aph 『伝説のエリシアン』
5 改造あんパン
あんパン……だと?
イギリスは甘い豆というのがどうも受け入れられないでいた。
しかし、候補となるパンの種類のあまりの多さに短気を起こして、見た目シンプルで簡単そうに見えた運命のパンを持ち上げ、『コレでいこうぜ』と言ってしまったのは自分だ。
食べてみて絶句。
まさに異文化が悪い方へ作用した典型例である。
苦手だ……苦手だが、紳士に二言は許されない。
せっかくカッコつけて決断力のあるところを見せたのだ。それに自分の味覚が世界で通用しないからこそ日本を頼ったわけである。
頑張れ俺。
そう言い聞かせ、ひきつった頬を再びジェントル・スマイルの定位置へと戻して笑って見せる。
「この中に入ってるアンとやらを、ちょっと違った素材にしようぜ。」
そんなアイディアを出したのも、信じがたく激甘の黒っぽい紫っぽいソレから逃れられたらと思ったからだった。
「俺の希望としては、そうだな、シュガーを減らして、ソルトを増やして……あとペッパーを効かせたらどうだ?そこに俺んちのハーブをいくつか入れて……インドの香辛料も取り寄せてやるよ。こいつボソボソしてるからミルクでクリーミーにするとかさ、んで最高級ワインを足して、焼き上げるときには……」
なるほどあのポイズン・クッキングはそのようにして出来上がるわけですね、と日本は妙に納得しながら、そろそろここらでNoと言える日本の姿も見せねばならないと決断した。
「イギリスさん?」
満面の笑みでイギリスの顔を見る日本。
「お、おう、なんだ?」
日本をイイ感じでリードしている自分への感嘆と賞賛の言葉が掛けて貰えるのかもしれない、と期待するイギリスの顔に得も言われぬ罪悪感を抱きながらも日本ははっきりとこれ以上なく明確に言い放った。
「No。」
にっこり。
イギリスの笑顔も、見事に張り付いていた。
<章=※6章以降の展開へのご注意>
※このあと少々腐れ気味に見えるストーリーがあります。飛ばすことが出来るように別作品として分けました。
同性での過剰な友情がお好みでない方は、リンクは飛ばしてこのまま先をお読み下さい。(続きは執筆中です少々お待ち下さい。)
朝菊好きの方は、以下リンク先で六章七章をご覧下さい。
http://2.novelist.jp/22185.html
作品名:aph 『伝説のエリシアン』 作家名:八橋くるみ