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長き戦いの果てに…(改訂版)【4】

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またあの濃厚なキスが降ってくる。受けたものから意思の力を奪い取るキス。顔を背けて抵抗しようとしたが、すぐに顎をつかまれて無理やり上を向かされた。
「……本気でそう思ってるのか?」
ゆっくりと唇を離すと、ふたりの唇はぬるりと透明な糸を引いた。それは名残惜し気につうっと伸びると、やがてぷつりと切れた。獲物の抵抗が弱まったのを見計らい、ギルベルトは改めて問いかける。
「そうは見えないな、本当は欲しいんだろう?」
ギルベルトはニヤリと笑った。
「遠慮することはないぜ、欲しいだけ取ればいい」
「ち、ちが……」
ヨハンの潤んだ目から涙が零れた。
「お前には失うものは何もないだろう。全部、忘れてしまえ──」
ヨハンは啜り泣きを漏らした。
「……何だ、泣いてるのか、まだ早すぎるぜ」
ギルベルトはくくっと喉で笑うと、煌めく紅い瞳を細めた。
「初めてってわけでもないだろう──」
獲物を前に舌なめずりする獣のように赤い舌で唇を舐めると、ギルベルトはヨハンの上に屈み込む。ヨハンは息を呑み、小さく掠れた悲鳴を上げた。
「お前を痛めつけようなんて考えちゃいないさ──少しも、な」
蛇に魅入られた小動物のように、逃げることもできずに震える耳元に唇を寄せ、ギルベルトは甘い声で囁き掛けた。
「……今からイイコトしようってんだ、泣くこたぁないだろ……ま、泣き顔も悪くはないがな」
そう言いながら軽く耳たぶを噛むと、舌を差し入れて敏感な部分を嬲ってやる。
「あ、ぁ……っ」
ヨハンの喉から悲鳴とも喘ぎともつかぬ掠れた声が漏れる。
ギルベルトは片手でしっかりとヨハンの両手を押さえたまま、もう片方の手を器用に使って、味わうようにじっくりとその肌を愛撫していった。
普段は武器を握る硬い指が、予想外に繊細な動きで耳の裏側から首筋にかけて舐めるようにゆっくりと這っていく……浮き上がった鎖骨を愛おしげになぞる。そして筋肉がしっかり張っているが、兵士にしてはやや薄い胸の上で敏感な部分を捉えながら優しく踊るように滑って行く。
快感のツボに触れられる度に、ヨハンの肉体は釣り上げられたばかりの魚のようにびくっと震え、喉からは望まない声が零れ落ちた。堪え切れずに思わずしゃくりあげると、涙やら涎やら鼻水が一緒くたになって頬から顎へと流れ落ちた。きっと悪戯をして泣いた子供のような顔になっているだろう……両手をしっかりと押さえ込まれている為、拭いたくても拭うこともできない。
ギルベルトはそんなことにはお構いなく、今度は胸の最も敏感な部分へと舌を這わせた。同時にもう片方の部分へは指を器用に使い、手慣れた愛撫によって楽々と獲物を追い上げていく。啜り泣きの中に、苦痛ではなく湿り気を帯びた溜息のような甘い声が、次第に混じり始めるのをじっくりと楽しむ。
「ん……どうだ?まだやめて欲しいか?」
ギルベルトは桜色に上気した白い胸から顔を上げた。獲物はもうすっかり抵抗する力を失い、今や押さえつけておく必要もなくなった。
「身体の方は準備がよさそうじゃないか。後はここで止めてもお前が平気なら……ってことになるな」
ギルベルトは満足げな笑みを浮かべて答えを待った。
ヨハンは今まで堅く閉じていたまぶたを薄く開くと、ゆっくりギルベルトの方に視線を向けた。
「お…願い、です……もう、ゆるし…て……」
浅くて苦しげな呼吸の合間に、辛うじて聞き取れるような掠れた声。
「思ったより強情だな、ヨハン」
