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星に願いを

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東京都内にある商店街の一角で、高尾和成は折り畳みテーブルの上に目を落とした。
 テーブルの上には、色とりどりの短冊が並んでいる。色は、赤、緑、白、紫、黄色。いわゆる、五色の短冊だ。
「これってさー。本来は願い事によって色を分けるんだっけ?」
 未記入の短冊の束に触れながら、高尾はバスケ部のエースで相棒の緑間真太郎に尋ねる。
 緑間は「ああ」と答えながら、緑色の短冊を一枚手に取った。
「五色の短冊は、それぞれの色が儒教の五徳、仁・義・礼・智・信を表しているとされている。青や緑は仁、白は義、赤は礼、黒や紫は智、黄色は信だな」
「ふーん。じゃ、真ちゃんのそれは仁を表してんだな。なんだっけ、意味。思いやり?」
「別に深い意味があってこの色を選んだわけではないのだよ。たまたま目に付いただけだ」
「はいはい。ま、『緑』間なんだから、緑色に目がいくのは当然っちゃ当然だよな」
 言いながら、高尾も緑色の短冊を手に取る。テーブルの上に用意されていたペンを握り、「全国制覇!!」と大きく書きつけた。
「馬鹿め。それでは何で全国制覇したいのか分からないのだよ」緑間が呆れた声を出す。
 高尾が目を向けると、緑間も自分の短冊に文字を書き込み始めた。その手元を覗き込む。そこに書かれたのは、「今年のインターハイで、バスケで優勝する」という文章だった。
「願い事っていうより、宣言って感じじゃね」
「それで構わないのだよ。神仏の助けを借りるにしても、まずは人事を尽くさねばならんからな」
「固いな~、真ちゃん。こういうのは楽しんだもん勝ちだって。宮地さんなんて、みゆみゆの握手券が当たりますように、って書いてんだぜ?」
 自分から見て緑間がいるのとは反対側を、高尾は指差す。
「文句あんのか、高尾。轢くぞ、木村の軽トラで!」
 と、すかさず宮地の怒号が飛んできた。
「ちょw 宮地さん、それ、ここで言われるとマジでやられそうで怖いんすけどwww」
「うるせえ、埋めんぞ!」
「怖えーw もー、相変わらず物騒なんすからww」
 暴言を撒き散らす宮地に、高尾は声を出して苦笑する。
 宮地清志は高尾達の高校の二つ上の先輩で、バスケ部でスタメンだった選手だ。現在は誰もが知る有名大学に通っている。今でも、バスケには本気で取り組んでいるらしい。
 ちなみに、彼の一つ下の弟の宮地裕也が、現在バスケ部で主将を務めている。彼もまた、兄の隣で短冊に願い事を書き込んでいた。
「なんだ、騒がしいな。人の店の前で喧嘩するなよ?」
 宮地兄弟の後ろから、木村信介がひょっこりと顔を出す。
 青果物が入った箱を運ぶ木村の隣には、大坪泰介の姿もあった。木村と大坪も、高尾達の二つ上の先輩だ。
 この二人のそれぞれの弟妹が、今年から高尾達の高校に在籍している。高尾と緑間は今日、木村の弟からの誘いで、木村兄弟の実家が営む八百屋を訪れていた。
「大丈夫ですって、木村サン。――これ、笹に吊り下げときゃいいですか?」
 高尾は、短冊片手に木村に問い返す。
「ああ、そうしてくれ。なるべく上のほうにしてくれると助かるな。目立つし、下のほうは子供達のために空けておきたいから」
「了解っす」
 短く応えて、高尾は目の前の笹を仰ぎ見る。
 木村の実家の店の前に用意された笹には、既に三つの短冊が吊るされていた。二つは木村兄弟、残り一つは大坪が先ほど吊るしたものだ。
