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サヨナラのウラガワ 11

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 手前勝手な妄想のようなものだったと凛に気づかされ、己の犯したことだというのに、アーチャーには自責の念を負わせてしまっている。
 こんな馬鹿な話があるだろうかと、嗤えるものなら嗤いたい。
「……ごめ…………っ……」
 引き留めたことも、代わってやるなどと言ったことも、今こうして責任を感じさせていることも、そして何より、好きになってしまったことを士郎は謝りたい。
 愚かな想いだったと今ならばわかる。
 抱いてはならない想いだったと理解している。
 ――――悪いのは、全部、
「お前は、何も、悪くないっ!」
 引き起こされて、抱きしめられる。滲んだ視界に照明が眩しく、何度も瞬きを繰り返す。
「士郎。お前は、懸命に私を現界させようと努めただけだ」
 ちがう、と言いたいのに、士郎の喉は嗄れてしまって声が出ない。
「私が踏み出せなかったからだ」
 アーチャーの言葉の意味がわからない。
「私が……」
 アーチャーの腕が緩み、ずるり、と少し身体が沈み、その腕の中に抱えられたまま目線が合う。
「……好きだと言えなかったからだ」
 その言葉を理解する前に呼吸を飲まれ、口を塞いできたその熱さに瞼を下ろす。
 ――――キス、してる……。
 なぜ、アーチャーとこんなことをしているのだろう、と士郎は疑問を浮かべた。が、すでに士郎の脳は思考を停止しており、まともな答えには行きつけそうにない。
 ただ、深く奪われるような口づけにどうにか応えるだけで、ずっと痛みしか感じていなかった胸が、違うもので埋め尽くされていくのを、ぼんやりと感じているだけだった。


サヨナラのウラガワ 11  了(2021/1/24)