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アクシデントは恋への近道

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「オレ……入院とか初めてで…母さんもいねえし…弟も……。だから……」
子供らしく、可愛らしく。演技だ演技、エドワード!オレなら出来るやってみせる。何せ自分の命がかかっているのだ。出来ねえでどーするエドワード!!どんな手段だろうと使ってやる。
うるうると、瞳を潤ませて下から見つめてやれば可愛さ倍増。んなこたオレは知っている。
少なくとも小児科のお医者さんなら子供は好きなはずだろう。なら、こんなに愛らしいオレ様がうるうる瞳で見上げてやれば、庇護欲もかき立てられるってそーゆーもんだ。朝まで乗り切るためにはこの男!!この医者なんとしてもオレのモノにしてやろう!!
可愛いどころか己の保身のみしか考えていないエドワードの思考であった。
「寝れなくて……怖くって……」
小さな声で囁くように告げてみる。すると医者はそっとオレの背にその手を回し、ぎゅっと抱きしめ返してきた。
「ああ、そうだね。初めて入院とあれば不安かな?」
こくこくこく、と首を縦に振ってみる。不安なんて感じるわけなどないけれど。まあ、そーゆーことにしておこう。
ダメ押しとばかりにエドワードは紅葉のような手のひらで、男の白衣を握りしめた。

「センセぇ……朝までオレと一緒いて……?」

うらぁ、食いついて来やがれこの可愛らしいオレ様にっ!!
そんな思考を形成している時点で可愛らしくも何ともない小学5年生のエドワードだが。金色の髪と金の瞳。外見だけはおっそろしく可愛らしい、天使のような少年が、小動物のように震えていれば、結果などわかりきってるものだろう。
当然この研修医も。一瞬にして落とされたのだ。
「あっああもちろんだっ!き、君が眠れるまで、こっこうしていいいいいいてあげるから……っ!!」
医師としての優しげな声、なんてものではなかった。うわずって、つっかえつっかえ繰り出された震え声。
エドワードは心の中で、よっしゃ見てみろこのオレ様の愛らしさ。ふっふっふさすがだぜ!とVサインまで出してみた。

けれど誤算はたった一つ。
エドワードはこの研修医に朝までではなくその後も一生つき纏われることになったのだ。

大量のバラの花束を抱えて小学校の校門で待ち伏せをするロイ・マスタング。
中学校の入学式に某高級ホテルの最上階フレンチレストランのディナー&スイートルームを予約するストーカー。
高校入学のお祝いだと言って最高級のルビーを贈りつけてきたりもする頃にはエドワードも絆されて。
が、まあ、そんな話はまた後日。
交通事故というアクシデントにより、一生の恋人を得てしまった不覚さにエドワードが気が付くのは遙か先の未来である。




終わり。