 この笹と短冊は、商店街に来る子供達のために、と木村の父が用意したものらしい。先に誰かが吊るした短冊があったほうが、子供達も自分の願い事を書きやすいだろう、との配慮から木村達が書いた短冊を吊るしてある。
「真ちゃん。オレの分、一緒に吊るして」
 身長が百七十センチ台の高尾は、百九十センチ超えの緑間に、自分の短冊も笹の上のほうに吊るすよう頼む。
 高尾から短冊を受け取った緑間が、訝しげな顔をした。
「なぜ二枚もあるのだよ」
「いいじゃん、一枚くらい多くたって。あ、黄色いほうは読むなよ」
「……ふん。別にお前の願い事など興味ないのだよ」
 突っ慳貪に言って、緑間は自分と高尾の短冊を笹の上のほうに吊るす。憎まれ口を叩いてきた割には、書いている文字が読みにくいように高尾の短冊を吊るしてくれた。この男は、ツンデレなのだ。
「書き終わったら、中で涼んでてくれ。麦茶用意してあるから」
 木村の声に、高尾は間髪入れずに「うぃーっす!」と応える。
 梅雨時とはいえ、そろそろ日中の気温が高くなってくる頃だから、涼しい場所に避難できるのは有難い。店頭にいる木村の父に断ってから、高尾は緑間と共に店の奥の住居スペースにお邪魔する。中はクーラーが効いていて涼しかった。
 少し遅れて宮地兄弟もやってくる。居間の座卓を囲んで座ると、後輩のほうの木村が台所から人数分の麦茶を運んできて、全員の前に置いた。
「おい、緑間。仮にも主役が端の席に座ってんじゃねえよ。真ん中座れ」裕也が言う。
「オレは左利きなので、左端の席のほうが都合が良いんです」
「主将に口答えしてんじゃねえよ、刺すぞ」
「む……」
「まーまー、真ちゃん。今日のトコは真ん中座っとけって。お前の左隣にオレが座ればいいだろ?」
 高尾は立ち上がり、緑間が中央の席に移動するよう促す。
 緑間を無事に移動させたところで、外にいた大坪と木村が合流した。
「じゃあ、緑間の誕生日会の準備してくるわ。昼飯出すから、寛いで待っててくれ」
 木村兄弟が台所に下がる。
「手伝わなくていいっすか?」
 高尾は訊いたが、
「ああ。相棒の相手でもしてやっててくれ」
 と返された。
「木村さんはオレをなんだと思っているんですか……」
 緑間が不満げに呟く。
「我が儘なエース様だろ」と笑う清志に、大坪が苦笑して頷いた。
「むすっとした顔してんじゃねえよ、緑間。せっかく卒業した先輩方が祝ってくださるっていうのに、嬉しくねえのか?」裕也が訊く。
「いえ。そんなことはありません」と、緑間は答えた。「こうして誰かに祝って頂けること自体、有難いです。イベント日が誕生日だと、当日は忘れられていたり、誕生祝いよりイベントを優先されたりしがちなので」
 ほんの少し、はにかむようにして緑間は笑う。
 去年の今頃は、まったく笑顔を見せない堅物だったのに。時々だけど笑うようになったよなあ、こいつ、と高尾は感慨深く思う。
「あー。オレもそれはちょっと分かるわー。オレのほうは、もっと俗なイベントだけど」
 うんうん、と頷きながら清志が言う。彼の誕生日は、某有名菓子の日として知られる日だった。
「なんか、イベント日生まれにしか分からない苦労があるんすね~」と、高尾は当たり障りのないことを言っておく。
「皆、用意できたぞー」
 木村兄弟が、大皿を抱えて戻ってきた。一つは大量のそうめんが載った皿、もう一つは大量の天麩羅が載った皿だ。天麩羅は買ってきた物のようだが、海老、ホタテ、茄子、人参、大葉など、たくさんの種類があった。
「すっげー。てか、いいんすか、木村サン。こんなにたくさん」高尾は尋ねる。
「そうめんは貰い物だから気にすんな。天麩羅は大坪と宮地の奢りだ」
「マジすか。二人とも、ご馳走様です!」大坪と宮地に向かって頭を下げる。
作品名:星に願いを 作家名:CITRON