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長き戦いの果てに…(改訂版)【6】

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フェリシアーノは必死で呼びかけたが、ヨハンは虚ろな声でそう繰り返すばかりだ。
「何を言ってるんだよ、ヨハン。どこに行ったのかも分からないのに、どうやって探すつもりなのさ!」
肩をつかんで揺すっても何の反応もない、こっちを見てもいない。フェリシアーノは激しい不安に襲われて叫んだ。
「今日やっと意識が戻ったばっかりだよ、そんな顔色してどこへ行くっていうんだよ!」
「隊長が呼んでるんだ、俺は……最後まで責任を果たさなくてはならない」
ようやく答えたかと思えば、さっきまでの彼と同じ人間とは思えない、感情のない平板な声。フェリシアーノには何が起こったのか分からなかった。
「待ってよヨハン、責任って何のこと?ルートが呼んでるってどういうことなのさ!」
どうすれば止められるのかフェリシアーノが考えている間にも、ヨハンは部屋を出て行こうとしていた。慌てて腕をつかんだが自分の力では到底かなわないのにすぐ気がついた。本気になったら軽く振り払われてしまう。
「ヨハン、ごめん!」
もう迷っている暇はないと判断し、フェリシアーノはすばやくヨハンの足元をすくった。普段ならそんな手に引っ掛かる彼ではないが、今日は驚くほど簡単に成功した。
「うぅ……ッ」
「大丈夫、ヨハン?しっかりして」
「い……ってぇ──って、何だ、俺どうしたんだ、何が起こった?」
ヨハンは目を瞬かせた。どうやら正気に戻ったらしい。
フェリシアーノは思わず大きなため息をついた。
「よかったぁ……ヨハン」
安堵でまた涙腺が緩む。
「フェリどうした、どっか痛むのか?何で泣いてる?」
何が起こったのかさっぱり分からず、助け起こされている身で言うのもおかしいが、泣いているフェリシアーノを放っておくわけにはいかない。
「ううん、俺は平気だよ、ありがとうヨハン。それより大丈夫?痛いとこはない?」
潤んだ鳶色の瞳を見ていると、こんな時にもかかわらず動悸が早くなって妙な気がしてくる。今はそんな場合じゃないっていうのに。
「え?……ああ、俺転んだのか?ちょっと打っただけだ、大したことないから心配するな」
ヨハンはそう答えると、慌てて逃げるように立ち上がった。
「それよりさっき確か、隊長がいなくなったって言ったな?」
突然途切れた記憶の糸を手繰り寄せようと、先ほどまでの会話を思い出す。
「そうだよ。そしたら急に『行かなくちゃ』って言い出すから、俺はどこに行くのかって聞いたんだ。覚えてる?」
そう言えばそうだった。俺は急いで行かなくちゃならない、隊長のところへ。でも──それはどこだ?
「ヨハン!」
考えるうちにまた意識が遠のきかけたらしい。フェリシアーノに揺さぶられて、ようやく現実に引き戻された。
「しっかりして!どうしたのさ、さっきからおかしいよ」
フェリシアーノが青い顔をして見ている。
「分からない、何か大事な事を忘れている気がするんだが……どうしても思い出せない。隊長の事に関係あるはずなんだが──」
答えながら必死に考える。さっき記憶が飛んだ時に、何か大事な……
「とにかく落ち着いて、ヨハンはもうちょっと休んだ方がいいよ。ギルもローデリヒさんも今、八方手を尽くして探してるからルートはすぐ見つかるよ、きっと」
彼なりにヨハンを気遣っての言葉だと思うが、本当は自分の方が不安でいっぱいなのだろう。何とか自分自身を落ち着かせようと必死な姿が却って痛々しい。
「俺も何ヵ所か思いつくところを当たってはみたんだけど……俺じゃダメみたい」
そう言って切なげに笑う姿も、黙って見てはいられない。
「俺が隊長を探す、俺が見つける!待ってろフェリ」
考えるより先に言葉が出た。当てはない、理屈でもない、ただの勘だ。それでも見つけてみせる、そう告げた。
「……うん、そうだねヨハン」
何の説得力もない言葉だったが、フェリシアーノは頷いてくれた。
「……ヘルマンだ」
「えっ、誰のこと?」
それは無意識に出た言葉だった。
「分からない……でも大事なことだって気がする。隊長はそこにいるんだ」
それを聞くとフェリシアーノが不思議そうに首を傾げた。
「そいつと会ってるのかもしれない」
俺は探さなくちゃならない、そいつを。