ギルベルトは鼻で笑った。
「まあ多少は歯ごたえがなくっちゃ面白味もねぇってモンだ」
そう言うとヨハンの胸の可愛らしい突起を指で軽く捻った
「いッ、あ……!」
小さな悲鳴が漏れ、潤んだ黒い瞳から涙が零れる。
「言ったろう、お前に嘘はつけないってな」
「な……にを、言って──」
「お前、まだヴェストのヤツに操立てしてるんだろう。ムダだ、もう諦めろ」
「そ、そんなんじゃな──」
必死で反論しようとしたが最後までしゃべることすら許されない。
「いいや、俺には全部分かってる」
「ち、ちが……」
「あいつには坊ちゃんがいるからな、お前が何をしても無駄だ。永久にお前の番なんか回って来やしない。……ああ、坊ちゃんもアイツと同じ『国』だからな。この家で、一つ屋根の下で、いつも一緒に暮らしてるんだ」
縋るような瞳を楽しむように少し間を置くとギルベルトは続けた。
「あいつは元々不器用だからな。遊びにしたって複数の相手となんて器用なマネは出来やしない。あくまで坊ちゃん一筋だ。しかも、愛し過ぎて相手を締め殺しちまいそうになるほどにな」
ギルベルトの瞳は急に今までと違う光を帯びた。
「殺す…なんて……」
ヨハンの唇は震えていた。
「もののたとえじゃねぇぞ、本当に首を絞めやがった」
「そんな……どうして──」
「坊ちゃんは、いけしゃあしゃあと『プレイ』だなんてぬかしやがったが、あれぁ絶対プレイなんかじゃねぇ──」
それを聞いたヨハンの表情が変わった。赤く染まった頬から見る間に血の気が引いていく。ギルベルトはそんなことには少しも頓着せず、その時の事を思い出しているのか少し遠い目をして話し続けた。
「あいつは本気だった……あの目──ヴェストのヤツ、本気で坊ちゃんを殺す気でいたんだ。あん時たまたま俺が気づかなけりゃどうなってた?しかも止めても言う事を聞きゃあしない……いや、まるで聞こえてなかったんだ。容赦なく横っ面張り飛ばさなけりゃ、本当に坊ちゃんの首の骨を折るまでやめなかったろうな」
遠くを見ていた紅い瞳が突如舞い戻るとヨハンの瞳を再度がっちり捉えた。
「そいつはまだほんの昨日の事だ。だから……」
不気味な沈黙。
真紅の視線がヨハンの黒い瞳を射貫く。決して逃がさないと言わんばかりに。
ヨハンの目は怯えたように丸く見開かれ、瞳孔は収縮して焦点が合わなくなり激しく揺れた。
「……分かるか、ヨハン?」
ギルベルトは再び身を乗り出すとヨハンの上に覆いかぶさった。重なり合わんばかりに顔を近づける。熱い吐息とは裏腹に唇から出る言葉は氷のように冷たい。
「俺はあいつに何があったのか真実が知りたい、俺にはどうしてもその必要があるんだ……どんな手を使ってでも、な」
ヨハンの顔色は蒼白になり歯の根が合わない程ガタガタ震えていた。
ギルベルトは脅しが効き過ぎたかと思ったが、すぐにそうではないことに気がついた。
視線が定まらないヨハンは、うわ言のように喋り始めたのだ。
「お、俺……俺のせいだ!俺があんな事言ったから、隊長が、あんな──俺のせいだ!」
「何だと?何を言ったんだ?」
「俺が悪いんだ、全部俺のせいだ!俺があんな事を言わなけりゃ、隊長はあんな風にはならなかった!みんな死ななくて済んだんだ!」
ギルベルトの声が聞こえていない。黒い瞳は焦点が定まらず、あらぬ方を彷徨っている。
「何を言ってる、落ち着けヨハン!落ち着いて話してみろ!」
ギルベルトは肩を掴んで揺さぶり、頬を二、三回打ってみたが全く効果がない。
「──わぁあああああ!!」
ヨハンは突然屋敷中に響くような金切り声を上げた。
「いやだあっ、許して!俺が…っ、俺が悪かったんだ、俺のせいだ!いやぁだあああ──っ!」