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長き戦いの果てに…(改訂版)【4】

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俺は隊長と約束したのだ。だからあの人がいいというまでは俺の口から何も言えない。あの人は俺に取って誰よりも大切な人なのだ。大切な人との約束は破れない、たとえ何があってもだ。

ヨハンの表情はいかにも不自然で嘘を吐いていますと顔に書いてあるようなもんだ。俺に気が付かれてないとでも思っているのか?
「お前、何を考えてるヨハン、何をあいつに義理立てしてる?それとも……」
ギルベルトの左手がすうっとヨハンの顔に伸びた。
「あいつに脅されてるのか?」
あごに手を掛けると無理やりに仰向けにさせ、顔を近づけて紅い瞳でヨハンの目をじっと覗き込む。
「もしかして……本当はあいつに何かされたのか?」
「ち…違います、そ…んな……ことは……」
顔色を失ったヨハンの唇が震え、目が泳ぐ。
「大丈夫だ、あいつには言いやしねえ……お前を傷つけるつもりはないんだ、さっきも言ったろう?もし何かあれば俺が守ってやる。だから全部吐いちまえ、それがあいつの為にもなるんだぜ?」
「ほ……本当、ほんとうです、自分は、な、何も……」
「そうか……それじゃ」
ギルベルトの紅い瞳が不穏な光を帯びた。ヨハンは怯えて逃げようとしたが、身構える暇も与えられずに唇を塞がれた。
「な、何を……っ」
「イイコト、さ」
そう告げると一旦離れた唇がまたすぐにヨハンの口を塞いだ。
ヨハンは抗議するように一瞬右手を振り上げたが、その手は震えてすぐに力なく垂れ下がった。不安とも驚愕ともつかない色を浮かべた黒い瞳は次第にとろりとして表情を失っていく……
「……どうだ、言う気になったか?」
色素の薄い唇を赤い舌でぺろりと舐めると、ギルベルトはにやりと笑った。
ヨハンはとろんとした表情で、頬を赤くして浅い呼吸を繰り返している。潤んだ目をして弱々しく抗議した。
「何で、こんな……こ…と……」
「お前が気に入ったんだ、ヨハン。あいつとは何でもないんだろう?なら俺のモノになれ」
「そんな……」
「世話になったからってそこまで義理立てする必要も無いだろう。あいつの事はもう俺に任せとけばいい。俺はあいつの兄だぞ」
黒い瞳が狂おしい光を帯びる。
「もちろん悪いようにはしない。全てあいつの事を思ってのことだ」
この人の言う通りだ。隊長の本当の兄上なのだから、自分よりもずっと何もかも分かっているはず。それに俺がどうしてこんな思いをしなくてはいけないのか。そもそも俺なんかが隊長の為に何ができるっていうんだ……
「お前が苦しむ必要はないヨハン。いいか、俺が全て良いようにしてやる、だから……」
痺れた脳を蕩かすような甘い言葉が、弱った心に沁み込んで狂おしい程に惑わせる。