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あなたを好きで良かった

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おかしいんだ。
 私はどこかおかしいんだ。
 そう思ってしまえば、この気持ちも誤魔化せるから。


「ムギちゃーん、部活行こー!」
「あ、うん。行こっ!」
 授業が終わり、放課後が始まるいつもの風景。唯ちゃんが私を部活に誘い、私がそれに応える。
 クラス内を見渡すとりっちゃんと澪ちゃんの姿が見えなかった。どうやら私たちより先に教室を出たらしい。
「あれ、二人がいない」
「なんかさわちゃんがりっちゃんに用事あるらしくて職員室寄ってから部室来るんだってー。なんか用事あったの?」
「え、いや。いいの。ちょっと気になっただけだから」
 いつもは四人で移動していたから、二人っきりになれることを想像して思わず頬が緩んでしまうところだった。不思議そうな顔で唯ちゃんが覗き込もうとし、思わず赤面してしまう。――さぁ、行こう! 私は誤魔化すように教室を出た。
「いやー、やっぱり学生生活と言ったら部活だよねー、青春だよー」
 私の数歩先を楽しそうに進む唯ちゃん。――良かった、さっきの変に思われて無いみたい。
「そうだね。りっちゃんに澪ちゃん、皆と一緒にバンドやるの楽しいもんね」
「それに部活に行けばムギちゃんの美味しいケーキも食べられるしね-」
 振り向いてえへへと照れくさそうに笑う。それに釣られて私も微笑んだ。何で唯ちゃんの笑顔を見るとすごく幸せな気持ちになれるんだろう。
「あのね、今日のケーキはいつもとは違うお店のなの、唯ちゃん特別に先に――」
「あ、あずにゃーん!」
 私の脇を抜け、唯ちゃんは背後にいるであろう梓ちゃんへと嬉しそうに駆けだした。
 ――今は私が話してるのに。胸の辺りにモヤモヤとした気持ちの悪い想いが漂う。
「ほらほら、あずにゃんも一緒に部活に行くよー」
「わかってますからそんなに引っ付かないで下さい! 恥ずかしくないんですか!?」
「あずにゃんが可愛いからだよー。ねぇームギちゃん?」
 その声にビクッと振り向く。いつもの光景、唯ちゃんが梓ちゃんにべったりと抱きついている。最近唯ちゃんは以前より梓ちゃんに甘えることが多くなった。
「! う、うん。あ、ほら早く行かないと他の二人が先に着いちゃうかもよ」
 そう二人に告げ私は再び歩き出した。早く部室に行きたい。三人でいることが何故か嫌だったから。
 私の足音、重なった二人の足音。部室までコツン、コツコツンと響いていた。