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長き戦いの果てに…(改訂版)【7】

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「言ったろう。『ルートヴィッヒを連れ戻せば俺の仕事は終わり』だと」
「だから、俺達が迎えに──」
「それじゃ駄目だ、こいつが必要だ。こいつがいなりゃ奴は戻って来ない」
「だから何でなの!」
「……なぜだと思う?」
≪ヨハン≫の目が細められ、鷹のように鋭い光を放つ。
「鍵だ、すべてを解く鍵。あいつのもつれた心を解きほぐすには、こいつが必要なんだ。ローデリヒでもギルベルトでもない、もちろんお前でも、俺でもない、こいつがだ」
「でも、それじゃヨハンが──」
なお言いつのるフェリシアーノを無視してゲルマンがまたしゃべり始める。
黒い瞳が少し虚ろになった。
「……いいかヨハン、俺がお前をルートヴィッヒのところまで連れてってやる。だからもう余計な抵抗はするんじゃない、死にたくなければな」
「……」
一瞬にして≪ヨハン≫の表情が変わる。
黒い瞳が揺れて何か物言いたげに口を開いたが、結局黙ったまま、こくりとうなずいた。
「……話はついた」
再び口を開いた彼は、ゲルマンに戻っていた。

「フェリシアーノ、どうしたんです?もう車が──」
ヨハンの病室に入って来たローデリヒは、すぐに異変に気がついた。
「お爺様、もう用は済んだのではなかったのですか?」
「≪こいつ≫を連れてけ」
そう言いながら、自分に親指をしゃくって見せる。
「なぜですか?必要ないでしょう」
「同じ問答を繰り返すつもりはない、後はこいつに聞け」
そう言ってフェリシアーノを指差す。
「フェリシアーノ?」
二人の視線が注がれる。
フェリシアーノは困惑しながらこう答えた。
「訳は後で話すから、取りあえず彼も連れて行って欲しいんだ。ルートを連れ戻すのにどうしても必要だから」
「そう……ですか」
ローデリヒはちらりとヨハンに目をやった。
「時間がない、外に車を待たせています。散歩にでも連れ出す振りをして、このまま部屋を出ましょう。ただあなたのその目は人目を引きます。顔はなるべく伏せていてください、お爺様」
「ああ」
ゲルマンはぶっきらぼうに答えると立ち上がった

「おい、何だそいつは?」
屋敷でようやく合流したギルベルトの第一声だ。
「フェリシアーノちゃんはともかく、なんでそいつがいるんだ。第一、まだ絶対安静だろ──」
俯いたヨハンが顔を上げた瞬間、部屋の空気が凍り付いた。
「てめえ──何者だ」
赤い瞳が細められ、全身から殺気を放ち始める。
「……分からないか、私が」
≪ヨハン≫が不敵な笑みを浮かべるのを見て、ローデリヒがあわてて間に入った。
「落ち着いてくださいギル、この方はお爺様ですよ」
「何だと?…大体、何であんたがここに──」
驚愕はすぐに怒りに変わった。
「どういうことだよ?まさか、やつらの件もあんたの差し金か!」
「また、それか」
ゲルマンがいかにもめんどうくさそうにつぶやくと、ギルベルトの顔色が変わった。
「またとはどういうことだよ、ふざけんな!今すぐにヴェストを返しやがれ!」
「ギル、お爺さまに対してそれはあまりにも──」
怒りの矛先はローデリヒに向かった。
「外野は黙ってろ!」
「外野とはどういう意味ですか!」
「外野だから外野だと言った、何が悪い!」
苛立ちが苛立ちを呼び、深紅と紫が激しく絡み合い、火花を散らす。
ヨハンの顔をしたゲルマンは馬鹿にしたように口の端を歪め、そんな二人を黙ってながめている。
見慣れた顔のはずなのに、人格が違えばこんな表情ができるのかと思うような冷笑が浮かんでいる。
「もうやめてよ、そんなことしてる場合じゃないでしょう!」
険悪な雰囲気に耐えかねたフェリシアーノが半泣きの顔で間に割って入ると、二人は驚いてそちらを見た。
「……すまねぇ、お前の言う通りだ」
ギルベルトが謝罪した。
「私も……少し熱くなり過ぎたようです」
ローデリヒがいつもの表情を取り戻したのを見て、泣きそうなフェリシアーノもようやく落ち着きを取り戻した。
「……それで?これからどうするんだ、俺もそんなに暇じゃない」
ゲルマンがうんざりしたように口を開いた。
「大体てめえが──!」
「おやめなさい、ギル」
また毛を逆立てようとするギルベルトを、ローデリヒが静かに鋭く遮った。
「今はそんな場合じゃありませんよ」
ギルベルトは小さく舌打ちするとゲルマンから視線を逸らし、今度はローデリヒを睨みつけた。
「ならおまえが説明しろよ、この状況をな」
「今はそんなことをしてる場合じゃありません。説明なら後でいくらでもしますから、とにかく急ぎましょう」
「何だと!こんな、訳わかんねーまま、こいつ──いやその≪ヨハン≫を連れて行けって言うのか?」
その時あからさまに大あくびをしてゲルマン=ヨハンは立ち上がった。
「おい、お前たち」
「なんだっ!」
「ギル、待って下さい──!」
ローデリヒが慌ててたしなめたが、ゲルマンは顔色ひとつ変えずに、ぼそりとつぶやいた。
「……時が過ぎるぞ」
「お前の知ったことか!」
「ギル、いい加減に──」
「いいのか?今まであれだけ探し回って見つからなかったんだ、ぐずぐずしてるとまた消えるかもしれんぞ。ま、俺は構わんが……」
「そんな……!」
フェリシアーノがまた泣きそうな声を出す。
ギルベルトの顔色が変わった。ぎりっと歯咬みすると再びゲルマンを睨みつける。他の人間なら震え上がるその視線にさらされても、顔色ひとつ変えない相手にギルベルトは更に苛立ちを募らせたものの、賢明にも辛うじて自分を押さえた。
「仕方ねぇ、行くぞ!」
紅の瞳はまだ怒りの炎を宿していたが、声は落ち着きを取り戻している。この場は自分を押さえ、とにかく必要な行動を取ると決めたのだろう。
「どうやら、決まったようだな」
うっそりとゲルマンがつぶやく。
「あ、ありがとう……ギル」
フェリシアーノはおずおずと声をかけたが、ギルベルトは背を向けてさっさとドアの向こうに去ってしまった。