BUDDY 3
師であり、家族のようであり、古い友人のようなアーチャーを。
ため息ものだ。
いったい、なんだって……。
自分自身が信じられなくて、長いこと気のせいだと思うことにして認めなかった。
だけど、その想いは確実に俺を蝕んでいて、やっと認めることにした。認めたところで、何が変わるってわけじゃないけれど。
けれども、まあ……、諦めることしかできないなって理解したのは、ずいぶん早かった。
魔術使いとサーヴァント。人間同士でもないし、異性愛者のアーチャーにしてみれば同性愛なんて、思いもよらないことだろう。
そうやって冷静に考えると、すんなりと諦めはついた。
辛いなと思うこともあるし、悲しくなる時もある。だけど、やっぱり好きだなぁと思って、感情はどうしようもないんだ、と諦める。
それだけ俺も大人になっていたんだろう。もう二十代の半ばになろうかって頃だったから。
「三十歳まで童貞だったら、魔法使いになれるんだっけ?」
何かの小説だか漫画だかに、そんな話があった気がする。そんなこと、あるわけがない。確かに俺はいまだに未経験だけど……。
「魔法じゃないけど魔術使いにはなってるから、そんな能力、べつに必要ないなぁ……」
明らかにうさんくさい言葉を信じてこうなったわけじゃない。アーチャーに操を立てているつもりもなかった。
だけど、誰かとそういうことをする気にはなれなくて、風俗にも行かなかったし、そんな暇もなかったし、誰かとお付き合いをするなんて機会、さらさらなかった。
「アーチャーが知ったら、引くよな……」
絶句する顔が思い浮かぶ。
「はは……、俺、すげぇ重い奴だ……」
乾いた笑いが漏れる。ひとしきり嗤っていたら胸が痛くなってきて、少し悲しくなってしまった。
買い出しに出たアーチャーは、そろそろ戻ってくるだろう。
それまでに、しゃんとしよう。
いつもみたいに、笑って、アーチャーにおかえりって、顔を上げて、それから…………、
「遅くなった」
「ああ、おかえり」
麻の袋を片腕に抱えて、被ったフードを後ろへ払ったアーチャーは、瓦礫になってしまった壁を日除けに座る俺の正面にいる。
午後の日射しがキツく、眩しさに目を瞬かせながら笑みを刻んだ。
「終わりにしようか、アーチャー」
BUDDY 3 了(2021/8/27)