまったでは無いですか……!」
「何言ってんだよ!それどころじゃないだろうが、ばかっ!お前過労で倒れたんだぞ?分かってんのか!?」
ひくりと眉を動かしたけれど、帝の返事はそうですかととても他人行事なものだった。自分の事も他人事か?授業に欠席なんてしない優等生の為ならぶっ倒れた奴なんか切り捨てるのか?
思わず溜息を吐きかけたけど、止めた。変わりに頭を撫でてやる。
「何するんですか。止めて下さい」
「でも寝癖付いてる」
「嘘」
まあ、嘘なんだけどな。切り捨てておきつつ気になったらしい帝が右手を自分の髪に伸ばす。指先が触れる寸前に細い手首を掴んで、無理矢理華奢な体をベッドに押し戻す。抗議される前に唇を塞いでしまった。
作品名:さみしさの後ろのほう 16~20 作家名:志乃