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藍城 舞美
藍城 舞美
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炎倶楽部 第壱話 炎の剣士たち

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 ― 時は令和X年

 暗い赤色のリボンで結んだサイドテールの髪型に血のように赤い瞳、両耳には薄紫色のリボンのイヤリング、そして両肩と鎖骨を大胆に露出した黒ブラウスと膝丈のワインレッドのスカート、漆黒のショートブーツといった出で立ちの物静かそうな少女が、夜の街を歩いていた。
 彼女はおもむろに足を止めて小さく笑い、スカートのポケットから小さな巾着袋を出し、中身の一部を取って「まきびし」のようにばらまいた。次に彼女はそれらに向かって両手をかざし、冷たい声で
「血鬼術・復鬼(ふっき)!」
と唱えた。
 するとどうだろう。どこからか何体もの人魂が飛んできて、少女がまいた物に吸い込まれるように融合した。その直後、それらは血走った眼に大きな口、鋭い歯を持った人喰い鬼どもに姿を変えた。なお、彼女の言う「血鬼術」とは、一部の鬼が用いる特殊な能力のことである。そう、彼女は鬼の総大将の魂を継いだ「上上弦の鬼」の一体で、その名を冠那(かぶりな)という。
 鬼どもは獣のように低い声でうなり、自分の両手を見たり、辺りを見渡したりした。冠那は、緑色の陣羽織をまとった色白すぎる殿様のような姿の鬼の至近距離の位置に来た。
「私の僕(しもべ)、あなたにはすてきな名前とふさわしい血鬼術を授けてあげる。今日からあなたは『楽しみの鬼・楽笑殿(らくしょうでん)』よ」
 不気味な甘い声で話すと、彼女は「楽笑殿」と名付けた鬼の額に自分の鋭い爪を刺した。楽笑殿は、自分の全身により強い血が巡るのを感じ、
「んなーお」
 と汚い声を上げた。しかし間抜けそうな彼の顔つきがより凶悪になり、筋力が上がったのは言うまでもない。

 冠那は、そこに居る鬼ども全員に言った。
「さあ鬼ども、食事の時間よ。人間を好きなだけ喰らっておいで!」
 こうして鬼どもは人間を喰らいに、方々へ向かった。


 所変わって、夜の東村山市の某所。楽しみの鬼・楽笑殿は懐から扇子を取り出し、数人の通行人の前まで移動すると、
「血鬼術・『笑粉(わらいごな)』!」
 と唱え、扇子を大きくあおいだ。扇子から深緑色の粉が通行人たちの方向へ飛んでいき、それを浴びた彼らは立ちどころにゲラゲラと笑いだした。楽笑殿はその様子を見て自分も声を上げて笑ったあと、
「みんな、楽しい気分だろう?楽しそうに笑う人間は、俺のごちそうだ~」
 と言って、口を自分の顔の半分ぐらいの大きさにして、笑っている通行人たちを次々と喰い殺していった…。


 ― それから数日後の夜、同じ場所で ―

 突然現れた異形の怪物を見て、ある人は叫びながら逃げ出し、またある人は恐怖で動けなくなっていた。
「いいお姉ちゃん見っけ!」
 楽笑殿は、必死で逃げる1人のこぎれいな女性に狙いを定め、彼女の真向かいに移動した。
「へっへっへ」
 彼は悪そうな笑みを浮かべて扇子を突き出し、それを開いた。
「血鬼術!」