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【一時間SS】涼の初夢

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お参りを無事に済ませると、愛ちゃんはたたたーっと元気に売店のほうに早足で行ってしまった。
「愛ちゃーん、そんなに急ぐと危ないよー!」
「涼さん! 絵理さんも! 寒いですからみんなで甘酒飲みましょうよ!」
愛ちゃんは一目散に甘酒店に向かって行ってしまった。ファンのみんなも苦笑いしてる。
「愛ちゃん、本当に寒いの?」絵理ちゃんのまっとうな疑問。
「寒いのも元気の素にしちゃってるみたいだね。しょうがない、絵理ちゃん、行こうか。」
「うん。」
僕たちはゆっくりと愛ちゃんの方に向かった。

「遅いですよ涼さん! もういただいちゃってます!」
愛ちゃんが満身の笑みで甘酒を片手に僕たちを迎える。
「愛ちゃんが速いんだよ。振袖なのに、そんなに走り回っちゃだめだよ。」
「大丈夫です! でもちょっと喉が渇きました!」
そう答えて愛ちゃんは、んぐっ、んぐっ、と甘酒を飲み干す。
「ぷはぁっ、おいしいです!」
ちょ、ちょっと愛ちゃん! 甘酒が口から垂れてるよ!
「うひょお! お宝ショットのチャンス!」と、ファンのみんながカメラを構え始める。
「もう、愛ちゃんったら…。」
露骨にファンの反応を否定するわけにもいかないので、落ち着いた風にハンカチを取りだして愛ちゃんの口のまわりをぬぐってあげる。
「涼さん! ありがとうございます!」
「愛ちゃん、アイドルらしく、ね。」
「はい!」
冷静に諭す顔をしたけど、白い液を少し垂らした愛ちゃんの唇に手が触れて、恥ずかしながら、僕の男の子が反応しそうになってしまった。
ホント、子供っぽいのに不意にドギマギさせてくれるから、愛ちゃんには参るよ…。

その夜、愛ちゃんの夢を見た。
どんな夢かは、とても言えない。言葉にしたら、愛ちゃんをまともに見れなくなりそうだ。
そして、新年早々、夜遅くにパンツを自分で洗う羽目になったことは、今年が多難な年になることを象徴してるのかなぁ。自己嫌悪に陥る。
あぁ、こんな心配ばかりの日々が早く終わって、早く男の子アイドルになれたらなぁ…。