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長き戦いの果てに…(改訂版)【1】※年齢制限なしver

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後から聞くと呆れたことに、自分のようながさつ者はローデリヒに相応しくない、だからそのような事はあり得ないのだとかたくなに思い込んでいたらしい。だが一度乗り越えてしまえば、もはや二人の間を遮るものは何もなかった。
 初めて夜を共にしたその日、男性はもちろん女性にも触れたことすらないというルートヴィッヒをローデリヒは優しく導き、一から手ほどきをしてやった。
 寝室でも常に上品な駆け引きを忘れないローデリヒにしてみれば、野卑と言ってもおかしくない相手だったが、素朴で情熱的なところは逆に新鮮でもあり、好ましく愛おしいと素直に思うことができた。それ以来、他の誰かと夜を共にするなどは考えられないほど。

 国の化身は死ぬ事はないと分かっていても無敵の超人ではない。
 取り越し苦労と言われるかもしれないが、出征中、不安の種は尽きず、一人で待つ時間は果てしなく長く感じられた。そんなものは盲目の恋に溺れた愚か者の幻想だとばかり思っていたのに。
 形だけの結婚、肉体的欲求を解消するだけの関係、一時的な戯れ、これまで誰かにそれ以上の気持ちを抱いた事はなかった。
人の関係なんてそんなもの、愛だの何だの真剣に語るなどくだらない。これまでそう信じて疑わなかったが、ルートヴィッヒと出会って全てが変わった。彼のいない時間は暗く寂しく、この世の全てが精彩を失い、時そのものが死に絶えて自分も時の流れに溶けて消えていくような気がする……今までそんな気持ちになったことはなかった。
 ルートヴィッヒは今回もまた戦いを乗り越えて無事に帰ってきた。私は大いなる喜びをもってそれを受け止める──これが愛?それとも恋というべき?百戦錬磨の私が小娘のように心を揺らすなんて、何とも笑える話じゃないですか──そんな風に自分を皮肉ってみても熱く疼く心をごまかすことはできなかった。
 紫の瞳から涙が零れ落ちる。生まれて初めて覗いた自分の孤独の深淵に心が震えた。
「……もう泣くな、ローデリヒ」
 ルートヴィッヒは優しくキスをした。
「俺はもうここにいる……分かるな?」
 日々の鍛錬で硬くなった掌が、優しく桜色に染まった頬を包み込むと、晴れた夏空のような青い瞳が、暗い色に染まった紫の瞳をじっと覗き込んだ。
 ローデリヒの瞳からまた涙が零れた。
「……分かって…います……とも……」
 深い吐息と共にそう答えると目を閉じた。
「愛してる、ローデリヒ。この世の誰よりお前だけだ──」

二人の出会いは全てを変えた。どんな意味でも、もう出会う前の自分には戻れないだろう。だがそれはお互い様だ。後悔はしていない。