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活動内容=幸せを守ります

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 来神高校は他校からも噂される事が多い学校だった。しかし、決してそれは良い意味ではない。偏差値は平均的だったものが年々下がっていく一方、素行は反比例して悪行が増えていた。
 そんな来神高校で有名な人物の内二人が今回の話の主体になる。

 眉目秀麗な顔に愛想の良い笑み。第一印象で殆どの女子生徒は彼に少なからず心を惹かれてしまう。
 しかし、その好意も彼との時間が一瞬でもあった女子は尽く砕け散る。振られるのではない。彼女達が一方的に彼への気持ちを冷めてしまう、というより引いてしまうのだ。
「俺は特別何もしてないのに、本当に失礼だよね?」
 とは、彼の弁だが、彼女達はそれに聞く耳を持たない。
 彼女達は口々に言う。
「あんな人だとは思わなかった」と。


 金髪の髪の毛に何かを威嚇するような目つき。第一印象で殆どの女子生徒は彼に怯えてしまう。
 しかし、ふとした瞬間に彼と接する時間のあった女子は、己の浅はかさを反省する。特別な事柄をされたわけではない。彼女達が一方的に彼の知らなかった一面を見て惹かれてしまうのだ。
「俺は特に何もしてねえ。というか、別に俺は女子と付き合いがあるわけじゃねーし」
 とは彼の弁だが、彼女達はそれに聞く耳を持たない。
 彼女達は口々に言う。
「あんな人だとは思わなかった」と。

 同じ言葉なのに大きく意味合いの違う言葉を言われる二人は、同様に性格も相違している。
 だが、何故か彼らはいつも一緒に居た。

「ちょっと、知ってる?」
「どうしたの?」
 昼休み。昼食をとっていた数名の女子生徒の元へ一人の女子生徒が息を切らしながら現れた。
「またよ! またあいつよ!」
 主語が抜けている彼女の言葉に、しかし弁当を食べていた女子達は一気に目の色を変えた。
「はあああああ!? それ本当!?」
「ちょっと! あいつ今日は学校休んでる筈じゃないの!?」
 いろめいた教室の一角に他の生徒達は何だ、と目を丸くする。中には「うっせーな。飯ぐらい静かに食えよ」という、非難の目も加わっていたが、彼女達にとっては痛くも痒くもない。今現在進行形で彼女達にとって大切なのは彼の事だけだ。
 弁当を机の上に置き去りにして彼女達は教室から慌しく出て行ってしまう。残された生徒達は溜息を吐くと、誰からともなく呟いた。

「まーた、平和島親衛隊かよ……」

 来神高校には通常の部活、委員会の他に非公式の組織が存在していた。
 それが、『平和島静雄親衛隊』である。
 本人非公認。所属人数不明。なんとも不透明な組織だが、たった一つだけ規約として決まっていることがあった。契約書は無いので暗黙の了解とも言えるだろう。
『決して抜け駆けするべからず』
 彼女達の中には確固としてその契りが存在していた。もしも、抜け駆けを――例えばバレンタイン等のイベントでもないのにプレゼントを贈る等など――すれば、それは列記とした裏切り行為に辺り、平和島静雄を見守ることすら許されなくなる。
 恋する乙女、の範囲を超えたところに『平和島静雄親衛隊』は位置していた。
 彼女達の目的はあくまで『平和島静雄の幸せ』であり、彼と結ばれる事ではない。それはとうの昔に諦めてしまった女子生徒が集ったのが、この組織であり、そんな女子生徒の為にあるのがこの組織なのだ。


 廊下を慌しく突き抜けるうちに数名だった組織に、徐々に他の女生徒が加わっていく。何処からか同じ情報を得たのだろう。鬼気迫ったその迫力に廊下に居た生徒は次々に道を開けていく。
「あいつは校庭に居るのよね!?」
「うん! さっき見た時は校庭だった!」
「じゃあ、もしかしたらもう別の所に移ってるかもしれないじゃん!」
「それより平和島君は!?」
「多分まだ一緒に居るはず。かなり怒ってたから」
「だったら、」
 走りながら目的地を決めかねていたところに、親衛隊の一人がある人物を見つける。彼女はその人物を指すと周囲の隊員に示した。
「門田君!」
「! な、何だ?」
 門田京平。静雄の友人である。
 呼び止められた門田は、目の前に居る女子生徒の人数に一瞬怯んで見せた。が、一応話を聞こうとする体勢を見せる辺り門田は人が良いと言える。
「へ、平和島君が何処にいるか知ってる!?」
「静雄? 何でまた……」
「いいから! あいつがまた平和島君にちょっかい出してるの!」
「あ、あいつって……ああ、成る程」
 数少ないヒントの中から門田は思い当たるふしがあったのか、数度頷いて彼女達に答えた。
「今は屋上だ。確か新羅に手当てしてもらっている筈だ」
「手当て!? あ、あいつめぇっ!」
 決して女生徒から聞きたくはなかった口調に門田は素直に顔を顰める。が、彼女達は気に留めていない。彼女達にとって大切なのは『平和島静雄の幸せ』なのだから。
 門田への礼もそこそこに親衛隊の足は屋上へ向かう。残された門田は後頭部を掻きながら気を取り直して本来の目的地へ向かうことにした。

 獣の群れが足音を轟かせる音のような響きをさせて、親衛隊の足は止まらない。途中で教師に注意をされるが、誰一人として耳を傾けることはない。頭にあることはただ一つだけだ。
 『平和島静雄親衛隊』にとっての敵は抜け駆けをする女子生徒ではない。そんなもの相手にもならない。だが、唯一、たった一人だけが彼女達の最強最悪の敵なのだ。
 その人物とは。
「折原臨也死ねえええええええええええええええええ!!!」
 同じ来神高校の男子生徒である折原臨也。端正で整った顔つきと柔らかい物腰とは裏腹に、彼は誰にも理解しがたい性格の持ち主であった。
 彼は人というものに他人よりも興味を持っており、彼に好意を持った女子生徒も所詮は彼の『観察』の対象でしかなかった。だからこそ、彼に好意を寄せた女子生徒は直ぐにその気持ちが冷めてしまい、逆に嫌悪感をも抱くようになってしまっていた。
 一方、静雄はというと。彼は臨也と同じく整った顔立ちとスラリと伸びた身長で、人の目の惹く容姿をしている。が、彼の場合は金色に染められた髪の毛と威嚇するような目つき。そして、彼を取り巻く噂――事実も含まれる――が周囲の女子生徒だけでなく他の生徒も敬遠させていた。が、しかし。彼自身は強靭な肉体を別にすれば普通の高校生と何ら変わりない。困っている者が居れば心配をし、重たい物を四苦八苦しながら運ぶ女子生徒を助ける事もある。人というのは現金なもので、イメージとのギャップを見つけると何ら普通の出来事も特別に感じるものである。親衛隊の殆どの女子生徒がその例である。
 こうして、静雄に普通に優しくされた女子生徒が集って出来上がったのが『平和島静雄親衛隊』なのである。
 だが、しかし。何故『平和島静雄親衛隊』が臨也を敵視しているのか、それは臨也の特質な性格が原因ではない。――いや、ある種その所為でもあるが。
 彼が親衛隊から疎まれ、嫌われ、『ウザヤ』とまで呼ばれてしまっている現状の原因はつまるところ。



 屋上への階段を一段飛ばしで駆け上がった親衛隊は、扉の前で一旦止まると、ゆっくりとそれを開いた。
「居た!」